『うんこ漢字ドリル』が大ヒットの一方で、小学生の半数が学校での大便を我慢の矛盾

『うんこ漢字ドリル』が大ヒットの一方で、小学生の半数が学校での大便を我慢の矛盾

『うんこ漢字ドリル』ヒットの裏で……(depositphotos.com)

 『うんこ漢字ドリル』(文響社)が売れている――。「日本一楽しい漢字ドリル」と銘打って今年3月に発売。なんと、この出版不況下にあって、発売後約2カ月で発行部数148万を記録したとか。

 例えば読みの練習問題として「田(た)んぼの どまんなかで うんこを ひろった」「火(ひ)で あぶった うんこを どうぞ」(どちらも小学1年生例文)と、覚える漢字を全て「うんこ」を交えた例文にしたドリルだ。退屈になりがちな書き取りを興味を持ってできることが、ベストセラーになった最大の要因だろう。

 このドリルだけではない。昨今、「うんこ」の字を目にすることが多くなったのではないだろうか? 本来ならば忌避するべき排泄物に、「市民権」が得られるようになったと思うのは気のせいか?

誰もが通る「うんこ」の道

 当然のことだが、人は「うんこ」をする。排泄行為は死ぬまで続くわけだが、生まれてからの数年間は、特に密な関係性にあるといえる。

 例えば、新生児――。新生児はおしっこの回数が多く、2〜3時間おきにおむつを替えることになる。おむつ替えには大抵「おしっこ出たね」などと声を掛けられるものだ。また、病気になっていないかの判断のため、親は我が子の排泄物を入念に観察する。母子手帳などにある『便カラーカード』と見比べてみて、「いいうんちが出た」と評価する場面もあるだろう。

 あんよができるようになれば、おむつ卒業の前準備としてトイレやうんこの絵本を読み聞かせ始めるし、おしゃべりができるようになれば「うんち、出た」と言うように推奨する。本格的にトイレトレーニングが始まれば「トイレ行く!」の一言で、親は大げさに喜んでみせるのだ。

 かくも、この幼児の頃までというのは、「おしっこ」や「うんこ」への親和性が高い。

 そうして、就学前後――。これまでの刷り込みの効果が表れる。なににつけても「うんこ」を連呼する親の頭が痛くなる時代がやってくるのだ......。

子どもがなぜこれほど「うんこ」が好き?

 子どもがなぜこれほど「うんこ」が好きかといえば、上手な排泄を親に褒められ続けるので、その存在を肯定的に受け止める土壌があると考えられる。

 精神分析者のユング・フロイトは2〜4歳の時期を「肛門期」と定義しているが、これは発達の段階として胃腸や排泄のコントロールができるようになり、「子どもは便を出すと快感を感じるからだ」と説明している。「うんこ」を出すと気持ちがいいと思っていることが、好きな理由のひとつだというのだ。

 翻って「うんこ」は、大人が嫌がる言葉でもある。それを言うだけで、相手は顔をしかめたり、慌てたりする。人の嫌がることをわざとする子ども特有の心理もあって、「うんこ」は魔法の呪文と化す。漢字ドリルが売れるのも必然だろう。

敬遠される学校での「うんこ」〜小学生の「6人に1人」が「便秘状態」

 しかし「うんこ」の黄金時代は短い――。あれほど熱愛された「うんこ」は、成長と共に「くさい」「汚い」「恥ずかしい」存在になっていく。

 2017年6月、NPO法人日本トイレ研究所が実施した「小学生の排便と生活習慣に関する調査」(https://www.toilet.or.jp/health/pdf/newsrelease160606.pdf)によれば、全体の51.3%、小学生の2人の1人が学校で排便を「ほとんどしない」「まったくしない」と回答している。また、学校で排便を我慢した経験については、「よくある」「ときどきある」が56.4%にのぼり、その理由の一番が「友達に知られたくないから」だという。この傾向は学年が上になるにつれて強くなる。

 同じ調査で、小学生の「6人に1人」が「便秘状態」、小学生の「3人に1人」が「便秘状態の予備軍」であるという。学校で排便を避けるようになったおかげで、「うんこ」の機会が減ったことが一因だろう。あれだけ大好きだった「うんこ」を、文字通り「蓋をする」ことになってしまうのだ。

 「うんこ」の成分は、食べ物のカスだけではない。70〜80%の水分のほか、腸壁細胞の死骸が15〜20%、そして腸内細菌が10〜15%となっている。これらは体外に排出されるべきものだが、便秘となって腸内に留まると、腐敗し、有害物質を発生させてしまう。結果、血液が汚れる、消化吸収が悪くなる、免疫力が低下するなどの影響が出てくるのだ。

 調査を行った日本トイレ研究所は、学校のトイレ施設の改善も必要としたうえで、学校や家庭での排便教育を推進していくこと、教育者の排便知識の向上を求めている。

「うんこ」を知る夏休み!

 2014年夏、日本科学未来館(お台場)が『企画展 トイレ?行っトイレ! ボクらのうんちと地球の未来』を開催した。

 子どもも大人も関係なく、恥ずかしがらずにトイレの話をしようというのがコンセプトのこの企画展、東京で23万人を動員し、その後、大阪や新潟など、各地で好評を得た。うんちの帽子を被って巨大なトイレの滑り台を滑る展示の様子はニュースなどでも多く紹介されたから、記憶に残る人もいるだろう。

 実際の展示では、本物の動物の「うんこ」を並べているコーナーあり、粘土で自由に「うんこ」を作るワークショップあり。先述の滑り台の先には下水処理の仕組みが体感できるようになっていて「うんこ」の末路が勉強できる。その他、世界の約25万人がトイレを使えないという深刻な問題まで提起する。

 科学館という場で、真面目に「うんこ」や「トイレ」を見せたこの企画展は、普段は敬遠されがちなトイレをあらゆる角度から知ることのできた貴重な機会だった。現在の「『うんこ』の話をすることは決してタブーではない」という空気感は、この展示があったからではなかろうか。

 以降、各地で「うんこ」に着目する動きは続いている。今年の夏も複数のイベントが開かれているようだ。

○ナンジャタウン『うんこ漢字ドリル×ナンジャタウン あつまれ!うんこ漢字タウン』(豊島区)
○キョーリン製薬グループ『からだのひみつ大冒険2017』(北九州市)
○周南市徳山動物園『きて!みて!さわって!? うんこ展』(周南市)
○エスパルドリームプラザ『学べるうんこ展 BenZoo』(静岡市)

 今や「うんこ」は敵ではなく、堂々と語る時代になってきている。

 ちなみに便の国際基準である「ブリストルスケール」によると、「理想的なうんこ」は「表面がなめらかで軟らかいソーセージ状、あるいは蛇のようなトグロを巻く便」だそうである。

 夏休みの自由研究に、マジメに「うんこ」を取り上げるのも一考か?
(文=編集部)

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