「働き方」を変えるのも大事だけど… 日本人が北欧から学ぶべき“休み方”

「働き方」を変えるのも大事だけど… 日本人が北欧から学ぶべき“休み方”

『fika(フィーカ)世界一幸せな北欧の休み方・働き方』の著者・芳子ビューエル氏

労働基準法が改正され、この4月より有給休暇の5日消化が義務付けられるなど、私たちの働き方は少しずつ変化している。

しかし、まだまだ私たち日本人の働き方は欧米諸国と比較しても効率が悪い。それは一体なぜなのか? その解決のためのヒントを与えてくれるのが、北欧流ワークライフデザイナーの芳子ビューエル氏が執筆した『fika(フィーカ)世界一幸せな北欧の休み方・働き方』(キラジェンヌ刊)だ。

本書の著者である芳子ビューエル氏は1998年にJETROから北欧に派遣されて以来、北欧諸国と日本を主なフィールドとして仕事をしてきた。現在は2つの会社を経営し、北欧家具・雑貨の大手メーカー7社の日本代理店を務めている。

今回はそんなビューエル氏に北欧流の“働き方”、そして“休み方”についてお話を聞くとともに、日本人が自分らしく働いていくために必要なことをお聞きした。

(新刊JP編集部)

■「休み方」を知らない日本人――『fika(フィーカ)世界一幸せな北欧の休み方・働き方』についてお話をうかがっていきます。まず、タイトルにもなっている「fika」について教えて頂けますか?

芳子ビューエル:「fika」は北欧・スウェーデンの生活習慣です。いわば「コーヒーブレイク」のような時間で、実はこの「フィーカ」は「カフィー(コーヒー)」を逆に読んだ言葉で、スウェーデンの造語なんです。いつから使われているかは、はっきりとは分かっていないのですが、1940年代という説もあります。

――比較的新しい言葉なんですね。コーヒーブレイクということは、ちょっとした休憩時間にみんなで集まって話すといような時間でしょうか。

ビューエル:そうですね。プライベートタイムだけでなく、仕事中にもあって、「fikaしよう」と言うと、コーヒーとスイーツを手に皆が集まってくるんです。時間は1回に15分くらい。スイーツはだいたいシナモンロールです。スウェーデンのシナモンロールはあまり甘くないんですよ。

――fikaは1日に何回くらいあるのですか? また、どんな話をするのでしょうか。

ビューエル:数回ありますね。多い人は5回くらいあるし、オフィスで仕事中にfikaするときは1日2回とか。

fikaではそれぞれ話したいことを話しますが、情報交換の場のような役割を果たしているんですね。今気になっていることを聞いたり、一緒に仕事をする相手のことを知ったりするためのコミュニケーションの時間でもあるんです。

――そんなfikaをタイトルにした本書ですが、どんなきっかけで執筆されたのですか?

ビューエル:この本のテーマは休み方、働き方です。fikaは彼らの休み方、働き方を象徴する一つの習慣で、他にも学ぶべきところがたくさんあると思っています。

ご存知のように日本は世界でも有数の先進国です。でも自殺率が高く、WHOの世界幸福度ランキングも54位と低いですよね。一方でスウェーデンやデンマーク、ノウルェーは幸福度が常に上位で、1人あたりのGDPも高く、休みもちゃんと取れています。そういった現実を見て、日本が北欧諸国から見習うべきことはあるのではないかと考えたのがきっかけです。

――「休み方」とおっしゃっていますが、日本人は働き方を変えようとばかり考えていて、休み方までは目がいっていない印象があります。

ビューエル:はい、以前にも一緒にお仕事をさせていただいた日本の企業の方から「働き方改革で休みが多くのなるのはいいけれど、どう家で過ごしたらいいのか分からない」と聞かれたことがあります。だから「働き方」だけでなく「休み方」にもフォーカスしないといけないというのが一つありましたね。

――有給取得についても、日本ではようやく取得が義務化されましたが、逆に「どう休めばいいのか分からない」のでは意味がありませんよね。

ビューエル:これまで日本は有給を取りにくい文化がありましたよね。北欧では休むことは義務だと考えられていて、有給の他にも、育児や病気の場合の休暇には社会保障から給付が出る制度があるんです。だからみんな休むのが当然だと思っているし、付与された期間を取っているのだから誰も有給を取ることを疑問視しません。

■自分のリクエストをはっきり伝える北欧人――欧米諸国の夏季休暇はとても長いです。例えば北欧の方々はどのように過ごすのでしょうか?

