巨大な松が屋根をブチ破っている... 樹齢450年、雲南市にそびえる「浪花家の大松」はなぜこうなった?

巨大な松が屋根をブチ破っている... 樹齢450年、雲南市にそびえる「浪花家の大松」はなぜこうなった?

巨大な松が屋根をブチ破っている... 樹齢450年、雲南市にそびえる「浪花家の大松」はなぜこうなった?の画像

家をブチ破って生えた松を見つけた──。

そんなつぶやきとともに投稿された、ある家屋と松の木の写真がツイッターで話題になっている。

松が家をぶち破る......結構な一大事だが、一体どういう状況なのだろう。気になる現場の様子が、こちらだ。

のどかな街並みの風景。手前にある二階建ての建物を見ると、たしかに家の中に大きな松の木が!

しかも屋根を突き破るような格好で上空に伸び、その高さは二階よりも高い。実に立派な大松だ。しかし、一体なぜ家の中に生えているんだ......?

こちらの写真に対し、ツイッター上では、

「これは見事な!」「これは驚きのシチュエーションなのです」「まるでアートのようで素敵です」

といった声が寄せられている。

話題になっているのは、ツイッターユーザーの道民の人(@North_ern2)さんが2021年5月30日に投稿した写真。Jタウンネット記者は投稿者と、この家屋の管理者に話を聞いた。

■とにかく「なんでこうなった!?」って感じ

日本各地の古い建物や町並みを旅しながら写真を撮ったり、現地に住む人に暮らしぶりや現地の気候、昔の話を聞いて記録する著作活動をしている「道民の人」さん。

松の生えた家の写真を撮影したのは、2019年5月のゴールデンウィークのこと。場所は、当時北海道に住んでいた道民の人さんが、新幹線と寝台列車を乗り継いで行った、島根県雲南市(旧木次町)の古い町並みにある「浪花酒店」という酒屋だ。

「GWの時期は毎年中国地方を訪問しており、この年も10日間まるごと使って、山陰地方をメインに旅をしていました。旧木次町を含む雲南市周辺は、かつてたたら製鉄で栄えた山村や、鉄を採取するために山を切り崩した地形を再利用した棚田が発達した農村が広がり、古い駅舎が存在する木次線や旧街道沿いに赤い屋根瓦の家が建ち並んでいます。この風景が好きで、この日も奥出雲町から雲南市、松江市周辺部を巡っていました」(道民の人さん)

雲南市の旧街道沿いは何度も通っていたものの、きちんと隅から隅まで歩いたことはなかったため、その日は時間を作ってゆっくり散策することに。

そして、木次駅前の商店街から日登方面へしばらく歩いたところで見つけたのが、この大きな松が生えた家だったそうだ。

実際にこちらの家を見つけた際の感想として、道民の人さんは、

「とにかく『なんでこうなった!?』って感じでした。木の大きさ等から、おそらく家の方が後から建てられたんだろうとは思いましたが、初見の印象としてとにかく『家をブチ抜いて生えた松』という単語が浮かんで仕方がなく、今回もツイートの題に使わせてもらいました。山陰地方は立派な屋敷や町屋の家並みが多くありますが、ここまでインパクトがある風景もそうありません。そして、木自体の立派さもさることながら、枝や葉の剪定が行き届いた姿に、この松を管理している方の腕や熱意を感じて『見事!』と見上げ続けました」(道民の人さん)

と振り返った。

■あの伊能忠敬も見上げていた?

Jタウンネット記者は15日、この大松を管理している浪花酒店にも取材した。取材に応じた同店店主は、この松の概要や由来についてこう語った。

「こちらの松は『浪花家の大松』と呼ばれていて、樹齢は約450年、樹高は約12メートル、枝の全長は約25メートルです。1688年、かつて雲南市にあった三刀屋城の城主に仕えていた土屋家という一族が、同城没後に旧木次町で造り酒屋を創業したのですが、その際にこちらの松を同家のお屋敷の門掛けの松(門などの横にある、枝の一部が横に広く伸びていてその下を通れるように剪定された松)としたとされています。なので、以前は『土屋家の大松』と呼ばれていました」(店主)

ちなみに、江戸時代後期の1813年11月には、本格的な日本地図を創ったことで有名なあの伊能忠敬の一行30人が土屋家の屋敷に止宿したという記録もあるそうで、「彼もきっとこの松を見上げていたことでしょう」とのこと。

そして、時は流れて1896年、同地で酒屋を創業した浪花家がこの大松を所有することとなり、以来「浪花家の大松」と呼ばれるように。

「浪花家の酒屋は1943年に企業整備のため廃業したのですが、その後も小売り酒販業に転業して店を続け、現在に至っています。その間、浪花家の当主が代々松の手入れを続けてきました。また、50年ほど前からは加茂町にいる庭師さんにも依頼して、手入れをしてもらっています」(店主)

また、松が家の中から飛び出すような格好で生えている理由について、店主は、

「松が生えている家はうちの店が貸し家にしているものでして、正確な時期は不明ですがずいぶんと前にお店を開くためにここを借りた人から、建物をもう少し広げたいとの声があったそうです。もちろん、この松を切り倒して敷地を確保するわけにはいかないということで、結局松の周りを囲むようにして増築したことでこういった形になり、今に至るということのようです」

と説明した。

ツイッターでの反響について、浪花酒店の店主は、

「こうして有名になってくれることはありがたいです。これをきっかけに、雲南市に足を運んでくれる方が増えてくれればうれしいですね」

と述べた。また、冒頭の写真を投稿した道民の人さんも、

「島根県、ひいては雲南市周辺部の地酒は非常に品質がよく、浪花酒店さんでも販売されております。木次の街並みはこの他にも明治時代から続く木造旅館など、風情のある建物やスポットがたくさんありまして、私も訪問した際は実際に浪花酒店さんでお酒を購入したほか、この日の宿にもしました。この投稿をきっかけに、なるたけ地元の情報が多くの方に届き、実際にこの場所を訪れる方が増えて、そして街の経済に還元されたらいいなあと思います」

とコメントしている。

実に戦国の世から生えている「浪花家の大松」が見守る雲南市。

実際にこの大松を見に、あるいは地酒を楽しみに、コロナが落ち着いたら皆さんもぜひ一度、訪れてみてはいかがだろうか。

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