生前退位、婚約報道… 憲政史家が教える「天皇陛下と皇族について知るべきこと」

生前退位、婚約報道… 憲政史家が教える「天皇陛下と皇族について知るべきこと」

『日本一やさしい天皇の講座』(扶桑社刊)

ブータンを公式訪問されていた秋篠宮ご夫妻の長女・眞子さまが8日、帰国された。眞子さまといえば先日、婚約報道が大きくクローズアップされたばかり。今回の公式訪問でも右手薬指にはめられた指輪が話題になっていた。

日本国民の天皇陛下や皇族に対する注目度はとても高い。
眞子さまの婚約報道はもちろんのこと、天皇陛下の「生前退位」についても知らない日本国民はほぼいないだろう。

2016年8月8日の天皇陛下の「お気持ち」表明を機に、生前退位に向けた議論が一気に加速。今年5月19日には、政府が「生前退位」を可能にする特別法案を閣議決定した。2018年12月末に、天皇陛下の退位と皇太子さまの即位の儀式を行う方向で検討されているという報道もある。

なぜ天皇は日本国民の象徴なのか。なぜ「お気持ち」表明が議論の的になったのか。なぜ「譲位」ではなく「退位」と表現しているのか。こうした知識を身につけるには、天皇陛下や皇族について学ぶ必要があるだろう。

憲政史研究家であり、鋭い指摘で支持を集める倉山満氏による『日本一やさしい天皇の講座』(扶桑社刊)は、天皇陛下や皇族について知ることができる一冊としておおいに参考になりそうだ。

■「百点満点で百点」――「生前退位」の特措法の要点とは?

6月2日に特別法案が衆議院本会議で可決された天皇陛下の「生前退位」。その前の4月26日に提出された特措法の法案について、倉山氏は「百点満点で百点をつけていい内容」と述べる。

では、そこでは一体どんなことが書かれていたのか? その要点を本書から引用しよう。

・特例法で退位を規定し、皇室典範の付則に「特例法は典範と一体をなす」と明記する。
・退位は例外的措置だが、将来の先例となる。
・退位後の陛下の称号は上皇とし、待遇などは特措法で定める。
・退位の条件は、陛下の御意思と国民の理解であると明記。(書籍P176より引用)

現在の法制度では、皇室典範を改正しないことには天皇陛下の退位が認められなかった。しかし、改正について議論を始めると、途方もない時間がかかってしまう。
この点について倉山氏は、「皇室典範に一条だけ譲位の規定を挿入し、手続きは特措法で行えばよい」と考えていた。そして実際にその考えの通りに事が運び、2018年末の譲位が可能となったのだ。

また、何よりも重要なのが、「陛下の御意志と国民の支えで、今回の譲位は実現」した点だ。
憲法学では、日本国憲法制定以来、天皇は「『めくら判』をおすだけのロボット的存在」(『宮沢俊義『全訂日本国憲法』より)とする通説が日本を支配してきた。しかし、その通説が今回で破られた――天皇陛下の御意思で動きだし実現したという点に著者は喜んでいるのだ。

■「なぜ『譲位』ではなく『退位』なのか」の裏にある大きな問題

ところで、なぜ「譲位」ではなく「退位」なのか。
多くのメディアは「生前退位」という言葉を使っているが、新聞社によっては「譲位」という言葉を使っていることもある。例えば、産経新聞は2016年10月28日付けの記事で「生前退位」という言葉を使わず「譲位」を使っていくと宣言している。

倉山氏自身も、この「生前退位」について違和感を持っていたという。
だからといって「譲位」を使わないメディアに対して罵る気はまったくなく、「言葉の問題」であると述べる。

「譲位」と「退位」は、どう違うか。これは言葉の問題です。
退位は自らすることもあれば、他人にさせられることもある。譲位は絶対に自分ですることを前提にした言葉です。とはいうものの、政治的に強制される譲位の例というのは、我が皇室でもごまんとあるわけです。(書籍P154より引用)

以上が倉山氏の見解だ。

そもそも現行憲法下では、「一世一元の制」であるため、自分の意思で譲位することはない。だから、現行法でいうならば「退位」という言葉の方が正しくなるはずだ。もちろん、新しい法案においては「譲位」であるべきだろう。

著者がむしろ問題視しているのは、「生前退位」という言葉に対する言葉狩りだ。「皇室を想う気持ちはわかりますが、そんなことを陛下が望むとでも思っているのでしょうか」と苦言を呈している。

 ◇

日本は「先例」を大事にする国である。これまで積み重ねてきた歴史を大事にする文化があり、本書もその「先例」に基づいた議論を展開している点が特徴の一つだ。そして、皇室の歴史を振り返りながら、三つの疑問に取り組んでいる。

一、なぜ、天皇は必要なのか。
二、なぜ、皇室は一度も途切れることなく続いてきたのか。
三、そもそも天皇とは、そして皇室とはなんなのか。

このシンプルな問いに答えられる人はそう多くはないはずだ。
倉山氏が「平成二十八年八月八日、陛下のおことばから、何かが静かに動き出したようです」と語るように、「お気持ち」表明は国民が天皇という存在に改めて思いをいたす契機となった。女系、女帝、旧皇族の皇籍復帰の是非をはじめ、近現代における天皇の存在について、「二百年に一度の大事件」を経験する日本人が知っておくべき内容である。

(新刊JP編集部)

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