「病理医と話そう」へようこそ〜家族が難病「骨髄異形成症候群」で骨髄移植に臨む

「病理医と話そう」へようこそ〜家族が難病「骨髄異形成症候群」で骨髄移植に臨む

患者やその家族には、ドナーのボランティア精神にも思いをはせてほしい(depositphotos.com)


 先日、「つつみ病理相談所」で「病理医と話そう」を初開催した。がんをはじめ、病気に悩む患者さんやその家族と語り合う場としてスタートした。

 私は現在、平日は「はるひ呼吸器病院」に勤務している。その一方で、病理医として地域の方々への貢献をしたいと考え、土曜日と日曜日は名鉄本線・前後駅(愛知県豊明市)の前にあるマンションに「つつみ病理相談所」を開いた。

相談者は40代の奥さんが「骨髄異形成症候群」

 今回の相談者(男性)は、2カ月前に40代の奥さんが「骨髄異形成症候群」という難病だと診断され、治療中の状況だった。「汎血球減少症」といって、血液細胞の赤血球、白血球、血小板のすべてが減少していく病気だ。

 骨髄では異常造血細胞が増殖し、正常な造血能が侵される。時間が経過すると本物の白血病に変わってゆくことの多い、厄介な疾患だ。

 私が医学生のころは、「前白血病状態」とか「くすぶり型白血病」と呼ばれていた。通常は小児と高齢者に見られる。高齢者では無治療で様子を見ることもある。

 血液データを見せてもらうと、赤血球、白血球、血小板いずれも明らかに減少しており、感染症や出血の恐れがある状況だった。感染症では特にカビが厄介なので、ほこりを吸い込まないようにアドバイスした。

 カビは乾燥に強いので、ほこりの中に潜んでいると考えた方がいい。煩わしくとも、外出時に限らず掃除のときもマスクを着用してもらいたい。ハウスダストを吐き出さない掃除機の購入と、掃除は家族の担当にすることを提案した。

 奥さんは、3週間に一度の抗がん剤の点滴と赤血球と血小板の輸血を受けている。根本的な治療法は「骨髄移植」しかない。幸運なことに、骨髄バンクでドナー候補が10名見つかったそうだ。最終検査が行われ、数カ月以内に骨髄移植治療が行われる段取りだという。

 ドナー候補が10名もいれば、「HLA」という白血球の型がピッタリと合うドナーに巡り合える可能性も高い。日本の骨髄移植の成績は非常に素晴らしく、奥さんの通う病院は名古屋大学系列であり、名大血液疾患グループは日本のリーダー格だ。

 つまり、経験豊かな専門家集団が治療にあたるはずだ。安心して治療を受けるようにエールを送った。

ドナーのボランティア精神にも思いをはせてほしい

 そして、ドナーの<ボランティア精神>にも思いをはせてほしいことも伝えた。

 ドナーは、腰の骨から大量の骨髄血が採取される。仕事を休んでしばらく入院し、採取後には局所の痛みが強い場合もある。ドナーが誰かは教えてくれないが、感謝の気持ちを持ち続けてほしい――そのことを2人のお子さんを含む家族全員でシェアしてほしいとも伝えた。

 私が小学校5年生のとき、大好きだった祖母を白血病で亡くした。当時、高齢者(といっても68歳)の白血病患者が、発病から半年ももったのは珍しいと言われたそうだ。もう50年以上前のことだが、白血病治療の進化には目覚ましものがある。

 そしてまた、骨髄移植治療までの期間があるということは、治療前に家族全員で「骨髄異形成症候群」や「骨髄移植」を勉強できる時間があることも意味する。これも、ほかのがんと違う利点だし、それを生かさないともったいないとアドバイスした。

 今後も、毎月第一土曜日に「病理医と話そう」活動を続けたいと思う。遠慮なく、事前ご予約ください。

連絡先:つつみ病理相談所
TEL:0562-85-6996 メールアドレス:pathos223@kind.ocn.ne.jp

連載「病理医があかす、知っておきたい「医療のウラ側」」バックナンバー

堤寛(つつみ・ゆたか)

2017年4月より、はるひ呼吸器病院(愛知県)病理診断科の病理部長。1976年、慶應義塾大学医学部卒、同大学大学院(病理系)修了。東海大学医学部に21年間在籍。2001〜2016年、藤田保健衛生大学医学部第一病理学教授。「患者さんに顔のみえる病理医」をモットーに、病理の立場から積極的に情報を発信。患者会NPO法人ぴあサポートわかば会とともに、がん患者の自立を支援。趣味はオーボエ演奏。著書に『病理医があかす タチのいいがん』(双葉社)、『病院でもらう病気で死ぬな』(角川新書、電子書籍)、『父たちの大東亜戦争』(幻冬舎ルネッサンス、電子書籍)、『完全病理学各論(全12巻)』(学際企画)、『患者さんに顔のみえる病理医からのメッセージ』(三恵社)、『患者さんに顔のみえる病理医の独り言.メディカルエッセイ集@〜E』(三恵社、電子書籍)など。

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堤寛(つつみ・ゆたか)
2017年4月より、はるひ呼吸器病院(愛知県)病理診断科の病理部長。1976年、慶應義塾大学医学部卒、同大学大学院(病理系)修了。東海大学医学部に21年間在籍。2001〜2016年、藤田保健衛生大学医学部第一病理学教授。「患者さんに顔のみえる病理医」をモットーに、病理の立場から積極的に情報を発信。患者会NPO法人ぴあサポートわかば会とともに、がん患者の自立を支援。趣味はオーボエ演奏。著書に『病理医があかす タチのいいがん』(双葉社)、『病院でもらう病気で死ぬな』(角川新書、電子書籍)、『父たちの大東亜戦争』(幻冬舎ルネッサンス、電子書籍)、『完全病理学各論(全12巻)』(学際企画)、『患者さんに顔のみえる病理医からのメッセージ』(三恵社)、『患者さんに顔のみえる病理医の独り言.メディカルエッセイ集@〜E』(三恵社、電子書籍)など。

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