「赤文字系ファッション」の今昔

「赤文字系ファッション」の今昔

「赤文字系ファッション」の今昔

「赤文字系」。知らない方にとっては意味を想像するのも難しい単語なのですが、これはファッションジャンルのひとつです。

主に20代の女性から支持されていて、昔からある女性ファッション誌が語源。

なんとなく知っている方もいるかもしれませんが、2000年代前半と今を比べると流行にも変化がある模様です。

赤文字系ファッションの特徴とその変遷をまとめてみました。

■赤文字系ファッションとは

◇赤文字系の意味と定義

大ざっぱな説明をすると、20代の女子学生や働く女性が好む「コンサバ」ファッションの総称です。コンサバ系の服がよく取り上げられる女性ファッション誌が提案しているファッション、といっていいでしょう。

よくいわれる赤文字系ファッションのイメージは「愛され系」。そのほかに「モテ系(男ウケがいい)」「お嬢様風」「きれいめ」といった表現をされることがあります。

コンサバ系ファッションが「赤文字系」と総称されるようになった由来は、女性ファッション誌にあります。20代のおしゃれに敏感な女性をターゲットにし、コンサバファッションやメイクを特集した雑誌のタイトル部分がいずれも赤色だったのです。そのうちに「タイトルが赤い女性ファッション誌の読者が着る系統を「赤文字系」と呼ぶようになりました。

赤文字系ファッションは「他者視点」といわれることがあります。他人から見てどういう印象を受けるか、ということを考えてコーディネートされたファッションという意味です。

決してモテ系、男ウケがいい格好を「つねに狙って」着ているわけではないのですが、他人から見たときに好感を持ってもらえるファッション、自分に似合うファッションをいつも意識しているといえるでしょう。

◇青文字系との違い

大ざっぱな説明ですが、個性的で非日常的、男ウケより同性ウケがいい、モード系といった、赤文字系とは対極にあるファッションの総称が「青文字系」です。こういったファッションは原宿に多いため、「原宿系」と呼ぶこともあります。

赤文字系には明確にお手本となる女性ファッション誌がありましたが、青文字系にはそういったものがありません。個性的なファッションをすべて含むという意味では、ガーリー系・ロリータ系・モード系・古着系・ギャル系…とさまざまなジャンルがここに含まれます。

赤文字系と違い、青文字系は「自分視点」といわれます。他人にどう見られようと、似合っていないと言われようと、「自分が着たい服を着る」というスタイルです。

いわゆる「オフィスファッション」ではないので、厳しい社則のある会社やお堅い接客業などには向いていないスタイルかもしれません。

◇赤文字系コーデの特徴

流行最盛期である2007年ころの赤文字系コーデの特徴は、なんといっても「愛され系」「モテ系」でした。女性らしく、男性ウケのいいコンサバファッションが基本です。

また、「雑誌が流行を作る」のも特徴のひとつ。赤文字系雑誌で扱われる服やカバン、ブランドは「女子大生(またはOL)の大本命」といった紹介をされ、「みんな持ってる」「マストバイ」と扱われたブランドのアイテムは品切れ続出だったのです。

現在の赤文字系でもコンサバ系が基本ではあるのですが、以前のように雑誌主導というより、さまざまなファッションジャンルを取り入れて自分なりのファッションをする女性が増えているようです。

パステルカラーやスモーキーカラーなどの優しい色づかい、女性らしいロマンティックなデザイン、モノクロやベージュが多いといった特徴は継続しています。

◇代表赤文字系ブランド

☆MISCH MASCH(ミッシュマッシュ)

ピンクやオフホワイト、ペールカラーの優しい色合いが多く、花柄やファー使いなどフェミニンなアイテムがたくさん。

コンセプトは「美人度120%! 恋するON/OFF服」とのことで、大人かわいいエレガンスカジュアルを追求したブランドです。

☆MERCURYDUO(マーキュリーデュオ)

