大人の悪夢はストレスが原因? 『悪夢障害』とは

大人の「悪夢」いびき、居眠り、メタボ、PTSDなどストレスなどが引き金になることも

記事まとめ

  • 悪夢のせいで睡眠や日常生活に支障が出るといった場合、心身の不調や病気の可能性も
  • 悪夢と関連の深い精神疾患に「PTSD:心的外傷後ストレス障害」があげられる
  • ストレスからうつ病発症に至るプロセスでも、悪夢が出現する可能性が指摘されている

大人の悪夢はストレスが原因? 『悪夢障害』とは

大人の悪夢はストレスが原因? 『悪夢障害』とは

大人の悪夢はストレスが原因? 『悪夢障害』とは


執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ

あなたは悪夢に悩まされていませんか?

繰り返し見る悪夢によって睡眠が妨げられ、日常生活にまで支障を来す状態を

「悪夢障害」

と呼び、医学では睡眠障害の一つとされています。

一体どのような症状なのでしょうか。

夢見が悪い:悪夢とは?

嫌な夢や悪い夢を頻繁に見ることを「夢見が悪い」といいます。

精神科医の西多昌規医師によると、「悪いことをして発覚する」「不審者に追いかけられる」「不条理なことで上司にひどく怒られる」「高いところから突き落とされる」といった内容の夢が、精神科の外来を訪れる患者さんの夢には多いそうです。

ここから、「悪夢」とは不安や恐怖、嫌悪や怒りといったネガティブな感情や、生命を脅かされるような危険性を帯びたエピソードを伴う不快な夢…とでも定義できるでしょうか。

悪夢を見る頻度は子どものほうが多く、6〜10歳をピークに成長とともに夢見の頻度が減っていくという見解もあります。

ですから、大人になっても悪夢を持続的に見る、悪夢のせいで睡眠や日常生活に支障が出ている…といった状態であれば、心身の不調や病気といった可能性も考えられます。

悪夢障害の定義

精神疾患や睡眠障害に関する専門機関は、『DSM-5(最新版「精神疾患の診断・統計マニュアル」米国精神医学会)』や『ICSD-3(国際睡眠障害分類第3版)』などで、悪夢障害を次のように規定しています。

長くて極度に不快な夢を繰り返し見る:夢の内容はよく覚えていて、生存や安全、身体の健全性を脅かすものである不快な夢から起きたときは、速やかに覚醒し、時や場所、自分の身元など、現在の自分の状況を的確に把握している悪夢からの覚醒によって生じる夢体験、または睡眠障害によって、次のような、臨床的に著しい苦痛、あるいは、社会的・職業的、もしくは他の重要な領域における機能の障害が少なくとも一つは生じている

 ・気分障害(悪夢により不安や不快さが持続)
 ・寝ることへの抵抗(悪夢を見るのではという恐怖や不安)
 ・認知障害(記憶力や集中力などの低下)
 ・家族や介護者などへの負の影響
 ・行動の問題(ベッドを避けたり、暗所恐怖など)
 ・日中の眠気
 ・疲れやすい(易疲労性)
 ・職業や教育機能の低下
 ・対人的社会的機能の低下


先述の西多医師によると、悪夢障害の生涯有病率は67〜90%と高く、自殺未遂者の66%が中程度ないしは重度の悪夢を見ていたという報告もあるそうです。

そのことから、ストレスや精神疾患などが悪夢や悪夢障害と無縁ではないと結論づけています。

睡眠障害としての悪夢障害

睡眠障害として見ると、悪夢障害は「睡眠時随伴症群」のレム関連睡眠時随伴症群に属しています。

いわゆる眠りの浅い「レム睡眠時」とくに明け方に見るということ、中途覚醒が繰り返し起こり、再び寝つくのに時間がかかること(入眠困難)、さらには日中の生活に悪影響を与えて、昼間の眠気や認知力・行動力の低下を招くこと、などの特徴が挙げられます。

また、「睡眠時無呼吸症候群」の人も悪夢を見やすい傾向にあると指摘されています。

なかでも、酸素の通り道となる咽頭・喉頭部や気管などの気道が塞がれることで起こる「閉塞型睡眠時無呼吸症候群」に多いといわれています。

いびき・居眠り・メタボなどは、悪夢を引き起こすきっかけにもなり得るというわけです。

ストレスや精神疾患の影響

悪夢と関連の深い精神疾患は

PTSD:心的外傷後ストレス障害」

でしょう。

PTSDは強いショックやストレスが記憶に残ってトラウマとなり、その後も何度も思い出して恐怖を感じるなどする心的障害です。

症状の一つに悪夢障害の持続が挙げられています。

また、PTSDに限っては、レム睡眠だけではなく深いノンレム睡眠時にも悪夢を見るという報告もあるようです。

大人の場合は、不安障害やうつ病、パーソナリティ障害などと悪夢の関連についても取り沙汰されています。

たとえば、長時間の過重労働で睡眠時間が削られ、それでもなかなか寝つけず、夜中に何度も目が覚めてしまう。

さらには、「リストラされるのでは」「降格される」「ローンが払えない」など、現実生活で不安を抱えていると、職場結合性のうつ病に陥ることは容易に想像できると思います。

ストレスからうつ病発症に至るプロセスでも、悪夢が出現する可能性が指摘されています。

いわば、悪夢はうつ病の前兆といえるのかもしれません。


しかしながら、それでは悪夢はただただ悪いだけなのかというと、そうとも限りません。

悪夢という形でストレスが発散される…という見解も見られ、必要以上に気にしすぎるのも考え物という側面もあります。

あまりに悪夢に悩ませられているケースでは、睡眠外来などの受診をおすすめします。

【参考】西多昌規『悪夢障害』(幻冬舎新書 2015年)


<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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