アルコールだけが原因ではない 肝臓疾患を回避する優しい食生活(2)

 こんな例がある。東京在住の会社員、小山隆彦さん(仮名・47歳)は2年前、近くの内科医で“糖尿病”と診断され、医者から血糖値を下げる薬を飲み始めたという。ところが、糖尿病の症状は安定したものの、昨年の定期検診で肝臓の異常を指摘された。そして、同年暮れの再検査でさらに肝臓の数値が悪くなっていたため、専門外来がある大学病院を受診した。
 「私はお酒をほとんど飲まないため、肝臓が悪くなる理由がまったく思い当たらず、医師に糖尿病の薬が原因ではないかと聞いたんです。でも、血液検査とエコー検査の結果、『脂肪肝の一つであるNASH』と診断されたんです」
 と小山さん。
 この「脂肪肝」というのは、肝臓の細胞の5%以上に“脂肪かたまり”が沈着した状態を言う。

 肝臓病を研究する内科クリニックの篠原伸顕院長はこう語る。
 「最近は1合ほどの飲酒でも脂肪肝になる人が増えています。NASHを含め、ウイルス性、アルコール性の肝炎以外の要因でかかる肝疾患の総称を『非アルコール脂肪性肝疾患』(NAFLD)と言いますが、発症する背景には内臓脂肪型肥満や糖尿病、高血圧、脂質異常症などが考えられ、“メタボ型脂肪肝”とも呼ばれているんです」

 このNAFLDの8割は「単純性脂肪肝」とされ、進行の恐れがない良性の脂肪肝だが、残り2割はNASHに進むとされている。NASHであれば、炎症や線維化(肝臓が硬く変質する)を伴う進行性脂肪肝となる。
 医療関係者によれば、この脂肪肝は約10年間で3割前後が肝硬変、肝がんへ進む。過度の飲酒がなくても生活習慣病からがんとなり、命を落とすケースがあるのだ。
 「厄介なのは、NASHの人の5〜20%が10年以内に肝硬変に進行するとみられていながら、いまだに特効薬や確立した治療法がないこと。そのため、治療は自助努力に頼るほかになく、脂肪肝をなくすには、ひたすら食事と運動で脂肪肝の状態を改善し、背景にある持病をコントロールするしかないのです」

 管理栄養士でフードスペシャリストの清水由美子氏は言う。
 「太っている人は、とにかく肥満の改善が一番です。体重を最低10%ぐらいは減らさないといけません。そのためにも、食事は脂肪分を減らすこと。肝臓は余剰のエネルギーを中性脂肪やグリコーゲンにして溜め込むので、吸収の速い空腹時には甘味飲料の一気飲みなどは避けるべきです。間食もやめ、食べる時間と食べない時間を常にはっきりさせることが大切になります」

 そして最後に、清水氏が「脂肪肝を防ぎ肝臓を守る」ための“優しい”食事をこう指摘する。
 (1)アルコールを飲んだ場合は、煮物や炒め物などの他に野菜やキノコ類を食し、肉類は少なくする。
 (2)肉類の代わりに、大豆ミート(マクロビ料理)がお勧め。
 (3)ドーナツやパンケーキ、チョコなどの甘いスイーツがやめられない人は、寒天を使ったスイーツや低カロリーの和菓子に少しずつ変えてみる。
 (4)脂肪肝予防には、タウリンを含む牡蠣、タコ、イカなどを多く食べる。コレステロールや血糖値を下げ、肝臓の働きを高め、中性脂肪を排出するため。

 食文化の変化から、中年層の病気だと思いがちの脂肪肝が若い世代にも増えている。他人事とは思わずに、いま一度、生活習慣を見直す必要がある。

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