ミッシュマッシュより大人っぽく、コンサバ系の中ではやや個性的なブランドです。

女性をエレガントに見せるデザインで、コンセプトは「ニューアーバンフェミニン」。

フェミニンでありながら「都会的」にこだわる、働く女性のオフィススタイルにぴったりなブランドです。

☆SNIDEL(スナイデル)

赤文字系ブランドの中ではほどよくカジュアルなブランド。

コンセプトが「ストリート×フォーマル」なので、ストリートカジュアルや流行を取り入れている分「青文字系」との融合も感じさせる、上品カジュアルの代表ブランドです。

◇赤文字系メイクの特徴

最盛期である約10年前の赤文字系メイクといえば、ばっちりアイメイクに意志の強そうな「ヘの字眉」。健康的な肌色に髪は茶髪の巻き髪命でした。人気モデルさんたちはこぞって巻き髪だったのです。

近年の赤文字系は、たとえば赤リップが流行ったら取り入れる、トレンドの太眉にするなど臨機応変のよう。

基本的に色白メイクでふんわりしたナチュラルな眉、アイラインやマスカラはブラウンで優しく……といったやりすぎないメイクが主流です。

しっかりした巻き髪というよりゆるふわなヘアスタイルが人気で、黒髪の人も増えてきました。

◇代表赤文字系雑誌

赤文字系ファッションはまさに雑誌から生まれたファッション。代表的なものは以下になります。

☆『CanCam(キャンキャン)』

新社会人から若いOLに絶大な人気を誇った流行期の代表格。

人気モデルを多数輩出したが、2010年以降は部数が伸び悩んでいる模様。

小学館が発行しています。

☆『JJ(ジェイジェイ)』

赤文字系雑誌の中では一番歴史が古く、1975年創刊。JJとはJosei-Jishinの頭文字からで、最初は『女性自身』の別冊でした。

上品なお嬢様系を得意とし、光文社から発行されています。

☆『Ray(レイ)』

赤文字系雑誌の中ではカジュアルでトレンドを取り入れた雰囲気で、リアルタイムな情報発信が得意な雑誌。

主婦の友社が発行しています。

☆『ViVi(ヴィヴィ)』

日本だけではなく台湾や中国などアジア圏で広く発売され、ハーフのモデルが多いことで有名な赤文字系雑誌。

ギャル系のファッションも多いのが特徴です。講談社が発行。

☆『PINKY(ピンキー)』

集英社が発行していましたが、現在は廃刊。前述4誌と違って2004〜2009年と寿命は短かったが、流行当時は赤文字系雑誌に数えられていました。

『ViVi』同様にギャル色の強いファッション誌。人気モデルの鈴木えみがアイコンでした。

◇赤文字系ファッション代表モデル

☆蛯原友里

赤文字系代表モデルとして有名な「エビちゃん」こと蛯原友里は、山田優・押切もえとともに『CanCam』の人気専属モデルでした。

「エビ売れ」なんて言葉を生み出すほど、当時エビちゃんが身につけたアイテムは売れに売れました。赤文字系ファッション全盛期の超売れっ子モデルです。

雑誌専属モデルは卒業していますが、今も個人事務所で活躍されています。

☆藤井夏恋

姉の藤井荻花とともに「藤井姉妹」の愛称で呼ばれる『JJ』専属モデル。

E-girlsのメンバーで、美人赤文字系モデルとして有名です。

姉の荻花は2017年に芸能界を引退しています。ちなみに兄はジャニーズWESTの藤井流星。

☆トリンドル玲奈

テレビ番組や女優としても活躍されているモデルさんなので、ご存知の方も多いのでは。

若い女性の間でたいへんな人気を博し、2019年の3月号まで『ViVi』の専属モデル。

現在は『ViVi』と同じ講談社から発行されている『with(ウィズ)』の専属モデルをされています。

■系統別。赤文字系のブランド&コーデ

コンサバを中心に、今ではギャル系・お嬢さま系・フェミニン系など展開されています。カジュアルからラグジュアリーな雰囲気まで、大まかな系統を図にしてみました。

◇【赤文字系系統図解】ブランド一覧

◇【赤文字系1】モテ系(フェミニン系)

