お酒好きOLが考える「本当にいい居酒屋の条件」

お酒好きOLが考える「本当にいい居酒屋の条件」

お酒好きOLが考える「本当にいい居酒屋の条件」

いい居酒屋の定義ってなんだろう。

地元の人に愛されていて、いつも常連客でお店のなかがいっぱいとか。食べログのページを見ると、口コミも多くて評価も3.5点以上だとか。世界各国から取り寄せた、見たこともないようなめずらしいお酒が所狭しと並んでいるとか。

私の場合は、たいてい「ポテトサラダのおいしいお店」という価値観に行きついている。ポテトサラダがおいしいお店は絶対にいいお店なのだ。断言してもいい。

■あの有名ミュージシャンも歌った「ポテトサラダへの愛」

最近復活し、ライブのチケットがまったく取れなかったナンバーガールの向井秀徳は、のちほど結成することとなったZAZEN BOYSというバンドを通じて、「ボールにいっぱいのポテトサラダが食いてえ」と歌っている。ちなみに、タイトルはどストレートに『ポテトサラダ』だ。わかりやすくて、大変よろしい。まだ聴いたことのない人は、ぜひ聴いてみてほしい。

この歌詞は曲のサビ部分にあたるのだが、一曲をまるまる聴いてみると、この曲が居酒屋での出来事または願望を歌っているのだということがわかる。

向井秀徳ですら、ボールいっぱいに食べたいポテトサラダ。おなかを満たすこともできるし、どんなお酒のつまみにもぴったりで、嫌いな人がほとんどいないポテトサラダ。そりゃあ、ポテトサラダがおいしいお店はいい居酒屋だろう。そうに決まっている。言い切ってしまってもいいんじゃないだろうか。

■「いい居酒屋」の条件とは

ほかにも、私の好きな居酒屋にはたいてい同じような条件が揃っている。おじいちゃんとおばあちゃんが経営しているとか、赤星の瓶ビールがあるとか、お洒落に気を使っておらず、店内にはよくわからない置物や何年前の夏からあるのかわからないうちわが雑多に転がっているとか。

床とテーブルが油でツルツルしている中華料理屋は必ずおいしいし、こだわりのあるレモンサワーを出している串カツ屋さんもまちがいがない。看板が小さくてちょっと入りづらいお店もだいたいは正解を引くことができる。それほど宣伝をしなくても客の足が途絶えることがないということなので、当然と言えば当然なのだけれど。

店員さんが、微妙にそっけなかったりすると個人的にはたまらない。このお店を出るまでに笑顔が見たくなり、執拗に話しかけてしまう。接客されるのであれば、愛想よくしてもらうほうがいいに決まっているのだが、店員さんがそっけないのに繁盛しているお店では、必ずいいつまみをつつきながらうまい酒を飲むことができる。

今、私が挙げた条件は、お店に行く前にネットで調べれば、ある程度把握することができる。しかし、ポテトサラダはどうだろう。注文し、実際に口にしてみない限り、自分の好みに合うかどうかわからない一面がある。箸でポテトサラダの山を削り取り、口に運ぶ。緊張の一瞬を体験しながら、じゃがいもの香り、ほくほくの触感、ぴりっと効いた胡椒を堪能する。初めて行く居酒屋での、楽しみにしているワンシーンでもある。

どんなお店にもポテトサラダは必ずといっていいほどメニューに並んでいるけれど、看板メニューになることは、まずない。ポテトサラダは、明らかに主人公になれる器の大きさではないのだと思う。ゲームのなかのキャラクターで言えば、ちょっと重要なヒントを与えてくれる「村人D」といったところだろう。

その日食べたメニューを思い返しても、うっすらとしか記憶に残らない。粒の大きい焼き鳥や味のしみたもつ煮を写真に収めることがあっても、見た目に変わり映えのない食べものにカメラを向ける人はそう多くないのかもしれない。それが、ポテトサラダだ。今一度、思い出してみてほしい。自分のなかのポテトサラダの立ち位置を。

■ポテトサラダへのこだわりが、お店のこだわり

しかし、ポテトサラダは可能性の秘められたつまみともいえる。じゃがいもと混ぜるだけで「ポテトサラダ」と名をつけることができるからこそ、どこまでもこだわることができ、伸びしろがあるのだ。

おでんの出汁と混ぜてもいい。上にポテトチップスを乗せてもうまい。シンプルに分厚いベーコンと大粒のブラックペッパーが入っていればガッツポーズを作ってしまう。長いもや大和芋を混ぜると少々弾力が出て、食べごたえが増すので最高だ。ほくほくのジャガイモを作るためには、ただ茹でるだけでは駄目だし、少し塊が残っている程度に潰してあるもののほうが私好みだったりする。「串カツ田中」の手作りのポテトサラダも最高だ。いつも必ず頼んでしまう。

主役じゃないかもしれないし、いつでも食べられるものなのかもしれない。しかし、どこにでもあるメニューだからこそ、細かい部分までそのお店のこだわりや思考を反映させることができる。

ポテトサラダにまでおいしさを追求しているお店は、おいしいお店に決まっている。お酒だって、ほかのメニューだって。細かい部分にまで気を使えるお店は、絶対にいい店なのだ。少なくとも、私の好きなお店のひとつになることは、まちがいないように思う。

だから、私はいつも初めてのお店に行くと、ポテトサラダを頼む。単純に好きなのも理由のひとつとしてあるけれど。私も、ボールにいっぱいのポテトサラダを食べながら、赤星の瓶ビールをぐいっと飲み干したい。

(文:あたそ、イラスト:谷口菜津子)

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