IT業界の特許権を狙って食いものにする「パテント・トロール」とはどんな存在?

IT業界の特許権を狙って食いものにする「パテント・トロール」とはどんな存在?

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「パテント・トロール」という言葉をご存知でしょうか? これは別名「特許トロール」とも言われ、一般には、自社が保有する特許について、自社では当該特許を利用した製品の生産を全く行わない反面、特許侵害をしている他社を見つけては、特許権侵害を理由に損害賠償請求訴訟を起こし、賠償金を得るビジネスのことを意味しています。

主にIT系大企業が標的とされることが多く、「特許の寄生虫」、「特許の海賊」と呼ばれることもあるようです。ちなみに、トロールとは北欧の怪物のことです。

では、このパテント・トロールは日本においては、法的にどのような存在として位置づけられているのでしょうか。

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

■現状では主にアメリカで問題となっている

特許権の分野では、よく問題とされるこのパテント・トロールですが、日本で実際に問題となっている話はあまり聞きません。

アメリカでは、高額な損害賠償金を得る目的で、個人の特許権保有者や特許を保有しているもののあまり活用していない企業から安価に大量に特許権を買い集め、大企業などの製品で特許権侵害の疑いがある製品を見つけ出しては、特許権侵害を理由に賠償金を請求している事例があります。

有名な事例では、従業員もおらず、製品も生産していない特許権保有者のパテント・トロールが提起した特許権侵害訴訟で、被告側のアップル社が日本円にして600億円以上の賠償を命じられた例があります。

これほど高額な賠償額となっているのは、アメリカで懲罰的損害賠償の制度が設けられていたり、民事でも陪審制度が採用されていることも関係しています。

■日本でも起こりうる問題

理論的には、日本でも、特許権者の特許権を侵害すれば、損害賠償義務が生じますから、同じような問題が起こる可能性はあります。

ただし、パテント・トロールをするためには、ほとんど活用されていない特許権を、大量にかつ安価に買い集めることが必要であり、日本で同じようなことをするのは事実上難しいかもしれません。

また、アメリカと違って、日本では民事の陪審制度が採用されておらず、損害賠償として認定される賠償額も、全般的に低めとなる傾向が強いです。それなりのコストをかけて特許権を買い集めた後に訴訟をし、賠償金を得て利益を得るパテント・トロール行為がビジネスとして成立しうるかは、疑問も残ります。

*この記事は2015年8月に掲載されたものを再編集しています。

*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中 国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)

【画像】イメージです

*barman / PIXTA(ピクスタ)

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