☆特徴

最近では男性目線だけでなく、女性も含んだ周囲からの高感度に意識が高いことが特徴です。

かつてはハッキリした色を好むお嬢様系もここにあたりましたが、今ではふんわりパステルカラーが主に好まれます。

☆代表ブランド

前述したMISCH MASCH 、MERCURYDUのほか、コスメ含めて若い女性に絶大な人気のJILL STUART(ジル・スチュアート)など、コンサバの中でもかわいらしい系統のブランドが多いでしょう。

『CanCam』の代表格ブランドであるINGINI(イング)も有名です。

☆代表雑誌

代表雑誌でいえば『CanCam』、『Ray』などが得意とするスタイルです。

少し大人の年齢層では、テーマが「コンサバより若くて華やか、ギャルより可愛くてリッチ」の『美人百花』があります。

◇【赤文字系2】キレイめカジュアル

☆特徴

オフィスでもプライベートでも通用する大人っぽさ、上品さが特徴です。

モテ系よりシンプルな装飾であることが多いでしょう。パンツスタイルも得意です。

かつてのコンサバ一本といったスタイルより、カジュアルな小物を合わせるスタイルが旬。

菅野美穂や綾瀬はるかなどがお手本です。

☆代表ブランド

MERCURYDUO、NATURAL BEAUTY BASIC(ナチュラルビューティーベーシック)など、品がありつつも女性らしいブランド。

オフィスでも着られる上品なデザインですが、靴や小物ひとつでアフターにも対応できるのがキレイめの強みです。

☆代表雑誌

代表雑誌でいえば『JJ』が得意とするスタイルです。

働く女性に人気のスタイルで、ほかにも『with』や『MORE』が当てはまるでしょう。

◇【赤文字系3】ガーリー

☆特徴

以前の赤文字系にはあまり見られなかった系統ですが、最近ではフェミニン(女性らしい)ではなくガーリー(少女らしい)も取り入れられています。

モテ系が他者からの視線を気にするのに対し、似ているようですが「自分がかわいいと思うセレクトをする」のが特徴です。

その点では青文字系の考え方と融合しています。

☆代表ブランド

MISCH MASCHやJILL STUARTはもちろん、SNIDELといったやや個性的なブランドで自分らしさを表現します。

☆代表雑誌

「自分プロデュース」というテーマで個性的なかわいさを推している『Ray』、かわいい要素が強い『SWEET』など。

ャル系要素も強い『ViVi』にも多いスタイルです。

◇【赤文字系4】大人ギャル

☆特徴

かつて流行した「ガングロギャル」や「コギャル」といった自分の個性を貫くギャル系より、女性らしさや上品さも意識した大人っぽいギャル系。

ギャルらしいセクシーな感じやほどよい露出も取り入れます。

☆代表ブランド

ギャル系も得意な『ViVi』の専属モデルである松本恵奈がプロデュースしていたEMODA(エモダ)や、大人っぽいアイテムもたくさんあるCECIL McBEE(セシルマクビー)などがあります。

☆代表雑誌

ギャル系要素も強い『ViVi』に多いスタイルです。

また、大人っぽいギャルを目指す女性向けの『S cawaii(エスカワイイ)』などが代表です。

◇【赤文字系5】ナチュラル(大人シンプル)

☆特徴

赤文字系全盛期のメイクはギャルほどではないもののかなりしっかりしたメイクで、髪もカラーをして巻き髪が定番。このため、大人シンプルなスタイルは、以前なら青文字系に含まれるジャンルでした。

しかし、最近の太眉・ナチュラルメイクの流行も相まって、いわゆる「モテ」スタイルにナチュラルやシンプルファッションも食い込んでいます。

☆代表ブランド

シンプルな中にも女性らしいディテールを忘れないデザインのanatelier(アナトリエ)や、シンプルながらナチュラルになりすぎないロペピクニックROPE’ PICNIC(ロペピクニック)などです。

