ピンクリボン「乳がん」男も知っておくべき基礎知識(3)

 早期発見の場合には比較的容易に治療できる乳がんだが、いったん遅れてしまうと乳房に密集するリンパ腺を通じてあっという間にがんが全身転移する恐れもある。そうした進行具合によって治療法は違ってくるし、またひとくくりに乳がんといっても、病状次第で効果のある薬剤も異なり、そのため治療費も一概にいくらとは言えない。
 「妻の胸に1円玉ぐらいのしこりがあることに気付いて受診させると、初期段階のステージ1との診断。すぐに入院治療となったのですが、それでも最初の1カ月だけで30万円くらいはかかったでしょうか」(50歳・自営業)

 例えば70歳未満の被保険者で月収53万円以下の場合だと、高額療養費制度の適用により医療費自体は月額上限8万100円+(医療費の総額-26万7000円)×1%となる。
 ただし、これ以外にも入院時の差額ベッド代や奥さんの入院による家事経費増など、さまざまな金銭負担は覚悟しておくべき。

 さらに乳がんの場合、一度の施術により完治とはならず、以後も3〜5年程度は継続してホルモン治療等のために通院加療が必要となる。
 「毎月約3万円の治療費は決して楽な金額ではありません」(同)

 がんが進行して長期入院となったときには、当然、これ以上の金額が必要となる。そして、手術に際しては乳房温存か全摘出かという問題も生じる。
 「全摘出の方が再発リスクは減りますが、どうしても温存したいという女性は多い。ただ、最近になって全摘出後のインプラントによる乳房再建手術に保険が適用されるようになったため、出産授乳の予定のない人であれば、そちらを選ぶのもいいのでは、と思います」(前出・専門医)

 乳房という女性の象徴的な個所の病であるため、たとえ完治しても心に傷を抱える女性の多いことを男性としては忘れてはならない。
 「妻は手術ではなく放射線療法で完治したのですが、その後、夜の営みには全く応じてくれなくなりました。“セックスで女性ホルモンが増加すると再発するかもしれないから”というのですが…」(36歳・会社員)

 性交渉による女性ホルモン分泌が乳がん発症リスクを高めるというのは完全な俗説だが、それだけ心痛が大きかったということか。切らなくてもそうなのだから、これが乳房切除となったときにはなおさらだ。
 「そうした術後の精神面を支えるため、最近、注目されるのが緩和ケア外来です。がん全般においては、療養中の身体の痛みや吐き気などの体調不良、治療後にも再発を恐れる精神的苦痛に悩まされるもの。カウンセリングにより、そうした肉体と精神の悩みを和らげるのが緩和ケアの目的です。特に乳がんのような女性特有の病気は、いくら近親者でも男性では分からない部分も多く、できれば発症が分かった時点からこうしたところを頼るのがいいでしょう」(前出・専門医)

 残念ながら早期の発見に至らず、回復の見込みがなくなったとき、周囲はどう接するべきなのか。死への向き合い方は人それぞれで何が正解とは言い難い。
 いま何歳なのか、子どもはいるのかいないのか、仕事の有無は? …憂いなく最期のときを迎えるための終活も、その立ち位置によって違ってくる。

 それでも、一つだけ確実に言えるのが“1日でも長く生き延びるべきである”ということ。
 「医療の世界は日進月歩。中でもがん治療は最先端分野で、今の時点では治せないものでも半年後には可能になっているということが現実にあるのです」(前出・医療ジャーナリスト)

 新たな治療法が発見されたり、今は国内で認可されていない薬が認可されるなど、近い将来に劇的な治療環境の変化が訪れる可能性は十分にある。
 長く生きれば、それだけ治る可能性が高まるという希望を持ち続けることが大切なのである。

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