名医・博士の健康術 ★今週のテーマ ふくらはぎ

名医・博士の健康術 ★今週のテーマ ふくらはぎ

(提供:週刊実話)

“細い”“やせている”人は4年以内に命を落とす危険性も長寿&元気のカギは「ふくらはぎ」にアリ!!

 ふくらはぎは、普段あまり気にとめない体の部位だが、専門家の間では「第2の心臓」と呼ばれるほど重要視されている。そのせいもあってか近年は、ふくらはぎに対する注目度も高まっており、関連本も次々と出版されている。介護老人保健施設「むくげのいえ」の施設長で、医学博士の齊藤嘉美先生も、ふくらはぎに注目している1人だ。

 「心臓から出た血液は、動脈を通って全身に行き渡り、静脈を通って戻ってきます。血液全体の7割は下半身に集中しますが、足から心臓へ向かう静脈は重力に逆らって進むので、流れが滞りやすくなります。しかし、ふくらはぎの筋肉がポンプのように収縮と伸展を繰り返すことで、血液が押し上がっていきます。そのため、ふくらはぎの筋力が柔軟でよく動くほど下半身の血液が心臓へスムーズに還流しやすくなり、全身の血流がよくなって、新鮮な酸素や栄養が体内に行き渡りやすくなります。細胞も活性化するので、生活習慣病など様々な病気の発症や進行も防いでくれます」(齊藤先生)

 例えば、ふくらはぎの筋肉を強めて筋ポンプの働きを向上させれば、下半身の血流がよくなって心臓の負担が減り、高血圧の改善につながる。

 また、筋肉には食事で摂ったブドウ糖を取り込んで血糖をコントロールする働きがあるが、ふくらはぎをはじめとした全身の筋肉が減少すると、取り込めるブドウ糖の量も減ってしまう。そうなると高血糖の状態が続き、糖尿病などの原因にもなるので、血液を押し上げる役割を担うふくらはぎの筋肉を増やしていく必要があるのだ。

★ふくらはぎが細いのは危険

 ふくらはぎの状態が健康を大きく左右することは、「老いの過程」を長年にわたって研究してきた東京大学の飯島勝矢教授の調査でも明らかになっている。

 千葉県柏市で自立している65歳以上の男女約2000人を対象に調査したところ、ふくらはぎが細すぎる人は、そうでない人よりも、4年間で3.2倍も多く亡くなっていたことが分かった。ふくらはぎが細いというのは、筋肉がないということでもあり、衰えている証拠である。そのため、まずはセルフチェックで自分のふくらはぎを確認することが、健康寿命を伸ばすうえで大切なのだ。

 「ふくらはぎの年齢チェックは簡単にできます。両手の親指と人差し指で輪っかを作り、ふくらはぎが最も膨らんだ部分を囲んで太さを測るだけでOKです。この時、ふくらはぎが囲めなかったり、ちょうど囲める程度であれば、特に問題ありません。しかし、ふくらはぎと輪っかの間に隙間ができたら、ふくらはぎ年齢が衰えている証拠です」(齊藤先生)

 また、ふくらはぎの筋肉の状態で、全身の筋肉の大体の状態を把握することができる。ふくらはぎが細く、なおかつ弾力がない人は特に危険なので、今すぐケアに取り組むべきだ。

★生活習慣から変えていく

 ふくらはぎがやせて衰えると、ポンプ機能が低下するので、下半身の血流が滞り、その影響は全身にも及ぶようになる。また、足を踏ん張って体のバランスを取るのが難しくなるので、転倒しやすくなる。

 さらに、細くなったふくらはぎは「サルコペニア」を招く恐れがある。サルコペニアはギリシア語の「サルコ(筋肉)」と「ペニア(減少)」を組み合わせた造語で、「骨格筋量が減ることで、骨格筋力や身体能力が低下して死のリスクを伴う状態」を指す。

 「サルコペニアが生じる要因は様々ですが、加齢による筋肉の減少で起こる『1次性サルコペニア』と、病気や栄養不足、活動量の低下が関連して起こる「2次性サルコペニア」に分類されます。活動量が減ると、ふくらはぎの筋肉も衰え、食欲もなくなって栄養不足になります。そうなると、ふくらはぎの筋肉がさらに減り、サルコペニアを招いてしまうのです」(齊藤先生)

 こうした状態が続くと骨や関節、神経といった筋肉以外の運動器も弱ってしまい、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)を招いたりする。健康状態が要介護に近づく要因にもなるので、食事や運動など、生活習慣から変えていかなければならない。

★運動と食事に気をつける

 ふくらはぎの衰えは、座りっぱなしや末梢神経の減少、粗食で生じやすい。そのため、こまめな運動と、肉や魚、卵といったタンパク質の摂取が不可欠だ。

 「体内ではタンパク質の合成と分解が常に行われており、これが筋肉量の維持につながっています。筋肉をよく動かすことで合成と分解は活性化し、逆に動かさないと合成が滞り、分解だけ進んで筋肉量が減ってしまいます」(齊藤先生)

 例えば、座りっぱなしで体をあまり動かさなかったり、歩く機会が少ない人は、筋肉の合成ができなくなり、ふくらはぎも細くなってしまう。また、60歳をすぎると運動神経の末梢神経が減少し、筋肉が萎縮して素早く動きにくくなる。そのため、「歩いて行けるような場所なら車は利用しない」「家の中にいる時も掃除や洗濯を積極的に行う」など、日頃からこまめに体を動かす必要があるのだ。

 また、高齢になると食が細くなって粗食になりがちだが、これも栄養が偏り、タンパク質不足を招く恐れがある。

 「食物に含まれるタンパク質は体内でアミノ酸に分解され、その後に『筋肉タンパク』として合成されます。アミノ酸は食物によって組成が異なり、体内でそれぞれ違った働きをします。筋肉の合成や修復にかかわっているのは必須アミノ酸のロイシン、イソロイシン、バリンの3種類で、これらはまとめて『BCAA』といいます。不足すると筋肉を作ることができないので、赤身の肉やレバー、卵、大豆製品、牛乳、マグロやカツオといった赤身の魚など、BCAAを多く含む食材を毎日の食事に取り入れていきましょう」(齊藤先生)

 ふくらはぎの衰えは、急に起こるものではない。日頃の生活が大きくかかわってくるので、セルフチェックやこまめな運動、タンパク質を意識した食生活を日々心がけよう。

,673;必須アミノ酸BCAAを豊富に含む食材
*赤身の肉やレバー *卵 *牛乳 *マグロ・カツオなどの赤身の魚 *豆腐・豆乳・みそ・おからなどの大豆製品など

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監修/齊藤嘉美先生
医学博士。成和会介護老人保健施設「むくげのいえ」施設長。東京大学医学部講師、文京第一医院院長などを経て、現職。『栄養+運動で筋肉減少症に勝つ―高齢者の転倒・骨折・寝たきりを防ぐ』(ペガサス)など著書、多数。

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