綿麻素材で体型を拾わない本当のナチュラル志向よりは、やや女性らしいデザインを取り入れるのが赤文字系ナチュラルでしょう。

☆代表雑誌

赤文字系雑誌でいえば王道の『JJ』、シンプルかわいいをテーマにしている『MORE』が近いのですが、よりシンプルやナチュラルが好きな女性は『リンネル』や『ナチュリラ』を参考にするようです。

◇【赤文字系6】お姉さん系

☆特徴

元祖赤文字系の鉄板スタイルがこちらです。ギャル系にも「お姉系」というカテゴリがあり、大人ギャルとの差がわかりづらいかもしれません。

赤文字系でいうお姉さん系は、きれいめで女性らしさを忘れないながら、職場でのウケもいい王道のコンサバスタイル。

モテ系やガーリー系より甘さは控えめで、「かわいい」より「きれい」な雰囲気を重視します。

☆代表ブランド

アウターにトレンチコートを合わせるなど、王道のコンサバスタイルを貫くApuweiser-riche(アプワイザーリッシェ)や、フェミニンでもかわいくなりすぎない大人っぽいef-de(エフデ)などが代表です。

☆代表雑誌

ほかの赤文字系雑誌より甘さ控えめの『JJ』や、「ちょっとクールな働くお姉さん」を提唱している『CLASSY』などが参考になります。

■赤文字系ファッションは様変わり? 赤文字系の今後とは

今や赤文字系と青文字系の境界はあいまいで、本来青文字系に含まれていたギャル系・ガーリー・ナチュラルなどが混在しています。これも流行が多様化し、「いいとこどり」でほどよくミックスされたおかげでしょう。

最近のスタイルは赤文字と青文字の中間である「紫文字系」などと呼ばれるものや、女性の社会進出や主張が強くなったことを反映した「黒文字系」など、新しいファッションジャンルが次々登場しています。

◇エビちゃんOLブームも10年以上前!

赤文字系が最盛期だったころは「女子大生ブーム」「OLブーム」といった単語が出てくるほど、女性の社会進出がクローズアップされていました。

赤文字系ファッションの代表モデルだった「エビちゃん」こと蛯原友里さんのブームも約10年前!あの頃の「キリっとしたインパクト」より、現在はもっと自然でナチュラルな雰囲気になってきています。

現在は女性が結婚・出産後も働くことが当たり前になり、赤文字系といわれる独特のファッションスタイルで主張しなくても、肩ひじ張らず活躍できるようになってきたのではないでしょうか。

◇今も変わらぬモテコーデ? 赤文字系の今後

男ウケするコーデとしてもてはやされた赤文字系ですが、男性だけでなく女性も含めた万人ウケという意味では今もコーデの基本は変わっていません。

王道のコンサバスタイルは今も昔も変わらず、働く女性の強い味方です。

ただ、「脱コンサバ」という単語が流行したとおり、自分なりの個性やほかのファッションジャンルを上手に混ぜるのが今風。

「紫文字系」のように、メイクもコーデも時代の流行を上手に取り入れて進化していくと思われます。

男ウケ→インスタウケ。モテコーデの変遷は続く

かつて「他者視点の服」といわれた赤文字系。男ウケする、モテるコーデが主流だったのですが、それが最近変わってきました。

他者視点という意味では違いないのですが、男ウケよりも評判がいいのは「インスタウケ」。

同じ女性から見てもオシャレだな、マネしたいなと思われるようなコーデが赤文字系ファッションの基準になっているのです。

男性にモテるのか、女性含む万人にモテるのか、それとも自分にモテるのか。

モテコーデの変遷は、流行と社会環境に合わせてこれからも続いていくのでしょう。

(文・イラスト:佐藤あさひ)

関連記事(外部サイト)