「科捜研の女」放送200回のヒミツは......科学捜査に燃える沢口靖子の怪演にアリ

「科捜研の女」放送200回のヒミツは......科学捜査に燃える沢口靖子の怪演にアリ

テレビ朝日『科捜研の女』HPより

 サスペンスドラマシリーズ「科捜研の女」が3月15日の放送で通算200回を迎える。

 1999年10月にスタートし、現在シーズン17に突入、「相棒(主演/水谷豊)のシーズン16と並走し、放送中のドラマの最長寿シリーズだ。刑事ドラマ「はぐれ刑事純情派」(主演/藤田まこと)の史上最長連ドラ記録シーズン18に刻一刻と迫っているので、記録更新は目前だ。

 京都府警科学捜査研究所(科捜研)の法医研究員、榊マリコ(沢口靖子)の怪演と相まって、マリコと強い絆で結ばれている京都府警捜査一課の土門薫刑事(内藤剛志)の一匹狼的な頑固直情ぶりが興味をそそる。そこに「科捜研の女」が最長不倒人気の秘密が潜んでいる。

 真実へのこだわり、諦めない闘争心。それがマリコの魅力だ。難事件にひたすら向き合いつつ、快刀乱麻さながらに巧妙なトリックを見破り、謎やミステリーを次々と解き明かしている。実に溜飲が下がる。マリコのキャッチフレーズ「科学は嘘をつかない!」は、いつまでも色褪せない。

 内藤は、DNA鑑定が進化すればするほど、犯罪の抑止力になると発言。土門刑事のプライドと演じ甲斐を滲ませる。

 記念すべき200回(第17話 2018年3月15日)は、放火に見せかけた火災の真相をマリコが探るが、マリコや土門の働きすぎもテーマだ。

 3月6日にテレビ朝日は「科捜研の女 ファンが選ぶ名作エピソード・ベスト10」を発表。3月9日からテレビ朝日(関東ローカル)で再放送が始まっている。ちなみに、栄えある1位は「マリコVSバスジャック犯!!100均グッズで決死の鑑定」(シーズン16 第16話 2017年3月2日放送) だ。


マリコが活躍している科捜研の仕事は何だろう?


「科捜研」を調べてみよう。

 警視庁(東京都)と道府県警察本部刑事部に設置される科学捜査研究所(科捜研)は、警察庁科学警察研究所(科警研)と連携しつつ、科学捜査の研究と鑑定業務に携わり、科学捜査を底辺から支えている。科警研は警察庁の附属機関、科捜研は警視庁と道府県警察本部の付属機関だ。

 マリコの働く京都府警科学捜査研究所(科捜研)もそうだが、研究員は10〜70人程度で大所帯は少ない。

 研究員は警察行政職員。警察官でないので、捜査権はない。それぞれの専門知識や技術を応用し、犯罪現場から採取した血液などを検査したり、鑑識技術を向上するための研究開発を行う。

 科捜研が取り組む研究と鑑定業務は、法医学(生物科学)から心理学、文書、物理学(工学)、化学まで守備範囲が広い。それぞれの研究と鑑定業務は最先端の科学技術を投入し、大学や企業などの研究機関、科警研、国内学会、国際学会と連携・協力しながら進められる。

現場の血痕のルミノール反応からホシが割れる!


 まず、マリコが担当する法医学(生物科学)分野。犯罪現場に残された血液・体液・毛髪・骨・組織などの検体を分子生物学・生化学・遺伝子工学・生物工学などの検査手法を駆使し、血液型検査やDNA型鑑定を行う。

 マリコが犯罪現場でルミノール反応を進めるシーンがよくある。容疑者が逃亡後に現場に残した血痕からルミノール反応を調べ、血液のDNA型鑑定をすれば、真犯人が特定できるからだ。

 血痕の色は時間の経過とともに褐色から黄色と退色するため、目視で判断できない。だが、ルミノールに過酸化水素水を加えると、青白く発光するルミノール反応を起こすため、微量の血液でも検出できるのだ。
 
