きれいな花には毒がある!「ニラ」と間違えて「スイセン」を食べて食中毒で死亡例も!

きれいな花には毒がある!「ニラ」と間違えて「スイセン」を食べて食中毒で死亡例も!

左がニラ、右がスイセン(depositphotos.com)

 前回は、有毒植物であるイヌサフランを食用植物であるギョウジャニンニクと見誤って食べてしまい、食中毒となり、最悪のケースでは死亡例も認められた論文を紹介した(参考:ギョウジャニンニクに酷似した「イヌサフラン」による食中毒で今年も死者が!)。

 同じように、美しい花を咲かせるスイセンでも、深刻な食中毒被害が頻発している。

 2016年5月、北海道の胆振地方で、60代の男性が自宅敷地内に生えていた植物をニラと思って食べた。食後嘔吐、下痢を認めたため病院を受診した。しかしその2日後に不幸にして死亡。

 その後の検索で、食した植物から有害物質であるアルカロイド(ガランタミン)が検出されたため、この患者は、ニラと間違えて食したスイセンによる食中毒と診断された。

 また以前には、北海道美瑛町で誤ってスイセンを食べた9人の女性が、嘔吐、下痢などの消化器症状や頭痛を訴えて、病院に入院した。幸いにも病状は軽く、命に別状はなかった。

 また同年には、石川県の農産物直売所で購入したニラにスイセンが混入しており、それを調理して食べた後に嘔吐、下痢、頭痛などの症状を発症したが、命に別状はなかった。後に生産者がニラの近くでスイセンも栽培しており、両者を一緒に収穫し、出荷したのが原因と判明した。

 2008年には、茨城県の小学校で学校の菜園で収穫したニラの中にスイセンが混在しており、みそ汁にして食した後に10余人が中毒症状を呈した。

 厚生労働省の調査によると、2008年より15年までのスイセンによる食中毒が30件発生しており、実に摂食者115人中95人(82.6%)が患者として治療を受けている。死亡例は少ないが、頻繁に発生する植物中毒である。

スイセンの毒性について

 スイセンは、ユリ目ヒガンバナ科スイセン属に分類されており、冬から春にかけて咲く美しい花は観賞用に広く行きわたっている。

 しかしその毒性は全草に存在し、特に球根(鱗茎)に強い。中毒成分は鱗茎に多く含まれている、リコリン、ガランタミン、シュウ酸カルシウムなどである。

 スイセンを食すると、吐き気、下痢、頭痛を催す。また葉や花の汁が皮膚に付着すると、じんましん様の皮膚炎を呈する。スイセンを食べると、30分後に嘔吐、下痢、頭痛などの症状を認める。

 大部分のケースでは、嘔吐により毒物は排泄されるため、症状が比較的短時間で終息することが多いが、吐くのを我慢したりすると、その後、めまい、脱力感、筋力低下、頻脈、胸痛など、重篤な症状を呈する。稀にはさらに増悪すると心不全を呈し、死に至ることもある。致死量は僅か10gである。 

スイセンとニラの見分け方は難しい

 両者の葉は極めてよく似通っている。スイセンのほうが葉幅が広く、草丈が高く、厚い。

 最大の特徴は、スイセンは無臭であるが、ニラの臭いは強烈である。特にニラは、根元の部分をすりつぶし、空気に当てると、ニンニクのようなにおいを呈する。しかしスイセンでは、そのような現象は起こらない。

 葉での鑑別は難しいが、根元を見ると、スイセンでは、鱗茎(球根)があり、ニラには髭根で、鱗茎は存在しない。植物を引き抜くことにより、両者の鑑別が可能である。

 しかし、このように冷静に食する前に見分けることはできないのが現状であろう。特に市販されている場合には、商品を信用して疑うことなく摂食してしまうであろう。   

スイセン中毒を起こさないために
@家庭菜園などでは、ニラとスイセンを同じ場所で育てないこと。特に販売目的で生産する者は、この点に十分留意すること。集団食中毒を惹起する危険性がある。
Aニラとスイセンに関する構造上の相違点を理解すること。もし両者の鑑別に自信が持てないときには、摂食しないこと。
 
B誤ってスイセンを食した時には、我慢せずに吐くこと。できるだけ早期に病院を受診すること。 
以上のことを十分に認識することが必要である。

連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」バックナンバー

横山隆(よこやま・たかし)

日本中毒学会評議員(同学会クリニカルトキシコロジスト)、日本腎臓学会および日本透析学会専門医、指導医。1977年、札幌医科大学卒、青森県立病院、国立西札幌病院、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター助手、札幌徳洲会病院腎臓内科部長、札幌東徳洲会病院腎臓内科・血液浄化センター長などを経て、2014年より札幌中央病院腎臓内科・透析センター長。2015年8月に同病院退職。
専門領域:急性薬物中毒患者の治療特に急性血液浄化療法、透析療法および急性、慢性腎臓病患者の治療。
所属学会:日本中毒学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本内科学会、日本小児科学会、日本アフェレシス学会、日本急性血液浄化学会、国際腎臓学会、米国腎臓学会、欧州透析移植学会など。

横山隆(よこやま・たかし)
日本中毒学会評議員(同学会クリニカルトキシコロジスト)、日本腎臓学会および日本透析学会専門医、指導医。1977年、札幌医科大学卒、青森県立病院、国立西札幌病院、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター助手、札幌徳洲会病院腎臓内科部長、札幌東徳洲会病院腎臓内科・血液浄化センター長などを経て、2014年より札幌中央病院腎臓内科・透析センター長。2015年8月に同病院退職。専門領域:急性薬物中毒患者の治療特に急性血液浄化療法、透析療法および急性、慢性腎臓病患者の治療。所属学会:日本中毒学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本内科学会、日本小児科学会、日本アフェレシス学会、日本急性血液浄化学会、国際腎臓学会、米国腎臓学会、欧州透析移植学会など。

関連記事(外部サイト)