〈目からウロコの健康術〉 予防も治療も慎重な歯科医院選びから歯を守って「認知症」を防ぐ!

〈目からウロコの健康術〉 予防も治療も慎重な歯科医院選びから歯を守って「認知症」を防ぐ!

(提供:週刊実話)

歯ブラシを片手に、歯の磨き方を指導する先生を一生懸命真似る児童。誰もが経験した虫歯予防週間(6月4日〜10日)の一場面だ。

 子どものうちは、毎日真面目に歯磨きをしていても、大人になるにつれて怠り気味になり、一杯やっては歯を磨かずに寝落ちる日々。いつしか歯の状態は悪化し、ある日激痛に耐えきれず、よく選びもせずに手近な歯科医院に駆け込む……。思い当たる読者も多いのではないか。

 歯の治療がうまくいかない患者が広く関東各地から訪れる、横浜市の医療法人社団敬友会理事長を務め、歯科医師として自らも治療にあたる久保倉弘孝歯科医師は言う。

 「患者さんの口の中を見ると、ブラッシングが不十分な方がほとんど。適切なブラッシングができているかどうか自分ではなかなか分からないものです。患者さんに実際に歯を磨いてもらい、歯科衛生士が磨き残しはないか、ブラッシングに無理な力がかかっていないか、歯間に歯垢(プラーク)や歯石が残っていないかなどをチェックして、適切なブラッシングを指導するのが重要なのです。できれば毎月、せめて3カ月に1回、歯科医院で定期メンテナンスを受けてもらいたい」

 歯科の定期メンテナンスでは、歯や歯茎の検診を行い、歯科衛生士がセルフケアを指導するとともに、歯に付着した歯垢や歯石を除去するクリーニングを行う。こうして予防意識を高め、虫歯や歯周病になりにくい口腔環境を整えることが、歯を健康に保つポイントだという。

 歯科先進国といわれるスウェーデンやアメリカに比べて、日本では高齢になっても歯の健康を保っている人は少ない。平成19年(2007年)の「歯科疾患実態調査」(厚生労働省)によると、80歳時の残存歯数は日本の9本に対して、スウェーデンは21本、アメリカは17本。注目したいのは、定期的に歯科医院でメンテナンスを受けていた人の割合で、日本はわずか2%。これに対してスウェーデンでは約90%、アメリカでは約80%が定期メンテナンスを受けていた。

 その後の「歯科疾患実態調査」で、平成28年(2016年)に平均残存歯数約15本と、劇的に改善した数字が示されているが、前出の久保倉歯科医師は残っている歯が健康といえるのかどうか疑問だという。

 「これは長年の臨床経験からの実感です。残念ながら下手な歯科医師が歯を改悪することもあるのです」

★間違いたくない歯科医院選び

 虫歯が進行して、細菌が歯根内の組織である歯髄にまで達してしまった場合、歯を削って感染した歯髄を抜き、詰め物を充填する「根管治療」を行う。いわゆる「神経を抜く」治療だ。

 歯の健康を司る、本来は重要な組織である歯髄を抜くのは、細菌による感染の拡大を防ぎ、歯を抜かなくてはいけないような事態を食い止めるためで、虫歯治療の最後の砦といえる。

 ところが歯科医師の多くは、この根管治療をうまく行えていないというから驚く。根管治療後が思わしくないと、歯の内部にまで繁殖した細菌が歯根の先にある「根尖孔」から歯を支える歯周組織にまで漏れ出し、土台となっている骨(歯槽骨)にまで至る。最悪の場合、歯を失うだけでなく、歯槽骨も溶かされ、周辺の歯も影響を免れにくい。

 「もちろん、十分な根管治療を行うスキルがない歯科医師が問題なのですが、私は歯科大学による教育や、あまりにも安い根管治療の診療報酬も改善してほしいと思います」

 適切とはいえない歯科教育によって、治療がうまくいかない上に診療報酬を低く抑えられているため、多くの歯科医師はできれば根管治療を避けたいと思っているという。根管治療がうまくいかない一因はここにあったようだ。
 では、一体誰を頼ればいいのか?

 「予防に勝る治療はありません。まず、予防を心がけてください。その上でどうしても治療が必要になったら、慎重に歯科医院を選んでください。治療計画や費用をしっかり明示してくれて、2・3回で根管治療を終える歯科医師が、よい歯科医師です。だらだらと長く治療を続ける歯科医院や、痛くもないのに『神経を抜きましょう』というような歯科医師は避けたほうがいい」(久保倉歯科医師)

 歯を痛めた末の手近な歯科医院への“飛び込み”は、避けたほうがよいのは言うまでもない。

★よく噛めば脳は活性化する

 「よく噛んで食べると脳の働きがよくなる」という。顎の筋肉を活発に動かすと、顎から脳につながる血管の血流がよくなり、脳の働きに好影響(記憶を司る海馬の活性化など)を与えるといわれているのだ。

 さらに、よく噛むことで胃腸の働きも活発になり、消化吸収が促進される。また、唾液の中の酵素には発がん物質の発がん作用を消す働きがあることも知られている。唾液の分泌は活発な咀嚼で促される。

 そして注目したいのは、噛むことが認知症の予防につながる点だ。

 神奈川歯科大の山本龍生准教授らが平成24年(2012年)に、『アメリカ心身医学会雑誌』に発表した研究報告(愛知老年学的評価研究/AGES=高齢者を対象にした疫学研究。愛知県の自治体を中心に、65歳以上の4425人を対象に調査した)によると、歯がほとんどない(残存歯数が一桁)にもかかわらず義歯を使用していない人は、20本以上歯が残っている人より、認知症による要介護認定を受けた頻度が高く、そのリスクは1・85倍だった。

 また、かかりつけの歯科医院について、「ない」と答えた人は、「ある」と答えた人より1・44倍発症リスクが高かったという。

 山本准教授らは、これについて複数の理由を挙げている。(1)噛めないために脳の血流を促すことができない、(2)満足に噛めないために食生活が偏り、認知症リスクを下げる野菜や豆などを摂取できない、(3)歯周病による慢性的炎症で分泌されるサイトカイン(炎症性物質)が脳神経細胞に悪影響を与えている。

 自分の歯をしっかり守って、よく噛むことが認知症の予防につながるのだ。

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