妊娠中だけ注意したい? 原虫の一種「トキソプラズマ」とは

妊娠中だけ注意したい? 原虫の一種「トキソプラズマ」とは

妊娠中だけ注意したい? 原虫の一種「トキソプラズマ」とは


執筆:座波 朝香(助産師・保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ


「○○に注意」「○○してはいけない」・・・などと、妊娠中は何かと注意事項が多いものです。

そのひとつに

「トキソプラズマへの感染」

があります。

トキソプラズマとは一体どういうものなのか、また感染するとどうなるのか。

今回はトキソプラズマが引き起こす症状と、注意点についてご説明いたします。

「トキソプラズマ」とは?

「トキソプラズマ」は原虫の一種です。

「虫」という字がありますが、トキソプラズマはとても小さい微生物で肉眼では見えません。

あらゆる哺乳類や鳥類に感染し、それらのフンや土の中など、どこにでも存在しうるものです。

また、マラリア原虫のように、特別な地域(熱帯や亜熱帯)に限らず、どんな地域にもいるといわれています。

トキソプラズマに汚染された食肉や、家畜・猫のフンなどを介して、口や目から入ることで感染します。

トキソプラズマによって引き起こされる感染症を「トキソプラズマ症」といいます。

妊婦さんだけが感染するの?

どこにでもいる原虫ですが、「初めて聞いた」という方も多いのではないでしょうか。

それもそのはず、健康な人にはあまり害をおよぼすことがなく、着目される機会が少ないのです。

さて、前述のとおり、どんな哺乳動物にでも感染しますから、誰でも感染する可能性はありますが、通常は免疫が働き感染に気づかないこともあります。

また、特別な症状もなく、風邪のようなものだといわれています。

妊娠中に感染したとしても、妊婦さん自身への影響はこの程度です。

なおかつ、トキソプラズマに一度感染すると、後は免疫を獲得するので、普通は二度も三度も感染することはありません。

感染が問題になるケースとは?

一般的にはあまり問題にならないトキソプラズマ症ですが、免疫がかなり弱い状態の人や妊婦さんは、注意を払う必要があります。

免疫がかなり弱い状態とは、たとえば、HIVの人(免疫不全)や臓器移植などで免疫抑制剤の治療をしている人などです。

このような人にとっては、脳炎や肺炎、視力への障害など重篤な症状を引き起こすので、大変怖い感染症です。

さらに、一般的に身近な問題となりうるのは「先天性トキソプラズマ症」です。

先天性とは、生まれたときにすでにトキソプラズマに感染している、つまり、お腹の中で感染してしまっているのです。

次項では、この「先天性トキソプラズマ症」についてもう少し詳しく説明していきましょう。

先天性トキソプラズマ症の赤ちゃんとは?

妊婦さんがトキソプラズマに初めて感染し、胎盤を通じてお腹の赤ちゃんにも感染(母子感染)した場合、先天性トキソプラズマ症になる可能性があります。

症状としては、残念ですが流産や死産という経過をたどることもありますし、脳や目に障害が生じることもあります。

一方で、症状が現れないケース(不顕性)、思春期頃までの間に遅れて発症するケース(遅発性)も見られます。

また、仮に妊婦さん自身がトキソプラズマ症でも、必ず母子感染するわけではありませんし、赤ちゃんが先天性トキソプラズマ症だとしても、症状や程度はさまざまです。

現在は、妊娠中にトキソプラズマへの感染を検査し、母子感染のリスクまで調べる検査方法の確立が待たれているところです。

日ごろの注意で予防できないの?

妊娠する可能性のある人や妊娠中は、次のようなことに注意をすると、トキソプラズマ感染を防ぐことができます。

非加熱食肉を控える (牛刺、馬刺、生ハム、サラミやジャーキーなどの乾燥食肉も含む)肉は中心部まで火を通す(中心部が67度になるまでの加熱が有効)まな板や包丁などの調理器具を清潔に保つ(肉用とその他の食材で使い分ける、食材ごとにこまめに洗うなど)生野菜や果物は、食べる前にしっかり洗う庭いじりや砂場遊びなど、土や砂を触るときはゴム手袋をして、終わったらきちんと手洗いやうがいをする猫のトイレは毎日こまめに掃除をする(なるべく妊婦さん以外が行う)


このように、知っていれば日常で気を付けられることがたくさんありますので、実践していきましょう。

トキソプラズマは、インフルエンザのように空気中に飛んで感染が拡大することはありません。

過剰に恐れないで、目や口からトキソプラズマが直接入らないように注意しましょう。


<執筆者プロフィール>
座波 朝香(ざは・あさか)
助産師・保健師・看護師。大手病院産婦人科勤務を経て、株式会社とらうべ社員。育児相談や妊婦・産婦指導に精通

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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