DNA鑑定で「飼いネコ」の祖先が判明! 約6000年前にネズミ退治した「リビアヤマネコ」

DNA鑑定で「飼いネコ」の祖先が判明! 約6000年前にネズミ退治した「リビアヤマネコ」

DNA鑑定で「飼いネコ」のルーツはリビアヤマネコと判明(写真はWikipediaより)

 イヌは従順、ネコはツンデレ。それが世界の常識かもしれない。

 だが、ネコのルーツを手繰ると意外な素顔が見えてくる――。

飼いネコは約6000年前の新石器時代から

 フランス国立科学研究センター(CNRS)のEva-Maria Geigl氏は、「ネコが古代エジプトを征服する遥か以前に、石器時代の農耕民を魅了し、以来、ネコの家畜化と愛玩動物化が世界に広まった」とする研究論文を米科学誌『Nature Ecology and Evolution』に発表した(2017年6月20日「AFPBB News」)。

 発表によれば、研究チームは埋葬されてミイラ化した古代のネコ230匹のDNAを分析した結果、現在の飼いネコの祖先はリビアヤマネコ(学名:Felis silvestris lybica)と判明。リビアヤマネコは、最初の農耕民がトルコのアナトリア地域から船で欧州に移住した約6000年前の新石器時代(紀元前4400年頃)に、欧州から世界に広まり始めた。

 石器時代の最末期である新石器時代は、各地を放浪していた狩猟採集民が作物の栽培と集落の構築に初めて着手した時期に重なる。農耕の始まりとともに収穫物を食い荒らすネズミが現れたことから、野生ネコであるリビアヤマネコに世界征服のチャンスが舞い込んできた。

 つまり、古代に納屋や船上などに生息していた野生ネコは、経済的損失や病害を及ぼしたネズミなどのげっ歯類の有害動物を駆除する重要な防御手段となり、小型で縞模様のある中東産の亜種は、全世界に生息地を蔓延させた。その痕跡は各地に辿れる。

 皮切りは、紀元前7500年頃の地中海の島国キプロス。子どもの墓で発見されたネコの骨が最古とも伝わる。一方、紀元前数世紀頃の古代エジプトでは、像や絵、死骸のミイラによって不滅化され、崇拝の対象となった。

 数千年後、古代エジプトのファラオ王朝時代に、リビアヤマネコのエジプト変種が欧州で熱狂的流行を巻き起こし、ネコの愛玩動物化は古代のギリシャや古代ローマから世界各地へ熱病のように伝染していった。

「ツンデレ」し放題!リビアヤマネコは今も生きている

 古代の人々がリビアヤマネコを熱愛したのはなぜだろう?

 リビアヤマネコのエジプト変種は、アナトリア原産の野生ネコと外見が非常によく似ていた。Geigl氏によれば、野生ネコは縄張りを単独で行動し、階層的な社会構造を持たないため、家畜化に適さなかったが、リビアヤマネコのエジプト変種は、社交性と従順さを獲得したため、人々に愛玩される決定的な要因になったと推定する。

 また、イヌやウマと異なり、外見目的の交配が少なくとも最初の数千年間は行われなかったので、現在の飼いネコの体の構造、機能、動きなどは、野生ネコと酷似している。つまり、野生ネコの毛並みはすべて縞模様だが、品種改良が開始され、ぶち模様の色合いが初めて遺伝子に記録されたのは、中世の西暦500〜1300年頃にすぎない。

 Geigl氏は「ネコの装飾的な品種を作るための繁殖計画が始まったのは19世紀頃だが、現在の飼いネコの外見も性格も行動も、古代の野生ネコとそれほど大きく違っていないはずだ」と説明している。

 となれば、「ツンデレ」し放題のリビアヤマネコは、今も生きていることになりそうだ。

 ネコを飼っているなら、ネコの尻尾をよく観察してみよう。トントンと床を叩く、垂直にピンと立てる、先端をかぎ状に曲げる、クルリと丸める。かと思ったら、遅刻したのを取り返すように急ダッシュする。「ツンデレ」どころか、かなりイラチの「スピード狂」ではないか。

 あれもこれも、狩人だった野生ネコの名残だろう。尻尾の振る舞いも、急ダッシュも、古代のリビアヤマネコと何ら変わらないなら、何とも不思議な気分になってくる。


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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