命を落とす「食塩中毒」! 1歳児の死亡事件、食塩200gで自殺した大人も......

保育施設で1歳女児が「食塩中毒」で死亡 食塩の過剰摂取は生命に危険が及ぶことも

記事まとめ

  • 岩手県の保育施設で、女児が食塩入りの飲み物を飲まされ中毒死していたことが判明した
  • 食塩の過剰摂取は命の危険に及ぶこともあり、成人では食塩200g摂取し自殺した例もある
  • 過剰摂取後の症状は嘔吐、下痢、発熱、頭痛、口喝などで、重症な症状では意識障害も

命を落とす「食塩中毒」! 1歳児の死亡事件、食塩200gで自殺した大人も......

命を落とす「食塩中毒」! 1歳児の死亡事件、食塩200gで自殺した大人も......

200gの「食塩」を摂取して自殺した成人も(depositphotos.com)

 2015年8月、岩手県盛岡市内の無認可の保育施設で、当時1歳の女児が大量の食塩入りの飲み物を飲まされて、中毒死していたことが判明した。岩手県警は、2017年7月、保育施設を経営していた34歳の女性を傷害致死容疑で逮捕。

 容疑者は女児の気分が悪そうだったので、塩分補給の目的で食塩水を与えており、「危害を加えるつもりはなかった」と釈明し、一貫して容疑を否認。その後、容疑不十分として彼女は釈放されている。

 塩分は生命維持のため、必要不可欠な栄養素である。しかし、過剰摂取は、時に生命の危険にさらされることがある。特に上記のような1歳前後の乳児の場合は、体内に蓄積された過剰な塩分を排泄する腎臓の機能が十分成熟していないため、また塩分過剰摂取後に喉が渇いても自分では水を飲めないことなどから、生命の危険が及ぶことがある。

 イギリスで報告された食塩中毒の例では、12例中11例が「生後1.5カ月から9カ月の乳児」で、うち2例で死亡している。多くの中毒例では、少なくとも10gの食塩(小さじ2杯分)が与えられ、なかには親による虐待が絡んでいた症例も認められた。ジュースの中に食塩を添加させて、飲みやすく工夫をしたケースも含まれた。

 塩分過剰摂取後の症状は、嘔吐、下痢、発熱、頭痛、口喝などが出現するが、摂取後時間の経過とともに、さらに重症な症状として、意識障害、けいれんなどを呈する。最悪のケースでは、脳の「くも膜下出血」や「脳出血」を合併することもあり、致死的状態に陥ることが多い。

成人では食塩200gを摂取して自殺した例も

 我が国で起こった、食塩大量摂取後に死亡した成人例に関する貴重な報告があるので解説する(出典「日本救急医学会雑誌」2016年、泉谷義人医師)。

 患者は統合失調症の既往歴を認める36歳女性。精神科を退院した当日に、自宅で200gの食塩(約4g/kg)を摂取したのちに、嘔吐、意識障害をきたしたため、救急外来を受診した。

 食塩の成分である血清ナトリウム濃度が192mEq/L(正常値は135〜145)と異常高値を呈し、病院搬送後、急激に意識レベルが低下したためICUで治療した。食塩摂取致死量は0.5〜5g/kgで、血清ナトリウムが185mEq/L以上であれば致死的状態であると判断される。不幸にも頭部CT検査で、右側頭葉にくも膜下出血も認めた。

 人工呼吸管理、低張ナトリウム液や酢酸リンゲル液、ブドウ糖の大量輸液などの治療で、血清ナトリウム濃度を急激な補正は「脳浮腫」を増悪する恐れがあるため、緩徐に補正した。

 しかしその後、自発呼吸や対光反射の消失、さらに著明な脳浮腫を認め、血清ナトリウム濃度は改善できなかった。脳機能は停止したと判断され、入院後37日目に鬼籍に入った。

 諸外国の「食塩中毒」に関する報告でも、乳幼児にケースでは親や施設の職員による恣意的過剰被摂取、成人では自殺企図例が認められる――。

 夏場は熱中症になりやすい。特に乳幼児は汗をかきやすく、脱水症を呈することが多く認められる。塩分を補給する必要に迫られることも多いが、スポーツドリンクの過剰摂取には注意が必要である。真水や麦茶などでの水分補給を心がけることも必要となろう。

連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」バックナンバー
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横山隆(よこやま・たかし)

小笠原クリニック札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認定クリニカルトキシコロジスト、日本腎臓学会および日本透析学会専門医、指導医。
1977年、札幌医科大学卒、青森県立病院、国立西札幌病院、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター助手、札幌徳洲会病院腎臓内科部長、札幌東徳洲会病院腎臓内科・血液浄化センター長などを経て、2014年より札幌中央病院腎臓内科・透析センター長などをへて現職。
専門領域:急性薬物中毒患者の治療特に急性血液浄化療法、透析療法および急性、慢性腎臓病患者の治療。
所属学会:日本中毒学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本内科学会、日本小児科学会、日本アフェレシス学会、日本急性血液浄化学会、国際腎臓学会、米国腎臓学会、欧州透析移植学会など。

横山隆(よこやま・たかし)
小笠原クリニック札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認定クリニカルトキシコロジスト、日本腎臓学会および日本透析学会専門医、指導医。1977年、札幌医科大学卒、青森県立病院、国立西札幌病院、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター助手、札幌徳洲会病院腎臓内科部長、札幌東徳洲会病院腎臓内科・血液浄化センター長などを経て、2014年より札幌中央病院腎臓内科・透析センター長などをへて現職。専門領域:急性薬物中毒患者の治療特に急性血液浄化療法、透析療法および急性、慢性腎臓病患者の治療。所属学会:日本中毒学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本内科学会、日本小児科学会、日本アフェレシス学会、日本急性血液浄化学会、国際腎臓学会、米国腎臓学会、欧州透析移植学会など。

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