ビューエル:日本と違って、夏でもさほど蒸し暑くないうえ、日照時間が長いので、サイクリングをしたり、ピクニックをしたり、泳ぎに行ったりと、外の自然を満喫して過ごします。基本的にはお金をあまり使うことなく、色々なことを楽しむことができるんです。日本の場合は休暇といえば、夏の猛暑から逃れることを大前提に計画しますから、どうしてもどこか涼しいところに行くところから入るので、お金がかかってしまいます。

――日本人は長期休暇があると、旅行などお金を使う過ごし方をしてしまいます。でも、そういうお金を使わない過ごし方ができるのはいいですね。

ビューエル:そうなんですよね。ショッピングするにも消費税が高いし、給料もそんなにたくさんもらえるわけではありません。社会保障にお金を払っているから、そこまで自由に使えるお金は残りません。だからこそ、そういう過ごし方が定着したんですよね。その点の工夫の仕方は日本人もできるのではないかと。

――確かに日本でもできそうな過ごし方ですよね。では、逆に日常の中での休み方について特徴はあるでしょうか?

ビューエル:日常の中ですと、仕事とプライベートの時間のメリハリがありますよね。あちらだとだいたい午後4時になったらもう会社には誰もいなくなります。それまでものすごく集中して仕事していて、その時間になったらパッといなくなる(笑)。
午後4時に仕事が終わり、買い物をして家に帰っても午後5時。それから家族や仲間との時間ですよね。

――北欧諸国は仕事もすごく効率的だと聞いたことがありますが、そういった部分が1日の時間の使い方にあらわれているんでしょうね。

ビューエル:はい。だから、普段はみんな黙って仕事に集中しています。そしてその中で15分、fikaしようと言ってみんなでコーヒーブレイクする。それまで集中していたから、fikaではみんな一気にしゃべるんですよ。そしてまた仕事に戻っていく。雑談しながら仕事とか、そういうダラダラした働き方は北欧にはないと思いますね。

――ビューエルさんは北欧と日本をつなぐお仕事をされていますが、その2つの地域間でのズレを感じることも多いと思います。そこで困ったことはありますか?

ビューエル:困ったことではないのですが、やはり日本人はあまり物をはっきり言わない文化ですよね。北欧の人たちはかなりダイレクトに言うので、「なんでそんな子どもみたいなこと言うの?」と思うことはあります。

彼らは自分のリクエストをしっかり伝えます。「自分はこうしてほしいんだ」ということははっきり言いますね。そういう部分で、日本人の「相手に配慮する」という文化を持って彼らと接すると、絶対にフリクションが起きると思います。そこはどこかで変わっていかないといけないのかなと思いますね。

ちなみに、私自身はっきりと言う方だと思うのですが、それでも「遠回しで伝えることが奥ゆかしいと思うのは間違っているよ」と言われたときは衝撃を受けました(笑)。

――その意味でビューエルさんが経営されている会社は、欧米と仕事をする上での一つのモデルケースとなり得ると思います。北欧企業の良い部分で取り入れている制度がありましたら教えて下さい。

ビューエル:北欧の企業のように有給を取りやすくするという意味で考案した、独特の制度としては、例えば有給休暇は1時間単位で取れるようになっています。
歯医者さんに行きたい、子どもの授業参観に出たい、でも1日休むほどではないというときは2時間、3時間単位で。総務のスタッフは処理が大変ですが、男女問わず好評な制度です。

有給の取り方も役職関係なく申請した人から取れますし、お客様にお茶を出す係も全員が持ち回りで行います。また、出産後に会社に復職したい人には、携帯電話とiPadを支給して、参加しなくてもいいけれど仕事の状況が見られるような環境作りもしています。

あとはfikaですね。この本にも書きましたが、毎週水曜日に私の家にスタッフを呼んで、1対1でお話するんです。また、会社内でもfikaすることがあります。

(後編に続く)

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