「手の震え」が伝える病気の前兆

「手の震え」が伝える病気の前兆

「手の震え」が伝える病気の前兆


執筆:南部 洋子(看護師)
監修:岡本 良平(医師・東京医科歯科大学名誉教授)


「あれ?自分の意志と関係なく震えている!」

こういう経験をされたことはないでしょうか。

自分の意志とは関係ない動きを「不随意運動(ふずいいうんどう)」といいます。不随意運動のなかでは「瞬き」や「頭を振る」などもありますが、「手の震え」が一番多いものです。

そしてそれには、もしかしたら病気が隠れている可能性もあります。詳しく見ていきましょう。

手の震えはなぜ起こる?

手の震えは、医学的には「振戦(しんせん)」といいます。

筋肉が弛緩と収縮を繰り返して起こるのが震えです。加齢とともにその頻度は増します。

手の震えがひどい字を書いたり、コップで水を飲む、などという動作にも不自由が生じてきます。またこの震えは緊張したときや興奮したときにも起こります。

軽いものは誰にでも起こるものなので心配ないですが、病気が隠れている場合もあります。

本態性振戦(ほんたいせいしんせん)


手の震えで一番多くみられるものです。

原因となる病気が見つからない場合、遺伝的素因が関連している場合があります。脳にも異常は全くありません。

手を伸ばした時に手が細かく震える、首が細かく震える、声が震える、などの症状があります。家族にも同様の症状があるときは、思春期から青年期に出て、同一家族内に同じような手の震えをみることがあります。

震えが気になって、人前に出ることを躊躇するなどという場合は、受診して医師に相談してみましょう。

高齢者の手の震え

高齢者の場合は以下の病気の可能性があります。

パーキンソン病


パーキンソン病は、脳の黒質という部分である神経細胞の変性で起こる難病です。

初期の症状としては、手を止めていていると振戦があり、何かをしようと動かすと消えます。他には筋肉の硬直が起こります。

病気が進んでくると振戦以外に、顔の表情があまり変化せず、動きが乏しくなります。動作がゆっくりで、歩くときは、前かがみになっており、急に方向を変えるとか立ち止まるなどの行動が困難になってきます。パーキンソン病の診断は専門医の診察が必要です。

老人性振戦


老人性の振戦は、パーキンソン病のものとよく似ていますが、意識するとかえって震えが強くなります。パーキンソン病のその他の特徴がないため鑑別ができます。

寒さやストレス、緊張が原因で、一時的に起きることがあります。振戦は、頭、あご、腕、唇にでます。本態性振戦が高齢になってから発症したものでしょう。

薬剤性振戦


薬剤による振戦は、プリンペラン(吐き気止め)やドグマチール(抗潰瘍薬)などの薬を長期に服用していると現れることがあります。

中毒性振戦


中毒性振戦は、アルコール、タバコ、水銀、コカイン中毒などでみられることがあります。

動作や姿勢で起こる手の震え姿勢振戦


手を一定の場所で保つと手が震えてしまうものです。新聞を読むときなどに起こりますが、生理的なものや本態性の場合もありますが、甲状腺機能障害の場合でも起きます。

単純運動時振戦


コップを持って口に運ぶ時などに起きることがありますが、口に届くまで震えは一定で、口に届くと止まります。本態性振戦の場合が多いです。

不安障害による手の震えも書痙(しょけい)


書痙とは、字を書こうとすると痙攣や不随意運動などで字を書くことができなくなる病気です。人前で記名をする時に、緊張して書きづらいことは誰でもありますが、書痙ではそれが著しくでて、書くことの障害になります。

手の震えは「神経内科」へ

軽度の場合は治療は必要ないことが多いのですが、ひどくなって生活に支障がでるならば薬剤があります。疾患がある場合は、その疾患の治療をすることでなくなってくるでしょう。

震えが気になるならば、神経内科を受診しましょう。他の薬剤を服用しているならば、持参して医師に見せましょう。

振戦だけをみていると、いろいろな疾患の可能性があるのため、震えのタイプを診て診断していきます。鑑別診断のために、脳のCTやMRIを撮影する必要があります。場合によっては血液検査の必要があります。


いずれの場合も、専門の医師に直接診せて診断してもらうことが大切です。

少しでも気になる症状がある場合、速やかに神経内科を受診しましょう。


<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー

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