知ってる? 「ご冥福をお祈りします」と言ってはいけない場面

知ってる? 「ご冥福をお祈りします」と言ってはいけない場面

知ってる? 「ご冥福をお祈りします」と言ってはいけない場面

令和という新しい時代を迎えて2年。このところ、各界において昭和や平成の日本に欠かせない存在だった方々の訃報が続いています。

訃報に接する時、私たちがよく耳にする「ご冥福をお祈りします」という言葉があります。

今回はこの言葉の意味と正しい使い方を考えてみましょう。

■「ご冥福をお祈りします」の意味とは?

社会人となり交友関係が広がってくると、仏教以外の宗教の葬儀に参列する機会も増えてくるように思います。

どの宗教、どの宗派であっても、現世での一生を終えた人を送る葬儀は荘厳で重要な儀式です。

葬儀では生前の故人に思いをはせ、故人を悼み、故人が死後の世界で安らかであるよう祈りを捧げます。

その目的や意義は同じであっても、宗教によって葬儀や死後の世界の捉え方、表現は少し異なります。

ここではまず、「ご冥福をお祈りします」の言葉の意味を解説していきます。

◇「冥福」とは「死後の幸福」のこと

まずは、「ご冥福をお祈りします」に使われている「冥」という漢字の意味から見てみましょう。

(1)くらい。おおわれて光がないさま。

(2)死者の世界。あの世。

(『漢字源 第四版』学研プラス)

このような意味から転じて、「冥福(めいふく・みょうふく)」とは「死後の幸福」(『広辞苑 第七版』岩波書店)となります。

◇「ご冥福をお祈りします」は仏教由来の言葉

宗教によっても「死」や「死後の世界」の捉え方が少し違ってきます。

「冥途・冥土(めいど)」という言葉を聞いたことがあると思いますが、これは死者の霊魂が行く道。

また、行きついた世界、冥界(みょうかい)、黄泉、黄泉路(よみじ)という意味です。

私たち日本人の葬儀を最も多く執り行う仏教では、死者やその魂は来世(冥土)に向かって暗い道(冥途)を歩き続けるといわれています。

初七日(しょなのか)は三途の川のほとりに到着する日であり、そこから死者は7日ごとにさまざまな審判を受け、49日目に、極楽行きか地獄行きかが決まります。

四十九日の法要は、死者の来世が極楽浄土であるように祈る重要な行事ということになります。

つまり、冥土への暗い道すがら死者が無事であるように、そして冥土にたどり着いたなら平穏に幸せに過ごしてほしいと願う言葉、それが「ご冥福を祈る」という言葉です。

したがって、この言葉は仏教由来の言葉であるということが分かります。

■「ご冥福をお祈りします」を使う際の注意点

ここでは、「ご冥福をお祈りします」を使う際に気を付けたいポイントを紹介します。

◇使える期間は「四十九日の法要まで」

「ご冥福をお祈りします」という言葉を使える期限については、明確には定められておりません。

しかし、前段で解説した通り、故人が「冥途」という暗く光のない道を歩く期間は49日間、つまり四十九日の法要までの期間です。

さまざまな考え方はありますが、「ご冥福」を祈るのはこの日までということになりますので、49日目を過ぎてからは使わないことをおすすめします。

◇宗教によっては「ご冥福」の使用を避ける

「ご冥福」は仏教的な考えの言葉であるため、「冥福」の概念がない他の宗教での葬儀では使用を控えるべきでしょう。

例えば、神道・神式では、人は死後その家の守り神になると考えられていますので、「冥途・冥土」の考えはありません。

キリスト教も同じです。カトリックとプロテスタントで多少の違いはありますが、キリスト教では、人はこの世での生を終えると神のもとに「召される」、つまり天国に帰っていくと考えます。

ですからやはり、「ご冥福を祈る」という考えはありません。

とはいえ、多くの方は「大多数の日本人の葬儀は仏教だから『ご冥福を祈る』で大丈夫ではないか」と考えてしまうのではないでしょうか?

