日本版『グッドドクター』は、韓国版・アメリカ版より輝くことができるのか?

日本版『グッドドクター』は、韓国版・アメリカ版より輝くことができるのか?

写真はフジテレビ『グッドドクター』HPより

 今週7月12日(木)、ついに日本版『グッドドクター』(フジテレビ、木曜劇場)が始まります。山崎賢人さんが主演!人件費削減が叫ばれる小児病棟で、新しく雇う小児科レジデントが高機能自閉症という設定です。トラブルメーカーになるのか、救世主になるのか?

 あんなに個性豊か・人種豊かな俳優陣でそろえているアメリカ版から入ってしまった私としては、日本版の雰囲気すら想像できません。オリジナルは韓国版ですので、日本版グッドドクターは韓国版にちかい雰囲気になるのかなあ〜、と想像しております。

「大人のための童話のよう」と評された韓国版。以前のコラムでも書かせていただいたように、主人公の医師は高機能自閉症、かつサバン症候群です。この設定がこのドラマの主軸ですので、多少の医療描写のお粗末さは目をつむらないといけないドラマです(笑)。

自閉症の医師をどこまで演じきれるかが見どころ

 そのためにアメリカ版のショーンを演じるフレディ・ハイモアの演技は、その目の動き、手の動きすべてが計算の上でなされていることに気が付きます。韓国版でもやはり主演のチュウォンの演技が注目されていましたから、日本版も山崎賢人君の演技が肝になってくるのは間違いありません。

 現在、WOWOW放映中のアメリカ版では、毎回ドラマの冒頭には、自閉症のショーンのこだわりつくされた日常が表現されています。私の一番のお気に入りは、第1回、ドラマの開始早々、ショーンが歩く先に描かれる白線です。きちんと決めた場所を歩くと落ちつく感じが本当によく表れています。

 蛇口から水の落ちる音が気になって眠れなくなり、半パニック状態になってしまうショーン。水が落ちないように修理するのかと思いきや、以前、自分の住んでいた部屋と同じリズムで水が落ちるように設定して安心感を得る。朝はヨーグルトとリンゴなのかな?リンゴを隣人の女性リアに食べられた日、自分が遭遇した銃撃事件よりも、「ルーティンを乱されたリン」を一日中探してしまうショーン。

 誰しも、どうしてもやめられない癖や安心するアイテムが一つはあるのではないでしょうか? わが子が小さい頃はタオルの端っこがお気に入りで、四隅がボロボロになった私のハンカチが大量に存在していました。そんなこだわりアイテムがひとつなら楽ですが、ショーンのように自閉症の子は、いろいろな物や状況に対するこだわりがあります。

 物の数、角度、音、順序、時間などなど......。私には想像もつきません。このドラマの見どころの一つは、ショーンという存在の細かい演出や描写です。私は毎回、その生きづらくなるまでの彼の生活描写に、ぐっと来てしまうのです。

 ショーンが普通の人なら全く気にも留めない日常の事柄に疑問を抱いたり、人との会話の中に小さな発見を毎回繰り返し、それを彼なりに消化し成長していく姿は、あまりの忙しさに流されてしまっていた自分の生活を思わず見直すきっかけにすらなってしまいました。隣人の自由奔放な美女のリアに引っ張られて、一人前の男になっていくショーンも愛らしさ満載でした。

アメリカ版ではお粗末な医療場面

 その一方で、残念ながら医療行為は海外ドラマにしてはお粗末で、突っ込みどころ満載です。

 例えば、ちょくちょく出てくる内視鏡手技。内視鏡を行っている医師は独特の手の動かし方をしますが、劇中ではまったくそのこだわりは無し。おしゃべりしながら、ちょろっと内視鏡を口から入れ、モニター画面は同じ食道を行ったり来たり〜ってな感じ。できる医師を描くための医療手技ですので、細かい事は気にしてはいけないのでしょう。

 そんな突っ込みどころ満載の医療シーンを繰り広げている海外医療ドラマはめずらしいな〜とも思うのですが、回を重ねるごとにそのプアな描写が気にならなくなるほどのヒューマンドラマとしての充実ぶりに引き込まれます。

 ショーンの変化はもちろんのこと、自分のミスで患者を亡くしたレジデントや患者のために必死に悩む若い医者たちの苦悩も見え隠れしています。人種問題、セクハラ問題も大きく取り上げられていて、アメリカならではの脚本だなあ〜とも感じさせる。

 つらつらと書きましたが、とにもかくにもこのドラマ、医療描写より高機能自閉症でありサバン症候群である主人公の、理にかなっているけれど、教科書的ではない医療行為のアイディアの数々が大切なのです。周りのできる医師たちをうならせていく感じはとても爽快感があります。診断に至っていくまでの医師たちのひらめきと、ショーンの特殊能力で上塗りされていく診断力が見ものなのです。

 さてさて日本版グッドドクター。とりあえず見ちゃうんだろうなあ〜。
(文=井上留美子)

井上留美子(いのうえ・るみこ)
松浦整形外科院長
東京生まれの東京育ち。医科大学卒業・研修後、整形外科学教室入局。長男出産をきっかけに父のクリニックの院長となる。自他共に認める医療ドラマフリーク。日本整形外科学会整形外科認定医、リハビリ認定医、リウマチ認定医、スポーツ認定医。
自分の健康法は笑うこと。現在、予防医学としてのヨガに着目し、ヨガインストラクターに整形外科理論などを教えている。シニアヨガプログラムも作成し、自身のクリニックと都内整形外科クリニックでヨガ教室を開いてい。現在は二人の子育てをしながら時間を見つけては医療ドラマウォッチャーに変身し、joynet(ジョイネット)などでも多彩なコラムを執筆する。

シリーズ「本能で楽しむ医療ドラマ主義宣言!」 バックナンバー

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