社会を変えた偉人たちはみな若くして動いた。理不尽な世の中を変えるためには

社会を変えた偉人たちはみな若くして動いた。理不尽な世の中を変えるためには

『2020年6月30日にまたここで会おう』(星海社刊)

混迷極める現代においては、私たちは飛びぬけたカリスマ性を持つリーダーを求め、その人に社会を変えてもらうことを期待する。

故に、耳当たりの良い言葉に耳を傾けてしまうし、そういう人に全ての判断を委ねてしまう。20世紀前半、第一次世界大戦後にドイツで起きたことはまさにそれだった。戦争の反省からワイマール憲法という民主的で理想的な憲法がつくられるものの、内実はそれにそぐわず、国内の経済は崩壊へと向かう。その最中に圧倒的な演説力と行動力で経済を立て直し、人気を得たのがアドルフ・ヒトラーであった。

「誰かがなんとかしてくれる」「誰かすごい人がすべてを決めてくれればうまくいく」というのは、歴史をのぞくと「嘘」であることが分かる。
結局は一人ひとりが自分で考え、どうするかを決めることが、正しい姿なのではないか。

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2019年夏に死去した投資家の瀧本哲史氏が2012年6月30日に東京大学・伊藤謝恩ホールで29歳以下の300人を募って行った「伝説の講義」が、『2020年6月30日にまたここで会おう』(講談社刊)という一冊の本としてまとめられた。

タイトルの中の「2020年6月30日」とは、この講義のクライマックスで次のように瀧本氏が呼び掛けていることに由来する。

8年後の今日、2020年の6月30日の火曜日にまたここに再び集まって、みんなで「宿題(ホームワーク)」の答え合わせをしたいんですよ。
……どうでしょうか?
みなさんは、すでに20代後半とか30代になってると思いますが、「あのときをきっかけに、この8年間、こんなテーマを取り組んでやってみた結果、ちょっとだけですが世の中を変えることができました」とか、「あの日たまたま隣にいた人とこういうことをやったら、こんなことができました」とか、「失敗続きですが、そのおかげで今はこういうことを考えています」とか、何かそういう報告ができたら面白いじゃないですか。再決起ですよ(笑)。
(本書p.193-194より引用)

この講義で繰り返し瀧本氏が伝えていることは、自分で考え、仮説を立て、やってみて、少しずつ変えていこうという、極めてシンプルなメッセージだ。それを様々な歴史的偉人や著名人のエピソードを通して、若者に対して檄を飛ばす。

若さは社会を変えるのにむしろプラスだ。実際、これまで社会に変革を起こしてきた人々は皆、若かった。

例えば明治維新という日本の大きな革命を呼び起こした薩長同盟は、当時35歳の大久保利通と、当時32歳の木戸孝允がそれぞれ藩の代表者だった。
現代の考えから「30代が国政の中心を担うなんて若すぎる」と思うかもしれないが、例えばイギリスのデーヴィッド・キャメロン元首相は39歳で保守党の党首となっている。経済界を見渡すと、京セラやソフトバンク、日本電産、ファーストリテイリング、昔はパナソニックやソニーも、いずれも若くして起業し、常識に挑みながら成長を続け、今は日本を代表するトップカンパニーとなった。

瀧本氏が集まった29歳以下の聴講生たちに対し、パラダイムシフトの起き方や人を動かす交渉術、仲間の集め方、そして社会の変え方を教えて、「自分が正しいと思うことを行動しましょう」と宿題を課す。
ほとんどの人は失敗するかもしれない。だけれど、そのうちの誰かは大きな変化に結びつくことを成し遂げられるかもしれない。そこに正解はないが、社会はそのようにしていろんな人が変えてきたのだ。

新型コロナへの政府の対応、暴走する一般市民の自粛警察、誹謗中傷が問題視されるSNS、進まない働き方改革と広がるばかりの格差など。周囲を見渡せば理不尽なことばかりが起きているように見える。「なんでこうなの?」「なんでそうなるの?」ということばかりだ。

しかし、私たちはその理不尽な世界を生きていかなければいけない。理不尽をずっと感じ続けて生きていくのか、理不尽を少しでも変えようとアクションを起こしてみるのか、それは個人の判断だろう。ただ、誰か一人がアクションを起こし、それが伝播して様々な人が動き、社会は変化していくというのも事実だ。

瀧本氏は「2020年6月30日に答え合わせをしましょう」という言葉を残しながら、昨年夏に亡くなった。その答え合わせの日から、新しいアクションをはじめてみようではないか。

(金井元貴/新刊JP編集部)

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