 かつて足利事件や飯塚事件では、低精度のDNA鑑定によって重大な冤罪悲劇を引き起こした。その反省に立ち、2010年に警察庁はおよそ30億円を投入し、47都道府県の科捜研に最先端のDNA型解析ソフト「ジェネティックアナライザー(DNA抽出機器)」を稼働させた。

 以来、DNA鑑定の精度は、一致率(本人特定率)4兆7000億人に1人という高水準にまで向上している。

 裁判員制度の発足後は、物証の重要性がますます増しているため、法医学分野の鑑定委託件数は右肩上がりに急増している。だが、鑑定人は高度な熟練と技術が求められるので、マリコのようなエキスパートの育成には長い時間と膨大な費用が必要になる。

犯罪心理、文書分野、物理学分野、科学分野、研究開発分野とは?

 この法医学分野とともに、犯罪心理の研究、ポリグラフによる虚偽検出業務を携わる心理学分野も重要だ。生理心理学から認知心理学・社会心理学・犯罪心理学・犯罪精神医学・犯罪社会学までの深い学識、人格的な素養、豊かな経験が求められる。

 「科捜研の女」で、正義感が強く、情にもろい日野和正所長(斉藤暁)が意欲的に取り組んでいるのが文書(人文)分野。

 筆跡・印章・印字印刷物・不明文字・通貨などの鑑定業務と研究、詐欺・贈賄・文書偽造などの鑑定が主体だ。裁判で証拠物件の検証のために鑑定人の席に着き、証言することも少なくない。

 材料力学・流体工学・熱工学・システム解析学・情報工学・計算工学・電気工学に長けた橋口呂太(渡部秀)が一手に引き受けているのが物理学(工学)分野。

 火災・交通事故・発砲事件の再現実験や調査を皮切りに、車両・構造物・機械・銃器・弾丸・音声・音響などや電子機器などの検査鑑定のほか、サイバー犯罪に使用されたコンピューターの解析も行う。複雑化・混迷化した都市犯罪の解明に欠かせない高度な鑑定ノウハウだ。

 化学分野は、分析化学・無機化学・高分子化学・有機化学・放射化学のケミカル領域のパイオニア、宇佐見裕也(風間トオル)の独壇場だろう。

 覚せい剤・麻薬・シンナー・大麻などの依存性薬物の解析をはじめ、中毒死事件の毒物・薬物、放火事件の油類の分析、不法投棄された廃棄物や産業排水・繊維・塗料・樹脂・金属などの化学的鑑定、油類・火薬類・金属類の分析検査、薬類・爆発物・高圧ガス・放射性物質などの危険物の鑑定まで手広くこなさなければならない。

 化学工場の爆発事故が起これば現場に急行して原因を究明したり、兵庫県にあるSPring-8(大型放射光施設)に詰めて、微量成分の解析に缶詰めになることもある。

 航空テロや空港テロに備えた爆発物や化学兵器の防犯・研究に関わる国立航空科学研究所の技官のキャリアを存分に活かす宇佐見。気象や海洋などの航空安全に関わる知識も豊富。マリコの頼れるアドバイザーだ。

 この他、研究開発分野も中核業務だろう。

 犯罪の手口の巧妙化に伴い、鑑定精度の向上・簡略化・迅速性・冤罪防止のニーズが高まっている。

 研究開発分野は、最新の機器を導入し、技術向上に努めつつ、研究員が大学院に入学して博士の学位を取得したり、大学や学術学会と連携して専門に特化した研究開発を行わなければならない。博士学位取得者(医学・薬学・理学・工学・文学)は全国に約80人いる。

 このように科捜研のマリコらの研究員は、365日休むことなく、研究や鑑定業務に勤しんでいるのだ。
そのミッションはただ一つ。マリコのクレド「科学は嘘をつかない!」。そして「ホシを上げろ!」だ。
(文=佐藤博)

※参考
テレビ朝日
http://www.tv-asahi.co.jp/kasouken17/
http://www.tv-asahi.co.jp/kasouken17/news/0011/

佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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