危機管理の専門家が語る「日本を標的にしたテロを事前に察知するための知恵」

危機管理の専門家が語る「日本を標的にしたテロを事前に察知するための知恵」

危機管理の専門家が語る「日本を標的にしたテロを事前に察知するための知恵」

ある朝、通勤中に突然、空から弾道ミサイルが落ちてくる。
レーダーをかいくぐったステルス戦闘機が、都心を空爆する。
有名ミュージシャンのコンサート会場にテロリストが侵入。銃を乱射する。

こんな危険性を日々考慮に入れて生活している人は、ほとんどいないはずだ。日本は世界的に見ても安全な国であり、ごくまれに無差別殺傷のような陰惨な事件はあるが、自分の生活圏にはそんな危険は及ばない、というのが大方の共通認識だろう。

しかし、本当はそんなことはない。特にテロの場合、自動車で人ごみに突入する「ラミング・アタック・テロ」など、必ずしも銃火器やナイフが必要なわけではなく、誰にでも実行可能だ。となると、多少は可能性を頭の片隅には入れておくべきだろう。

■テロを察知するために意識すべき「ベースライン」とは

『民間人のための戦場行動マニュアル: もしも戦争に巻き込まれたらこうやって生きのびる』((株)S&T OUTCOMES、危機管理リーダー教育協会、川口拓著、誠文堂新光社刊)は、私たちがもしテロや戦争、ゲリラ戦に巻き込まれたら、どのような行動をとるべきか、またこれらをいかに事前に察知するかを、危機管理のプロが解説する。

たとえばテロの場合、自分が被害にあうのを防ぐためには、人の集まる場所にいかないというのが大前提となるが、通勤でターミナル駅を使わざるを得ない人もいれば、海外旅行で知らない街中に行くこともある。完全に人ごみをさけるのは現実的ではない。

だからこそ大事にすべきなのは、「平時の生活(ベースライン)」を記憶しておくことだという。これは、通勤や通学の途中に、いつも同じ場所を掃除しているおじさんだったり、いつも同じ場所で聞こえてくるテレビの音であったり、通り過ぎる飲食店の匂い、といったものだ。

普段いつもあるものや、いつもいる人、いつも聞こえる音や匂いを観察し、記憶しておくことで、「いつもあるものがない」あるいは「いつもないものがある」という時に異変を察知しやすくなる。普段は何も停まっていない場所に、ある日見慣れない車が停まっていれば、「何かがおかしい」とわかるわけだ。

海外旅行などで知らない土地に行く際は、「いつもあるもの」ではなく「あるべきもの」が基準になる。たとえば、人でごった返すはずの旅先のショッピングモールや市場が妙に閑散としていたとしても、「空いていてラッキー」などと思ってはいけない。人が少ないのは、地元の人間はテロの情報や予告を入手しているからかもしれないからだ。

■まず逃げろ。状況を確認するな

こうした用心にもかかわらず、テロに遭遇してしまったら、やるべきことの優先順位は「RUN(逃げる)」「HIDE(隠れる)」「FIGHT(戦う)」である。

銃声や爆発音が聞こえたら、何が起こったかを確認する前に、その場所から走って遠ざかること。あなたがよほどの重要人物でない限り、そのテロはあなたを標的にしたものではない。距離さえとれば、追いかけてまで攻撃されることはない。真っ先にすべきは状況を把握することではない。逃げることだ。

もし逃げ遅れたら、隠れる。コンクリートで囲まれた場所など、できるかぎり武器による攻撃に強い場所(家具や住宅の壁では銃弾を防ぐことはできない)を日ごろから探す癖をつけておいた方がいいかもしれない。そして、隠れたら、決して物音を立ててはいけない。携帯電話のバイブレーション機能も切っておくべきだ。

逃げられない、隠れるのも無理、となったら、最後は戦うしかない。身の回りにあるもので、なんとか生き残りをはかるしかない。本書によると、包丁やナイフがあるなら相手の首を狙い、それらがなければ、目を狙うべきだとしている。文房具やコップ、クレジットカード、スマートフォンなど、いざとなれば攻撃に使えるものは多々ある。それらをどう使うかを普段からシミュレーションしておくことが大切だという。

当たり前だが、この場面は殺されるか生き残れるかという極限だ。何よりも必要なのは命を賭して戦うという覚悟なのはいうまでもない。

テロや電撃的な軍事攻撃など、私たちの「平時」の生活がいつ暗転するかなど誰にもわからない。「日本は大丈夫」も「私は大丈夫」も油断でしかない。

万が一のことに想像力を働かせ、自分の行動をイメージしておくことが、有事の生死を分けるといっていい。生き残るための指南書として、本書は多くの示唆を与えてくれるはずだ。

(新刊JP編集部)

関連記事(外部サイト)