「脱毛」の真の原因は「免疫細胞」の異常だった! 円形脱毛症の治療にも光明が

「脱毛」の真の原因は「免疫細胞」の異常だった! 円形脱毛症の治療にも光明が

免疫細胞の異常が「脱毛」の真因だった(depositphotos.com)

 米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のMichael Rosenblum助教授らの研究チームは、ノックアウトマウスを用いた実験を行い、炎症を制御する免疫細胞の「制御性T細胞(Treg)」の働きが「毛包幹細胞」による発毛の促進に欠かせない要因である事実を確かめ、『Cel』オンライン版に発表した(「HealthDay News」2017年5月25日)。

 「毛包」は「発毛」と「皮膚呼吸」を司っている。毛包幹細胞は毛包を絶えず産出しているので、毛髪が抜け落ちれば毛包を直ちに再生できる。

 研究チームは、遺伝子ターゲッティング技術を応用し、標的遺伝子である制御性T細胞を完全に削除したノックアウトマウスを作り、遺伝子欠失によって生じる表現型の異変を分析したところ、制御性T細胞を欠損すると毛髪は育たなくなった。

 つまり「免疫細胞である制御性T細胞の異常が脱毛の真因」である根拠を掴んだことになる。

制御性T細胞の解明が進めば、脱毛治療の向上に役立つ

 Rosenblum氏によれば、制御性T細胞の欠損は、自己免疫疾患である円形脱毛症だけでなく、男性型脱毛症などの要因にもなる可能性が強いため、制御性T細胞の機序の解明が進めば、脱毛治療の向上に役立つだろうと指摘している。

 免疫細胞は体内で細菌やウイルスによる感染症と闘いつつ、ホメオスタシス(生体の恒常性)を維持している。一方、毛包幹細胞は損傷した組織を再生している。したがって、免疫細胞である制御性T細胞と毛包幹細胞は相互に作用しながら、毛髪を再生しているのだ。

 Rosenblum氏によると、免疫細胞である制御性T細胞が重要な役割を担っている事実が裏づけられたので、今後は創傷の修復における制御性T細胞の役割や機序も検証したいと語っている。
円形脱毛症の発症率は1000人に1〜2人

 この研究で明らかなように、免疫細胞である制御性T細胞の異常が脱毛の真因ならば、自己免疫疾患である円形脱毛症の治療に光明が差し込んでくるだろう。

 日本人の毛髪はおよそ10万本。毎日およそ50〜60本が自然に抜け落ち、約3〜6年の周期で再生を繰り返している。

 1000人に1〜2人に発症する円形脱毛症は、免疫細胞のCD8陽性Tリンパ球が毛根を異物と見なして攻撃し、毛根に炎症が起きるため、毛髪が突然抜ける自己免疫疾患だ。

 円形脱毛症脱を発症すると、脱毛した毛根は萎縮し、障害される。だが、立毛筋部位にある毛包幹細胞がすべての毛髪組織を作り、毛包幹細胞は障害されないため、Tリンパ球の反応が消えれば、毛髪が再生する。

 円形脱毛症は、30歳以下の発症率が81.8%、特に15歳以下の発症が4分の1を占め、やや女性が多い。乳幼児の発症もある。その原因は、未解明だ。CD8陽性Tリンパ球が誤反応する機序も判然としない。精神的ストレス、アトピー皮膚炎などのアレルギーの合併症、ウイルス感染などが誘因とされる。ちなみに、英科学雑誌『Nature』2010年7月号は、円形脱毛症の発症にHLA-DQB1 03などの8つの遺伝子が関与している根拠を明らかにしている。

 主な治療は、ステイロイドによる対症療法だが、確定的な治療・予防法はない(Madani S, Shapiro J (2000). "Alopecia areata update". J. Am. Acad. Dermatol. 42 (4): 549-66; quiz 567-70. PMID 10727299)。

 さて、制御性T細胞の異常が脱毛の真因なら、円形脱毛症の原因の解明や治療法の開発がますます進むに違いない。今後の研究に大いに期待したい。

*参考文献/『実験医学 2007年11月号』羊土社 ISBN 978-4-7581-0029-8 ほか。
(文=編集部)

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