<東京暮らし(3)>変わり続けるGinza Sony Park

<文 中島早苗(東京新聞情報紙「暮らすめいと」編集長)>

東京と近郊の楽しみ、魅力をお伝えするこの連載。今月は、銀座のソニービル閉館後の跡地が、2020年秋までの期間限定でGinza Sony Parkという「公園」になっていると東京新聞本紙で知り、行って来た。

有楽町駅から数寄屋橋交差点に近づいて行くと、確かにソニービルはもうない。代わりに、巨大な植木鉢や植栽の緑がウッドデッキに配された、オープンなスキップフロアのような公園が現れた。

スペインから運ばれて来たという、樹齢千年のオリーブの大木が迎え入れてくれるこの場所は、公園だから、誰でも入れる。街に開かれていて、つながっている。交差点を渡った多くの人々が「何だろう」という感じで公園に足を踏み入れて行く。回遊できるように緑と道が配されているから、「庭園」とも言えるかもしれない。ブラブラとウッドデッキを歩く人、植栽のエッジや各フロアに幾つもあるベンチに腰掛ける人。多様な国籍、年代の人が、銀座に突如現れたこの自由な空間でくつろいでいるように見えた。

大きな鉢植えが並べられた地上庭園からは数寄屋橋交差点が眺められる(以下、筆者撮影) 大きな鉢植えが並べられた地上庭園からは数寄屋橋交差点が眺められる(以下、筆者撮影)

ソニーの永野大輔社長によれば、ビルはすぐに建て替えの予定だった。しかし2020年に向けての建設ラッシュと重なるため、「みんなが建てるなら建てない」と決めたそうだ。そして1966年から続く「銀座の庭」は現在、地上1階から地下4階まで立体的につながる「変わり続ける公園」となり、期間ごとの体験型イベントなどを実施している。

取材当日、地下2階のイベントスペースは「パーク×ミュージック×ローラースケート」をテーマに、ローラースケート場になっていて、大勢の子どもや大人が楽しんでいた。(9月24日まで。参加、レンタルシューズ無料)

どのフロアも街や外と隔てる扉がなく、街に開かれているのが特長で、例えば地下2階は地下鉄コンコースとつながっている。地下鉄を利用しようと移動する人たちから、ローラースケートを楽しむ人が見える、という不思議な光景が広がっているのだ。

もう一つの特長は、建物全体が、既存のソニービルの構造部分や意匠、素材を残しながらの「解体デザイン」であること。古い部分のどこをどう残すかを考えながらの「減築」でもあり、たとえば仕上げ材を剥がしてむき出しになったコンクリート打ちっ放しの壁、屋上にあったものを移動してレイアウトした「SONY」のロゴなどが格好いい。

地下2階のイベントスペースは、さまざまなテーマに沿った体験型のイベントで変わり続ける 地下2階のイベントスペースは、さまざまなテーマに沿った体験型のイベントで変わり続ける

そんな古くて新しいSony Parkの中を歩くうち、私は以前のソニービルでの体験を思い出していた。「ソニービルで」と言えば誰でもわかるので、30年以上の長きにわたり、銀座での待ち合わせによく使わせてもらった。他のビルやデパートは、用がなければ入りにくい、何か買わなければ出て来にくい雰囲気があるのに対し、ソニービルは用がなくても立ち寄り易い場所だった。

2020年秋までこの公園スタイルを続け、2022年、新ソニービルに生まれ変わるという。空き家が増え続ける日本で、都市の再開発とはどうあるべきかと問うているかのような、ソニーの実験、挑戦を感じた。

中島早苗
今回の筆者:中島早苗(なかじま・さなえ)1963年東京墨田区生まれ。婦人画報社(現ハースト婦人画報社)「モダンリビング」副編集長等を経て、現在、東京新聞情報紙「暮らすめいと」編集長。暮らしやインテリアなどをテーマに著述活動も行う。著書に『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)、『建築家と造る 家族がもっと元気になれる家』(講談社+α新書)、『ひとりを楽しむ いい部屋づくりのヒント』(中経の文庫)ほか。

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