見捨てられるのが怖い…! 「メンヘラ」を精神科医が解説

見捨てられるのが怖い…! 「メンヘラ」を精神科医が解説

画像提供:マイナビニュース

●精神医学的分類では「境界性パーソナリティー障害」

恋愛関係において、パートナーへの束縛が激しくなったり、情緒不安定になったりした女性の様子を「メンヘラ」と称することがある。若い世代を中心にカジュアルに使われがちな言葉だが、医学的な定義があるわけではない。

では、一般的にメンヘラと呼ばれる女性(もしくは男性)の症状は、専門家の目にはどう映るのだろうか。精神科の高木希奈医師に見解をうかがった。 *

○境界性パーソナリティー障害の特徴

最近「メンヘラ」という言葉を至る所で耳にしますが、元々は、2ちゃんねるの「メンタルヘルス」という掲示板が"メンヘル"と略されるようになったことに由来するようです。そこから、その掲示板のユーザーのことを"〜している人"という意味のerをつけて「メンヘラ」と呼ぶようになったとか。つまり精神疾患を持っている人を指す言葉だったのですが、徐々に使われる範囲も意味合いも変わっていき、今では若い世代を中心に、精神疾患よりももっと軽いイメージで使われていますね。

メンヘラはネット用語ですから、もちろん精神医学用語ではありません。一般的にメンヘラにみられるような症状がさらに重い場合をあえて精神医学的に分類すると、「パーソナリティー障害」などに当てはまると思います。ですので今回は、パーソナリティー障害の中でも、最も当てはまると思われる「境界性パーソナリティー障害(以下、BPD)」についてお伝えしたいと思います。もっとも、メンヘラは恋愛における俗語としての意味合いも強いので、そう呼ばれる方がすべてBPDに当てはまるわけではないのでご注意ください。

BPDは、次のような特徴があげられます。

・自分のアイデンティティーが確立されていない

・見捨てられ不安
自分というものがないので、常に誰かに依存していないと不安になる。

・思考の二極化
人や物事を「善か悪か」「白か黒か」の両極端でしか判断できない、ほどほどの状態がない。

・不安定な対人関係
相手を理想化したり徹底的にこきおろしたりと、「良い人か悪い人か」「敵か味方か」の両極端でしか相手のことを見られない。また、同じ相手であっても、甘えたり絶賛したりしていたかと思えば、些細なことで急に相手を攻撃、罵倒するなど、人への評価が常に両極端。さらに、相手を自分の思い通りにコントロールしようとするため、平気で嘘をつき、それをもっともらしく話して相手を信じ込ませようとする。

・感情が常に不安定
数十分〜数時間単位の短時間ですぐに喜怒哀楽の感情が変わる。

・慢性的な空虚感や自己否定感

・衝動コントロールが困難
自分の気分や感情をコントロールできずに、しばしば癇癪(かんしゃく)を起こす。常にイライラして怒っている。取っ組み合いの喧嘩や暴力を起こす。後述の自傷行為や自殺未遂、衝動行為に及ぶ。

・自傷行為や自殺未遂
リストカット、アームカット、根性焼きなど。

・衝動行為
過量服薬、アルコール・薬物乱用、浪費、ギャンブル、万引き、過食、危険運転、逸脱した性行動など。

精神科疾患は、脳内の神経伝達物質の乱れ、遺伝素因、環境要因などさまざまな要因が重なったことが発症に関連していると言われますが、まだその原因がはっきりわかっていないものがほとんどです。しかし中には、後天的要因が大きく発症に関係するものがあり、BPDもその中の一つです(ただし、後天的要因だけが原因ではありません。前述したようないろいろな要因が組み合わさって発症します)。

例えば、幼小児期に両親(特に母親)から十分な愛情を注がれなかったり、保護を受けられなかったりした場合や、虐待(特に性的虐待)、いじめ、暴力などの既往がある場合は、発症要因の一つになります。

●満たされない恋愛が引き金になることも
○今まで全く問題なかったのに……

10代後半〜20代前半くらいまでは、特に恋愛においては誰でも情動不安定になることは多いものです。メンヘラと思われるような行動をとる場合も多々あるかとは思いますが、それで大きなトラブルを引き起こしていなければ問題はありません。ただし、周りに迷惑がかかるようになるとちょっと問題です。

今まで全く問題なかったのに、付き合った男性によってメンヘラになってしまった場合は、よっぽど相手の男性がひどい付き合い方をしたのでしょう。例えば、浮気を繰り返す、自分の親友や近しい友達と浮気をしたり付き合ったりした、何股もかけられていた、ひどい振り方をされた……などなど。そうなると、男性不信や人間不信となって、対人関係が不安定となり、さらには感情も不安定となり、自己否定感が強まります。

そうすると「またこの人は自分の前からいなくなってしまうのではないか」「またひどいことをされるのではないか」などといった不安感や見捨てられ不安が高まり、相手に依存し、束縛して自分の思い通りにコントロールするようになります。

○付き合う男性へのアドバイス

一時的にメンヘラのような状態になっても、時間がたつにつれて、前述したような症状が治まってくればいいのですが、なかなか改善せず、次々と相手を変えるなどして、さらに状況や状態が悪化してしまう場合もあります。

相手と信頼関係を築き、信用や安心感を得られれば、メンヘラの方の心は安定します。男性は、このような女性と付き合うと大変なこともたくさんあると思いますが、途中で見捨てないこと。離れたりくっついたりと、相手を振り回してしまうのは良くありません。自分が好きになった相手、選んだ相手であり、"この人をなんとかしてあげたい、救いたい"と思うのであれば、何があっても最後まで本人の面倒を見る、くらいの覚悟でお付き合いをしてください。

ただし自分では手に負えない場合は、精神科へ相談するようにしましょう。精神科では、BPDそのものに効く薬はないため、気分安定薬を中心とした薬物療法と、各種精神療法を組み合わせて治療を行います。精神科を受診したからといってすぐに治るものではなく、服薬とカウンセリングを併用しながら環境調整も行っていき、ゆっくりと時間をかけて治療していく場合がほとんどであると思います。

※本稿は『あなたの周りの身近な狂気』(高木希奈著 / セブン&アイ出版)を参考にしています
※写真と本文は関係ありません

○取材協力: 高木希奈(タカギ・キナ)

精神保健指定医、日本精神神経学会認定専門医、日本精神神経学会認定指導医、日本医師会認定産業医。
長野県出身。聖マリアンナ医科大学卒業。現在は、精神科単科の病院で精神科救急を中心に急性期治療にあたっている。また、産業医として企業にも勤務経験あり。
著書に『間取りの恋愛心理学』(三五館)、『あなたの周りの身近な狂気』(セブン&アイ出版)、『精神科女医が本気で考えた 心と体を満足させるセックス』(徳間書店)、電子書籍『女医が教える飽きないエッチ』(App Store、Kindle)など。趣味は、海外旅行とスキューバダイビング。オフィシャルブログはこちら。
(須藤妙子)

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