「植物油」を摂ればコレステロール値が下がり「心血管疾患」の発症リスクを約30%が減少

「植物油」を摂ればコレステロール値が下がり「心血管疾患」の発症リスクを約30%が減少

植物油を摂取すればコレステロール値や心疾患リスクが低下(depositphotos.com)

 米ハーバードT.H.チャン公衆衛生大学院教授のFrank Sacks氏は、肉やバターなどに含まれる「飽和脂肪酸」の摂取を控え、コーン油やオリーブ油などの植物油に含まれる「多価不飽和脂肪酸」や「一価不飽和脂肪酸」を摂取することを勧める米国心臓協会(AHA)の新しい勧告を『Circulation』6月15日号に発表した(「HealthDay News」2017年6月15日)。

 発表によれば、植物油を摂取すれば、コレステロール値や心疾患リスクが低下し、その効果は脂質異常症治療薬のスタチンに匹敵すると報告している。

 「多価不飽和脂肪酸」は、コーン油、ダイズ油、ピーナツ油などに、一価不飽和脂肪酸はオリーブ油、キャノーラ油、ベニバナ油、アボカド油などに豊富に含まれる。

 一方、「飽和脂肪酸」は、肉やバターのほか、ココナツ油やパーム油などの熱帯地域の植物由来の食用油に多く含まれる。

飽和脂肪酸を減らせば「心血管疾患」の発症リスクを約30%も減少させる

 勧告の筆頭著者であるSacks氏は「最近の科学研究では、食事中の飽和脂肪酸を制限すれば、心臓や血管の疾患を防ぐエビデンスが確認されている。だが、飽和脂肪酸の多い食品を制限する勧告に対して疑問や批判が強まってきたので、不飽和脂肪酸の最新のエビデンスを明確に示したかった。飽和脂肪酸は、動脈のプラークや心血管疾患の主因であるLDLコレステロール(LDL-C)を増加させるからだ」と話す。

 今回の勧告によると、ランダム化比較試験の結果、飽和脂肪酸の使用を減らし、多価不飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪を多く摂取すれば、「心血管疾患の発症リスクを約30%も減少」させる事実を示し、その有効性は、脂質異常症治療薬のスタチンに相当するという。

 一方、ココナツ油は、健康によいと喧伝されているが、いくつかの研究によると、ココナツ油も他の飽和脂肪酸と同様に、LDL-C値を上昇させることが判明。また、精製された炭水化物や糖分を摂取しても、心血管疾患リスクの低下は見られなかった。

 Sacks氏は「健康的な食生活のためには、飽和脂肪酸などの好ましくない特定の栄養素を制限するだけでなく、多価不飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸を多く含む植物油の他、ナッツ類、果物、野菜、全粒穀物、魚など、疾患リスク軽減に役立つ栄養素を豊富に含む食品を積極的に摂取すべきだ」と強く提案している。

植物油のメカニズム

 植物油に豊富な不飽和脂肪酸の有用性は明確だ。

 脂質を作る必須栄養素の脂肪酸は、細胞膜を構成したり、ホルモンのバランスを整えたり、ビタミンの吸収を助けたり、ホルモンやビタミンの前駆体になったりする重要なエネルギー源でもある。使い切れなかった脂肪酸は、中性脂肪として蓄えることができる。

 脂肪酸のうち、骨格となる炭素がすべて飽和結合したのが飽和脂肪酸、二重結合(不飽和結合)したのが不飽和脂肪酸だ。不飽和脂肪酸は、二重結合を1個だけ持つ一価不飽和脂肪酸、2個以上持つ多価不飽和脂肪酸に分かれる。

 さらに多価不飽和脂肪酸は、リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸などのn-6系脂肪酸(オメガ6脂肪酸)と、α-リノレン酸、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)などのn-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)に分かれる。

 このような生体膜成分、エネルギー源、シグナル分子などの多様な働きを持つ不飽和脂肪酸とマイクロバイオータ(腸内微生物相)との関連性を探究する先進研究がある。

飽和脂肪酸、一価脂肪酸、多価脂肪酸が「3:4:3」に近づくように

 腸は「第2の脳」と言われるように、脳と腸は自律神経系や液性因子(ホルモンやサイトカイン)を通じて緊密に影響を与え合っている。この「脳腸相関」のメカニズムによって、約60%が脂質で構成されている脳も、新陳代謝が早い腸内免疫細胞も不飽和脂肪酸の影響を強く受けている。

 この機序に着目したのが、理化学研究所統合生命医科学研究センターの有田誠氏らの新学術領域研究プロジェクトだ。

 有田氏らは、平成27〜31年の5年間にわたり「リポクオリティ(脂質の質)が解き明かす生命現象」をテーマに研究に携わっている。
 
 この研究プロジェクトは、最先端の質量分析技術を駆使しつつ、10万を超えるリポクオリティ(脂質の質)の多様性を識別し、ヒトの生命現象、ホメオスタシス(恒常性)、生理機能の機序を解明する新たな学術領域に進展すると期待されている。

 ちなみに、『第六次改訂日本人の栄養所要量』は、「飽和脂肪酸:一価脂肪酸:多価脂肪酸」を「3:4:3」に近づくようにバランスよく摂取することを推奨している。

 さて、不飽和脂肪酸は、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)の3原子で構成され、炭素原子の端にカルボキシル基(-COOH)が鎖のようにつながっている。

 DNAも不飽和脂肪酸も、鎖というシンプルな仕組みによってデザインされている事実を知れば知るほど、生命現象の神秘を感じないではいられない。
(文=編集部)

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