障害? 個性?「自閉症スペクトラム」について

障害? 個性?「自閉症スペクトラム」について

障害? 個性?「自閉症スペクトラム」について


執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ


自閉症やそれと類似した症状は「自閉症スペクトラム」と呼ばれるようになってきました。

「対人関係が苦手」「こだわりが強い」という二つの行動特徴をもつ、特有の発達スタイルを遂げてきた、周囲が気になる人たちを指します。

大人も含めて日本国内では人口の約10%の該当者がいると推定されています。

自閉症や自閉症スペクトラムへの理解が期待されています。

今回は自閉症や自閉症スペクトラムについて、詳しく解説していきます。

自閉症とは?

1943年にアメリカの精神科医カナーが初めて自閉症を発表しました。

「ことばの発達の遅れ」「コミュニケーションが困難」「特定のものなどへの強いこだわり:常同行動」の3つの典型的な行動特徴をもった、発達障害の子どもを指していました。

全体の8割に知的障害がみられ、男の子に多く、3歳ころまでには障害が目立っていました。

2000年ころまで、有病率は0.1%ほど、知的障害を持たない高機能自閉症も含めると、有病率は1%前後とされていました。

自閉症から自閉症スペクトラムへ

後年、自閉症にもさまざまなタイプがあることがわかってきます。

たとえば、知的障害は重いケースから通常範囲まで多様でした。

また、知的障害を持たないばかりか、コトバの遅れもない「アスペルガー症候群」、計算などで独特の能力を発揮する「サヴァン症候群」などがよく知られています。

支援に関しても、重症で手厚い支援を必要とする場合から日常生活にほとんど支障をきたさないケースまであります。

そこで、2013年に改定されたDSM-5(精神疾患の分類と診断の手引き:アメリカ精神医学会発行、最新版)では、このような程度も質もさまざまなタイプを「スペクトラム:連続体あるいは集合体」と統合して、「自閉症スペクトラム障害:ASD」と命名しました。

さらに最近では、医療や福祉などの支援対象となる「自閉症スペクトラム障害」と、障害とまで言えないけれど、同じような行動特徴をもつ「自閉スペクトラム」とに分けられることもあります。

これらの統合的な概念が「自閉症スペクトラム:AS」です。

自閉症スペクトラムの特徴

自閉症スペクトラムでは、「対人関係が苦手」なことと「こだわりの強さ」が症状の2大特徴といわれます。

対人関係については、幼少期は反応が鈍かったり、発語の異常があったり、他の子とかかわり方の様子が異なったりといったかたちで現れます。

思春期以降になると、つきあっていると不自然さを感じさせたり、場合によっては対人トラブルに発展することもあります。

本人は筋の通った言動をしていても、周囲にはそれが不自然に見えたり、「空気が読めない」と感じたりすることもよくあります。

一方、「こだわりの強さ」については、幼少期は、同じ遊びをくり返したり(常同行動)、好みが変わっていたり、手順を変えられなかったりします。

長じて思春期以降になると、全体よりも部分が気になったり、好き嫌いが極端に分かれたり、注意や興味が向きにくい領域には触れなかったりして、「わざと避けている」などと誤解されることもあります。

その他にも、特定の臭いや音などを好んだり、感じ方が極端だったりする、視覚や聴覚など感覚機能の特殊性や、過去を覚えるのは得意だけれど未来を想像するのは苦手といった特徴なども、自閉症スペクトラムの傾向的特徴として指摘されているところです。

発達障害の3つの特徴を理解する

自閉症スペクトラム障害は「発達障害」のひとつです。

子どもが発達していく過程でみられる、生まれつきの脳機能障害による行動や認知の障害の総称が「発達障害」で、現在、子どももさながら、大人になっても発達障害によるハンディキャップを抱えている人たちにも関心が集まっています。

そんな発達障害には共通する次の3つの特徴が指摘されています。


1. 脳(中枢神経系)の機能障害がある


2. 原因はさまざまながら、乳幼児期に行動特性(症状)が現れる


3. 行動特性(症状)は、本人の発達や周囲からの働きかけによって変化する

1については脳科学や画像診断技術の向上によって、いろいろなことが解明されてきているものの、まだ、未知の部分も多く残しています。

いずれにしても、現段階では脳の機能障害を完治することはできません。

だからこそ、2と3の特徴によって、早い段階で見つけ出し(早期発見)、支援や訓練(これを療育:治療教育と呼びます)を積み重ねることで、自立的で個性的な人生を送ることも十分に可能だとされています。

自閉症スペクトラム:障害か個性か?

生活や活動に重篤な支障をきたしている場合は、これを障害として、診断や支援の対象にしています。

しかし、程度が軽くて日常生活に支障がないような場合や、本人の自閉症スペクトラム的な特徴が、たとえば創造的な仕事につながっているような場合なら、むしろ、それは個性とみられます。

スペクトラム(=集合体・連続体)とは、そのように多様な理解と多様なかかわりを、本人にも周囲にも期待しているように思われます。

【参考】
・本田秀夫監修『自閉症スペクトラムがよくわかる本』講談社、2015
・榊原洋一『よくわかる発達障害の子どもたち』ナツメ社、2015
・中山和彦、小野和哉『よくわかる大人の発達障害』ナツメ社、2015


<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長


<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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