ところが、実は仏教でも宗派によってはこの言葉を使わないケースがあるのです。

それが、浄土真宗です。

浄土真宗では「往生即成仏」、つまり「人はみな亡くなるとすぐに阿弥陀仏に救われて成仏し、幸せになることができる」と考えます。

ということは、暗く先が見えない「冥途」を歩く必要がないのですから、その道中の安全や幸せを願う「ご冥福を祈る」という考えがないのです。

「ご冥福をお祈りします」の使い方(例文付き)

「ご愁傷様です」というフレーズも葬儀の場でよく耳にしますが、こちらは遺族を気遣う言葉です。

一方、「ご冥福をお祈りします」は故人に対して使う言葉です。

訃報を受け取った後から葬儀の場、そして前述の通り四十九日の法要までの使用がふさわしい言葉です。

例文とあわせて、使い方を見ていきましょう。

《例》

「この度は誠にご愁傷様です。謹んでご冥福をお祈りいたします」
「ご愁傷様です」という遺族へのあいさつ言葉に続けて、故人への祈りの言葉を述べます。

《例》

「奥様ご逝去との訃報に接し、深い悲しみに打たれております。まずは謹んでご冥福をお祈り申し上げます」
「ご逝去」は他人の死の尊敬表現です。上司や目上の方でしたら「お祈り申し上げます」というより丁寧な表現を心掛けましょう。

■「ご冥福をお祈りします」の言い換え表現

これまで見てきたように、「ご冥福をお祈りいたします」は宗教や宗派によっては使用を控えた方が良い表現です。

では、他にどのような言い換え表現があるのでしょうか。

◇「ご愁傷様です」

前述の通り、悲しみに打ちひしがれている遺族にかける声掛け(あいさつ)の言葉です。

そのため、「この度はご愁傷様です」に続けて故人への思いを述べることができます。

◇「お悔やみ申し上げます」

大切な人を失った遺族の無念さ、悔しさに寄り添う最も一般的な言葉です。

宗教・宗派に関係なく使うことができる言葉でしょう。

◇「謹んで哀悼の意を表します」

手紙やメールなどでは、個人の死を悼むこの表現がよく用いられます。

◇「御霊の安らかなることをお祈り申し上げます」

神道・神式の葬儀では「御霊(みたま)」という言葉がよく使われます。

弔電などで用いると良いでしょう。

◇「天国で安らかな眠りにつかれますよう心よりお祈り申し上げます」

キリスト教における「死」は神のもとへ召されることであり、決して嘆き悲しむものではないとされています。

「眠り」という言葉で天国での故人の平安を祈りましょう。

手紙やメールで伝える場合の注意点

手紙やメールなどでは、相手の悲しみを思いやるあまり「お嘆きがどんなに深いことか」というような言葉を繰り返すより、遺族を励ます気持ちを言葉に込めた方が良いのではないでしょうか。

以下、例文です。

☆例文

・「さぞお力落としのことと存じますが、どうぞ皆さまに後のお障りがありませんように」

・「悲しいお知らせで、お慰めの言葉もございません。ご家族様の皆さまには、一日も早くお心が癒えますよう、心よりお祈りいたしております」

・「誠に思いがけないことで、皆さまのお嘆きのほどいかばかりかとご拝察申し上げます。一日も早く立ち直られますよう、お祈りいたします」

・「この度は突然のことで驚いておりますが、どうぞお力落としのないようにくれぐれもご自愛くださいますようお祈り申し上げます」

故人や遺族の心に寄り添った声掛けが大切

以上のように、厳密に言うと、故人の葬儀がどの宗派で行われるのかが確認できないのであれば、「ご冥福をお祈りします」は使わない方が良いのかもしれません。

ですが、どのような宗教であろうとも、実際の遺族にとって愛する人を亡くした悲しさや、それを慰める人たちの思いは同じであると思います。

人生を重ねると、人との悲しい別れの場面に遭遇することが多くなります。

故人との生前の縁に感謝し、大切な存在を失った人の心に寄り添った声を掛けられるようになりたいものです。

(松岡友子)

※画像はイメージです

関連記事(外部サイト)

×