ニオイはもはや社会問題? 柔軟剤の「スメハラ」から体臭を脳内捏造する「自臭症」まで

ニオイはもはや社会問題? 柔軟剤の「スメハラ」から体臭を脳内捏造する「自臭症」まで

いつの間にか自臭症(自己臭症、自己臭恐怖症)に?(depositphotos.com)

 夏になると急増するのが制汗剤のコマーシャル。たくさん汗をかく季節になって、ニオイを気にする人が増えている証拠と言えるだろう。

 ただ、ニオイはかなり「感覚的」で「個人差が大きい」。自分では「いいニオイ」と感じていても、周囲の人に不快な思いをさせることがある。また、他人はニオイをまったく感じていないのに、自分だけが「臭い」と気にしてしまうケースも少なくない。

 さらに、ニオイによって頭痛や吐き気といった体調不良を起こしたり、心が病んでしまったりすることもある。ニオイはちょっとした社会問題になっているのだ。

他人に直接「臭い」と言いにくいから厄介

 「スメルハラスメント」、通称「スメハラ」は、ニオイで周囲に不快な思いをさせることだ。

 ここ数年でスメハラの原因になっているのが、香り付き柔軟仕上げ剤である。国民生活センターの発表では、PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワーク・システム)に寄せられた柔軟仕上げ剤のニオイに関する相談が、2008年度の14件から2012年度では65件と急増している。

 特徴は、相談者自身が柔軟仕上げ剤を使用したわけではない点。隣の家など他人が使用した柔軟仕上げ剤のニオイで相談がどんどん寄せられているのだ。

 国民生活センターが発表した事例の一つが「隣人の洗濯物のにおいがきつ過ぎて頭痛や吐き気があり、窓を開けられなく換気扇も回せない」というもの(参考サイト:国民生活センター「柔軟仕上げ剤のにおいに関する情報提供」)。

 住宅が密集している地域では、ニオイもこもりがちだ。窓を開ければ隣の洗濯物のニオイが部屋に入ってくるのもうなずける。しかし「お宅の洗濯物が臭い」と苦情を言うのは、はばかられる。近所づきあいもあり、悩ましいところだ。

 国民生活センターは「においが与える周囲への影響について配慮を促す取り組みを行うよう要望します」と業界に要望を出している(参考:「柔軟仕上げ剤」で頭痛、悪心......ニオイの苦情が急増中、癒やしの香りが「スメハラ」に!)。

 香り付き柔軟仕上げ剤ほどではないだろうが、制汗剤もスメハラを引き起こす可能性がある。私事だが、小学生の息子が同級生のスポーツ少年の制汗剤が臭いと自宅で愚痴をこぼしていた。

 「教室ですごく気になるんだけど......」と、ニオイで授業にも集中できない模様。そのスポーツ少年は、自分の体臭を気にして制汗剤を多用しているのかもしれない。しかし現実では、汗よりも制汗剤のほうが周囲にとっては臭いようだ。

 清潔志向が強いと言われている日本人は、自分のニオイに敏感すぎるのかもしれない。卵が先か、ニワトリが先かはわからないが、過剰に敏感になると精神的に病んでしまったり、精神的に病んで過剰に敏感になってしまったりするケースもある。

ありもしないニオイを脳内で作り出してしまう「自臭症」

 「自臭症(自己臭症、自己臭恐怖症)」とは、「自分は臭いかもしれない」「ニオイのせいで迷惑をかけている」という思い込みが強くなる症状だ。

 軽い状態の自臭症だと、制汗剤を使い過ぎて皮膚がかぶれたり、体をゴシゴシと強く洗い過ぎて肌荒れを引き起こしたりする。重度になれば、他人と接触することが怖くなり、学校や職場に行けなくなってしまうのだ。
 
 自臭症が厄介なのは、冒頭で述べたようにニオイは感覚的なものであるため、「臭い」と思い込んでしまったら当人にはニオイが発生しているようにしか感じられないことだ。

 たとえば口臭に関する自臭症の場合、口臭外来や歯科医院で検査して問題がないと結果が出ても、当人は科学的なデータでさえ否定してしまう。そのため、症状が進行すれば精神科を受診するしかない。

 周囲と自分自身への悪影響を考えると、合成香料が含まれる制汗剤や柔軟仕上げ剤の使用は控えめにしたほうがよさそうだ。そしてニオイについては自分の感覚を絶対視せず、周囲の冷静な意見にすなおに耳を傾けることも必要だろう。
(文=森真希)

森真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。

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