肝疾患で死に至る事もある… 亜鉛欠乏症の味覚異常シグナル(1)

 亜鉛欠乏症は、血中の亜鉛濃度が低下し、体内の亜鉛が不足した状態を指す。欠乏症になると、「味が分からない」、「食欲がない」、「元気がなくなる」、「傷が治りにくくなる」といった状態や、口内炎、貧血、皮膚炎、脱毛などの症状が出る。
 ところが、亜鉛が足りないからといって、そのような事態になるなんて聞いたことがない、という人も多いだろう。
 しかし、東京多摩総合医療センター臨床精神医学の担当医はこう指摘する。
 「亜鉛欠乏症は決してまれなことではありません。認知度が低い理由の一つとして、教科者や論文に亜鉛欠乏症に関する記載がほとんどなく、それによって医師の大部分が識別診断ができなかったことにある。もう一つは、亜鉛欠乏症を疑い、検査で亜鉛の不足が確認できても、別の疾患に承認されている薬を用いるしか手の打ちようがなかったという点。そもそも検査すら行われていなかったという状態もあります。ところが、臨床実験を積み重ねることによってようやく新しい薬剤が登場した。それによって亜鉛欠乏症の認知度も高まり始め、他の治療法でうまくいかなかった患者さんにも、症状の改善が期待できるようになったのです。ただし、普及度はまだまだという段階です」

 亜鉛欠乏症は、年代によって、見られる症状が異なるという。乳幼児で多いのが皮膚炎、体重・身長の増加不良。小児では低身長、食欲不振。成人・高齢者では味覚異常、食欲不振、性腺機能不全、貧血、骨粗しょう症、感染症にかかりやすくなる点。また妊娠では、貧血や食欲不振などが如実に表れる。
 別な医学関係者はこんなことを言う。
 「亜鉛不足と味覚異常を関連付ける人は多いが、それは亜鉛不足の弊害では氷山の一角ということです。亜鉛は、たんぱく質の維持、酵素の活性など、体内で様々な重要な役割を担っていることを認識していただく必要があります」

 中でも注目しておきたいのが、亜鉛と肝疾患の関係だという。
 肝疾患は、肝臓に炎症が起こる慢性肝炎から、線維化が進行した肝硬変に移行する。そして、タンパク質・エネルギー代謝異常が起こり、肝機能の低下(肝不全)による諸症状が表れ、重症化すれば死に至る。
 「ここで問題となるのが、タンパク質代謝の異常です。アルブミン値が指標になるのですが、3.5g/dlを下回ると生命予後が著しく悪くなる。各臓器が生きていく上で欠かせないホルモンなどの合成に必要な材料を供給しているのが、肝臓なのです。肝臓のタンパク質代謝は、タンパク質合成に関わる働きをし、そこで重要な役割を果たすのが亜鉛なのです」(医療関係者)

 また、大きな問題として取り上げられるのが、やはり味覚障害だ。
 長年にわたり生活習慣病改善運動に取り組んでいる医療ジャーナリストの相原恒夫氏は、「なぜ亜鉛が不足すると味覚異常や味覚障害を起こすのか」の理由について、こう説明する。
 「亜鉛というミネラルは、細胞の新陳代謝に必要不可欠な成分で、当然のことながら味を感じとる“味蕾”と呼ばれる器官を形成する“味細胞”の新陳代謝に関しても、重要な働きをしています。また、味細胞は新陳代謝が早い細胞なので、亜鉛不足によって代謝のサイクルが鈍り出すことで、味覚の機能も異常を引き起こしやすくなるのです」

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