脊柱管狭窄症は鎮痛剤だけでは治らない!「血管拡張薬」で血流を促進すれば症状が緩和する

脊柱管狭窄症は鎮痛剤だけでは治らない!「血管拡張薬」で血流を促進すれば症状が緩和する

脊柱管狭窄症の治療に有効な薬は?(depositphotos.com)

 先天的または後天的に神経が通る「脊柱管(せきちゅうかん)」が狭くなり、脊髄や神経が圧迫されるために、腰椎(ようつい=背骨の腰の部分)や頸椎(けいつい=背骨の首の部分) の脊柱管に病変が現れる難疾患、それが「脊柱管狭窄症」だ。

 日本赤十字社医療センター(整形外科センター長・医療技術部長)の久野木順一副院長に、脊柱管狭窄症の薬物治療について、で詳しく解説してもらった。

80%の症例に処方されている「血管拡張薬」のプロスタグランジンの有効性

 脊柱管狭窄症の治療は、患者の症状に応じて「薬物療法」「理学療法運動療法」「仙骨部硬膜外ブロック療法」「神経根ブロック療法」、生活指導などを組み合わせる「保存療法(手術以外の治療法)」が基本になる。

 腰痛を訴える患者に「消炎鎮痛薬」がよく用いられるように、脊柱管狭窄症でも消炎鎮痛薬がよく処方される。だが、消炎鎮痛薬だけでは痛みが解消しない場合が多いため、「血管拡張薬」の「プロスタグランジンE1製剤(オパルモン、プロレナールなど)」が服用されている。プロスタグランジンE1製剤は、脊柱管狭窄症の患者の約80%に処方され、一定の治療効果を上げている。

 ただ、専門外のかかりつけ医などは、消炎鎮痛薬だけを処方する場合が少なくないので、脊柱管狭窄症が疑われる人は整形外科の専門医を受診しよう。消炎鎮痛薬を1週間使っても症状が改善されないなら、プロスタグランジンE1製剤を服用するのがベターだ。

脊柱管狭窄症の治療の基本は虚血の解消

 脊柱管狭窄症は、神経が通る脊柱管が狭くなり、中を通る「馬尾神経(脊髄から続く馬の尾のような神経の束)」や「神経根(脊髄から左右に分岐する神経の根もと)」が強く圧迫されるために起きる。神経や神経根が強く圧迫されると、神経の周囲にある血管も同時に圧迫され、虚血(血液が足りなくなる状態)に陥るので、神経が過敏になり、足の痛み・痺れを伴う。

 脊柱管狭窄症の患者が「間欠性跛行」で歩けなくなっても、しゃがんで少し休めば、また歩けるようになるのは、腰を前に曲げる姿勢を取ると狭窄部が緩み広がるため、馬尾神経や神経根の圧迫が弱まり、血流が回復して痛み・痺れが和らぐからに他ならない。

 つまり、血管拡張薬を服用すると、同様の効果が期待できる。ホルモンと似た働きをする血管拡張薬のプロスタグランジンE1製剤の作用によって、血管壁にある平滑筋が緩み、血管が広がり、血流が促されるので、虚血が解消され、症状が緩和する。

 久野木副院長によれば、血管拡張薬を処方するだけで、足の痛み・痺れが軽減し、間欠性跛行も起こりにくくなり、約50%の患者に顕著な改善効果が現れている。
血流を促進するビタミンB12、慢性痛に抗うつ薬も有効

 脊柱管狭窄症の薬物療法では、血流をよくするために「筋弛緩薬」をはじめ傷んだ神経の働きを調整する「末梢循環障害改善薬」、「NSAIDS(非ステロイド性抗炎症薬)」や「アセトアミノフェン」などの「鎮痛剤」などが用いられる。また、症状に合わせて神経を修復させる「ビタミンB12製剤」や「抗うつ薬」もよく併用される。

 ビタミンB12製剤(メチコバール、ハイコバールなど)は、細胞の分裂に欠かせない核酸や葉酸の合成、血液中の酸素を運ぶヘモグロビンの生成に深く関わることから、血液中の赤血球の産出、末梢神経の修復、神経作用の安定、痛み・痺れ・腰痛・眼精疲労の改善、運動失調の回復、貧血・めまい・耳鳴りの緩和、睡眠リズムの正常化など、多くの薬理作用がある。

 一方、抗うつ薬は、抑うつ気分の持続、希死念慮を特徴とする気分障害(MD)や不安障害を抑制するが、特に慢性疼痛、月経困難症などへの適応外使用が行われる場合がある。慢性的な痛み・痺れによってうつ状態に陥った患者は、痛みへの感受性が強いため、痛みを顕著に改善する抗うつ薬を処方する場合が少なくない。

 主な抗うつ薬は、セロトニントランスポーター(セロトニンの量を調節する器官)に作用し、神経細胞と神経細胞の間で脳内神経伝達物質のセロトニンの量を調整するSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、セロトニンとノルアドレナリンの両方の調整を行うSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、NaSSA(ノルアドレナリン作動性、特異的セロトニン作動性抗うつ薬)の他、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬などがある(日本うつ病学会治療ガイドライン II.うつ病(DSM-5)/ 大うつ病性障害 2016年7月31日)。
(監修協力=脊柱管狭窄症ひろば)


久野木順一(くのき・じゅんいち)
日本赤十字社医療センター脊椎整形外科部長・脊椎センター長(副院長 整形外科センター長 医療技術部長)
1978年、金沢大学医学部卒業後、東京大学医学部整形外科学教室に入局
1986年、日本赤十字社医療センター整形外科に勤務
1994年、米国整形外科学会Traveling Fellowとして渡米
1997年、日本赤十字社医療センターリハビリテーション科部長
2006年より、現職
日本整形外科学会会員、国際腰椎学会会員、日本脊椎脊髄病学会評議員、日本腰痛学会評議員などを兼任

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