エレベーターで「階数ランプ」を見てしまうのには理由があった

エレベーターで「階数ランプ」を見てしまうのには理由があった

エレベーターで「階数ランプ」を見てしまうのには理由があった


執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ


あなたはエレベーターや満員電車など人ごみの中で、視線をどこに向けていますか?

エレベーターなら「階数表示ランプ」という答えが案外多いのではないでしょうか。

今、何時かを確認するために時計をしばしば見るのと同じように、今、どこにいるのかを確認するために「階数表示ランプ」を見るというのが自然の心理でしょう。

でも、他にも心理的理由があるかもしれません。

今回は一つずつ、その理由を紐解いていきましょう。

階数ランプを見る理由1:見当識

自分や自分が生活している状況を、客観的に正しくとらえる精神機能を「見当識(けんとうしき)」といいます。

現在の時間、今いる場所、自分自身の年齢や氏名、生年月日などが、見当識の身近な指標です。

近年、この見当識が障害されている状態に注目が集まっています。

精神疾患と認知症です。


どちらも、脳の機能が障害されていることに起因します。


ですから、見当識がしっかりしていることは、脳の機能が正常な健常者の基本のようなもので、通常、当たり前のように、また反射的に、私たちは見当識を確認しています。

時計を見て時間を確認したり、エレベーターで現在の階数を確認したりといったようにです。

ですから、エレベーターで階数ランプを見るのは、反射的な見当識の確認作業ということができるでしょう。

階数ランプを見る理由2:パーソナルスペース


通勤電車やエレベーターなどで、見知らぬ人が寄ってきたり、やたら近づいてくると不快に感じることはありませんか。

これは、パーソナルスペースといって、自分を中心とした円周状に広がる距離空間の影響によるものです。

相手と自分の距離が近ければ近いほど、赤の他人だと、自分の縄張りを犯されたように不快に感じてしまいます。

反対に、家族や恋人など親しい人が、パーソナルスペースに入ってきてくれないと、孤独感を強く感じることになります。

このようなパーソナルスペースの見解からすると、満員のエレベーター(あるいは通勤電車)など、赤の他人がパーソナルスペースに入ってこないことを確保できない空間では、不快感から目を逸らせるために、エレベーターだと表示階をじっと見つめていたり、満員電車だとつり革広告や液晶ディスプレイ(トレインチャンネル)を見つめていたりするでしょう。

エレベーターで階数ランプを見る2つ目の理由は、赤の他人とくっつきすぎていることが不快で、その状況から目を背けるために「階数ランプ」に意識を集中するというものです。

階数ランプを見る理由3:対人恐怖

大勢の人前で話をしたり歌ったり、初対面の人と会ったりすることに緊張や恐怖感を覚える人は少なくないでしょう。

多かれ少なかれ誰にもあるこの傾向は、精神医学的には「対人恐怖」の影響と考えられています。

対人恐怖の傾向が強い人には神経質だったり、恐怖心をもちやすい「怖がり」だったりする人も少なくありません。

ちょっとしたことが気にかかったり、人前に立つのが怖かったりしやすい傾向があります。

ところで、対人恐怖には、対人緊張、赤面恐怖、スピーチ恐怖、電話恐怖など、さまざまな症状があることが専門家から指摘されていますが、昨今、割と多いといわれているのが、「視線恐怖」です。

これには、「他人の視線が気になる」というタイプと、「自分の視線が相手に嫌な感じを与えるのが怖い」というタイプがあります。

どちらにしても、視線恐怖の傾向が強いと、とくに、満員電車やエレベーターなど、他人が大勢いるなかで、まなざしを人に向け、視線が合ってしまうことを何よりも恐れたり嫌がったりします。

そこで、視線が合わないところにまなざしを向けざるを得ず、結果として階数ランプに目が釘づけになるような事態となります。

エレベーターで階数ランプを見る3つ目の理由は、近くの人と視線を合わせたくないためです。

階数表示ランプがない?

最近、とくにオフィス仕様の大規模ビル用のエレベーターなどでは、すべての階での待ち時間が最短になるようファジィ制御を行い、結果として、階数表示をしていないエレベーターが増えているのだとか。

エレベーターを待っている人がイライラしないように、このシステムは構築されているそうですが、そうなると、以上に述べたような階数表示を見る心理的理由は、トレインチャンネルのような液晶ディスプレイで解消されるようにシフトしていくのでしょうか?

そのあたり、今後の動向が楽しみです。

<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長


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