30代女子が「セルフネグレクト」で孤独死! 推計1万人以上が<緩やかな自殺>の入り口に

30代女子が「セルフネグレクト」で孤独死! 推計1万人以上が<緩やかな自殺>の入り口に

若い世代でも「セルクネグレクト」は少なくない(depositphotos.com)

 家の中が足の踏み場もないほどゴミでいっぱいになっている。引きこもっているうちに体を清潔に保つことが億劫になり、長いこと歯も磨かず風呂にも入っていない......。

 あなたの身の回りに、こんな人はいないだろうか?

 今、何らかの理由で身の回りのことをしなくなって生活が崩壊状態にある、いわゆる「セルフネグレクト」に陥る人の増加が社会問題になっている。

 セルフネグレクトは、巷で時々騒がれる「ゴミ屋敷」と密接に関連するものだ。不衛生な暮らしが長年にわたれば健康を害し、最後は「孤独死」という結果を招きかねない。

 ニッセイ基礎研究所の2011年公表の調査では、1年間に孤立死を把握した高齢者のうち、79.6%にセルフネグレクトの疑いがあったという。

自分を「放棄」している人が1万人超?

 セルフネグレクトという言葉に明確な定義はないが、ひと言でいえば「人として生活のための行為を行わない、または行う能力がないため、心身の安全や健康を損なうような状態に陥ること」となる。

 虐待問題におけるネグレクトは「他者による世話の放棄・放任」だが、セルフネグレクトとは「自己放任」、つまり「自分自身による世話の放棄・放任」だ。「東京都高齢者虐待マニュアル」には、高齢者のセルフネグレクトの症状として次のような例が挙げられている。

●昼間でも雨戸が閉まっている。
●電気・ガス・水道が止められていたり、家賃などの支払いを滞納したりしている。
●配食サービス等の食事がとられていない。
●物事や自分の周囲に関して、極度に無関心になる。
●何を聞いても「いいよ、いいよ」と言って遠慮し、諦めの態度が見られる。
●室内や住居の外にゴミが溢れていたり、異臭がしたり、虫が湧いている。

 内閣府が2011年に実施した調査によると、全国でセルフネグレクト状態にあると考えられる高齢者の推計は1万1000人。そしてこれはまだ氷山の一角にすぎない。

 一方、米国の大規模調査では高齢者の約9%にセルフネグレクトが存在するという。さらに年収が低い人や認知症の人、身体障害者では15%に及ぶと報告されている。

30代女子がセルフネグレクトで孤独死

 「緩やかな自殺」といわれるセルフネグレクト。ここまで生きることに無気力・無関心になるきっかけとは何なのか?

 専門家によれば「家族・親族・地域・近隣からの孤立」「死別や離婚などによる生きる意欲の喪失」「認知症、うつなどの精神疾患、アルコールによる認知・判断力の低下」「世間体、遠慮、気兼ねによる支援の拒否」「家族からの虐待」「経済的困窮」「引きこもりからの移行」など多岐にわたる。

 これらから浮き彫りになるのは、セルフネグレクトは決して高齢者だけの問題ではなく、若者も含めて誰の身にも起こりうるということだ。

 先日6月8日、フジTVの情報番組『ノンストップ!』で、仕事のストレスからセルフネグレクトになり亡くなった30代女性のケースを紹介していた――。

 ひとり暮らしの女性は仕事が忙しく、帰宅が深夜になりがち。次第に掃除やゴミ出しなど身の回りのことができなくなっていき、同僚や友人との人間関係も希薄になっていた。ある日、出社しない彼女を心配した同僚が部屋を訪れると、天井まで積まれたゴミの山の中で亡くなっているのが発見された。死因は心不全だった。

 ある遺品整理業者は、セルフネグレクトの若年化を指摘する。20〜30代の人の遺品整理も、部屋がゴミ屋敷のような状況になっていることは少なくないという。

 公式なデータは少ないが、一説によると日本では年間3万もの人が孤独死している。単身世帯が確実に増え、人々の社会的孤立が問題視されている今、セルフネグレクトは疫学的・公衆衛生学的な問題だと指摘する研究者も多い。

 「自己責任」や「個人の性格的な問題」と片付けられる段階ではないのだ。

 高齢者福祉の現場では、すでにさまざまな模索が始まっている。地域包括支援センターと医師が連携し、治療や入院に繋げるなど一定の成果を上げている自治体もある。しかし、支援が必要な状態でありながら頑なに拒否するのもセルフネグレクトの特徴。早期発見や介入には困難が伴う。

「団塊ジュニア世代」は「ネット志向は孤立リスクを高める」傾向がある

 セルフネグレクト状態にある「社会的孤立者」を支援する取り組みに対し、高齢期の孤立者を産まないための「予防策」に焦点を当てたのが、ニッセイ基礎研究所が2014年に公表した研究報告だ。

 ここでは、ゆとり世代(23〜25歳)、団塊ジュニア世代(39〜42歳)、団塊世代(65〜67歳)、75+世代(75〜79歳)の4つの世代の意識やコミュニケーション志向の実態を分析。「家族形成」「人づきあい」「働き方」「まちづくり」の観点から社会的孤立の予防策を追求している。

 たとえば人づきあいに関してみると、「ゆとり世代」にとっては「ネットを介するコミュニケーション」は一般的であり、必ずしも孤立を招く訳ではない。

 それに対して「特に団塊ジュニア世代」の「ネット志向は孤立リスク」を高める傾向があり、意識してリアルな付き合いの機会を持つべきだと指摘する。

「社会的孤立者」をつくらない地域特性に応じたまちづくり

 また、働き方に関する価値観では、孤立リスクを低減する「職場のコミュニケーション重視」や「キャリア志向」が若年層では総じて弱いため、それらの意識を高めることを求めている。

 そして日々の移動距離の長さ、クルマ依存や交通機関へのアクセスの悪さなどが孤立リスクを高めると指摘。地域特性に応じたコミュニケーションを促進するまちづくりを提案している。
 
 単身者の増加や人間関係の希薄化が進む中、何の策も講じなれば2030年には200万人が社会的孤立状態になると予測されている。

 人々が社会との繋がりを持ち人間らしく生き続けるためにも、こうした研究を公共的に活かすことが必要ではないだろうか。セルフネグレクトのリスクを明らかにし、孤立者をつくらない社会を目指すことが急務といえるだろう。
(文=編集部)

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