女性の浮気が「本気」になる理由

女性の浮気が「本気」になる理由

女性の浮気が「本気」になる理由

ゴールデンタイムを過ぎたあたりの、深夜に差し掛かった時間帯。

その頃に放送される「不倫ドラマ」は、家族で見るのは非常に気まずいが、一人暮らしだとヌルヌルと見続けてしまう不思議な中毒性がある。

『金曜日の妻たちへ』(TBS系)、『不機嫌な果実』(テレビ朝日系)、『あなたのことはそれほど』(TBS系)など、いつの時代も「不倫ドラマ」は話題になりやすい。

実際に不倫願望がある・ないに関わらず、「見てはいけないものを見たい」という人間の奥底にある欲求をくすぐるのかもしれない。

マイナビウーマン読者世代の間で、特に人気だった不倫ドラマといえば『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』ではないだろうか。

まだ新婚だった上戸彩が“不倫する人妻役”として主演を務めたことで話題になり、不倫相手役の斎藤工もこのドラマをきっかけにブレイクした。

本作は、平凡な主婦が不倫をし、本気になるまでの心情の移り変わりを生々しく描いている。女性視聴者が「私もいつかこんなふうになる日がくるんじゃないか」と思わざるをえないほどに。

今回はこのドラマを通して見えた「女性の浮気心理」を考察する。

■結婚5年目。平凡な日常に見え隠れする微かな嫌悪

主人公の笹本紗和(上戸彩)は結婚5年目の平凡な専業主婦。夫の俊介(鈴木浩介)とはセックスレスだが、手を繋いで寝るくらいには仲が良い。

これだけ聞くと何の不満もなく平穏に暮らしているように思えるが、日常の中にいくつかの嫌悪が見え隠れする。

たとえば、夫・俊介は紗和のことを「ママ」と呼ぶ。子どもがいない紗和を喜ばせるためらしいが、その呼び方が逆に紗和を傷つけていることに全く気づいていない。

また、2人の家には俊介の母・慶子(高畑淳子)が度々訪れるのだが、ある日俊介が「今日(母親が)来るから、悪いけど食事作ってやってくれる? 大したものじゃなくていいよ。肉じゃがと干物と味噌汁でいいから」と紗和に頼むシーンがある。

肉じゃがと干物と味噌汁を、本当に心の底から“大して手間のかからない料理”だと思っているのだろうか。もしそうなら、いっぺん自力で全メニューを作ってみた方がいい。おそらく俊介ほど普段料理をしない人なら短く見積もっても2〜3時間はかかるだろう。

そして義母の慶子も不本意に紗和を傷つける。子どものいない紗和に対して「あなた、色気がなさすぎるのよ。男はいくつになっても女の色気を求めているの。パワーを引き出さなきゃ」と、子作りへの圧力をかける。

おそらく俊介も慶子も悪気はない。紗和はというと、全ての発言を笑いながら受け流すだけ。それが“平凡な日常”を維持するための最適解だと思っているからだろう。

しかし、ある日近所の家が火事になった事件を耳にすると、「火事になったのが自分の家だったとしても、そんなに悲しくなかったかもしれません。泣くほど失いたくない大事なものは何もないような気がしたのです」とモノローグで語る。紗和の本心を描いたシーンだ。

そんな中、近所に引っ越してきたばかりのセレブ妻・利佳子(吉瀬美智子)が、“昼顔”というハンドルネームで出会い系サイトに登録し、不倫を繰り返していることを知る。

利佳子は「本当の恋愛なんて結婚してからじゃないとできないわ。温かい家庭を作るために恋が必要なんじゃない」と、不倫を一種の遊びとして割り切っているような発言をするが、実は年収や肩書きしか取り柄がない横暴な夫に嫌気がさしている背景もある。

紗和は利佳子と知り合ったことをきっかけに、高校の生物教師・北野裕一郎(斎藤工)と出会い恋に落ちる。

この2人の不倫妻に共通するのは「結婚生活に不満があり、逃げ場を探していた」という点だろう。

■男性と女性の“浮気観”の違い

当初の紗和は「不倫なんて罰当たり」「家族を裏切り、周囲を傷つけ、友だちも失い、自らも苦しみの淵に落とす罪」と、不倫に対して嫌悪感を抱いていた。

しかし、北野と出会ってから次第にその感情は変化していく。昆虫採集が趣味だという北野と一緒に森へ行き、自分の知らなかった生物学の話を聞くたびに胸がときめく。ささいなメールひとつにも一喜一憂し、まるで学生時代のようなピュアな恋心が見て取れる。

一方の利佳子は、女性誌の編集長である夫が仕事を依頼している画家・加藤修(北村一輝)と不倫関係になる。今まで不倫を遊びだと割り切っていた利佳子だが、初めて自分が内面に抱える悲しみに気づいてくれた加藤に、本気の恋をする。

それほど彼女たちは、自分の傷ついた心を癒やしてくれる場所、悲しみを受け止めてくれる人を求めていたのだろう。最後は2人とも、夫を捨てて不倫相手と生きる道を選ぶ。

実は紗和の夫・俊介も、職場の女性部下に積極的なアプローチを受けていた。悪くないと思って鼻の下を伸ばしながら対応していたが、「好きではない」と告げる。紗和が不倫していた事実を知って本気の涙を流すほど、紗和のことを愛していたからだ。

これが典型的な男性と女性の浮気観の違いだと私は考える。昔から「男は別名保存、女は上書き保存」と言われているが、それと同じで、男性は浮気相手と本命を別名フォルダで割り切れる。

しかし女性は、そもそもの浮気の原因が“本命への不満”であることが多く、その結果「浮気が本気」として上書きされてしまうのではないだろうか。

■“昼顔妻”なんて存在しない

利佳子の夫が編集長を務める女性誌では「昼顔妻特集」を組んでいた。

ここでいう“昼顔妻”とは、夫が働きに出ている昼間のうちに、毎日のように男性を取っ替え引っ替えして不倫する妻のこと。まさに以前の利佳子のように「不倫は遊び」と器用に割り切る既婚女性を指している。

しかし、ドラマの終盤で、利佳子は紗和に“昼顔妻”についてこう語る。

「女は好きになった人を特別だって思いたがるけど、特別な男なんていない。女には遊びの恋ができないのと同じよ」

「深い関係になって『あぁ、この人好きかも』って思った時には本気になってる。しょせん、昼顔妻なんてどこにもいないのよ」

“昼顔妻”だった過去の自分を否定する利佳子。それほどまでに、本気の恋に落ちてしまったということだろう。

人妻2人の結末は、自分の目で確かめてほしい。続編となる映画『昼顔』では、想像を絶するラストも用意されている。

ここまで女性の浮気心理を分析したが、そもそも不倫は法的にも倫理的にも許されるものではない。誰かを傷つけ、苦しめていることに変わりはない。

だからこそ、そうならないために今大事にするべきものは何か。相手と話し合うべきことは何か。

ただハラハラドキドキするだけでなく、今のパートナーとの関係性を見直すきっかけにもなる。それが「不倫ドラマ」の醍醐味でもあると、私は思う。

(文:高橋千里、イラスト:タテノカズヒロ)

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