男子大学生が「ドラァグクイーンメイク」に目覚めるまで

取材・文:ひらりさ

編集:高橋千里/マイナビウーマン編集部

同人サークル「劇団雌猫」所属の美容オタクライターひらりささんが、今気になるTwitterコスメ垢の実態を探る連載「コスメ垢の履歴書」。

今回は、クオリティの高すぎるドラァグクイーン(※)メイクが人気の男子大学生・フゥジさん(@missfuuji)にインタビューしました。

https://twitter.com/missfuuji/status/1290973350185979905

※ドラァグクイーンとは……ゲイ文化の一環で生まれた異性装の一つ。ドレスやハイヒールなどの派手な衣装をまとって行うパフォーマンスの一種。ドレスやハイヒールなどの派手な衣裳を身にまとい、厚化粧に大仰な態度をすることで、男性が理想像として求める「女性の性」を過剰に演出しているといわれている。

■きっかけは、ハロウィンの「ガイコツメイク」

――フゥジさんがTwitterを始めたのは2020年6月ですが、現時点で既にフォロワーが1万人を超えています。

Twitterを始めて2週間目くらいに「現役男子大学生の本気メイク見ます?」というツイートがバズったんです。10ツイート目くらいでしたかね。そこであっという間にフォロワーが増えました。

https://twitter.com/missfuuji/status/1281896846986604544

元々Instagramはやっていたのですが、学業もあるのでTwitterに手を付ける時間がなかなかなくて。納得いくメイクができるようになってきた頃に始めたら、想像以上の反響でした。

――プロさながらの腕前ですよね。ドラァグクイーンメイクをするようになったのは、どうしてだったのでしょうか。

メイクに興味を持ったのは、高校生の頃に学園祭でガイコツメイクをした時に、自分の中で思ったよりうまくいったのがうれしかったんですよね。

その後友達にメイクをしてもらったりして「変身」を追求しているうちに、ドラァグメイクに出会いました。それからは、海外のクイーンのYouTubeを見たり、Netflixで『ル・ポールのドラァグ・レース』を見たり。

――それまでも、日常生活でおしゃれやメイクをすることになじみはあったんですか?

服とかヘアスタイルには関心はあったけれど、「自分の身の丈に合ったものを身につけるのが好き」というタイプで、特定のブランドにお金をかけていたわけではないですね。

メイクもそうです。スキンケアくらいは気を使っていましたが、ドラァグクイーンメイクをするようになって初めて、あれこれ調べるようになりました。

https://twitter.com/missfuuji/status/1320683659918127104?s=20

――憧れのクイーンもいるんですか?

『ル・ポール』のシーズン7に出ていたヴァイオレット・チャチキと、シーズン10のアクエリアですね。見た目の美しさだけでなく、内面や生き方を尊敬しています。

ドラァグメイクは、見ている側もしている側も自信が湧いてくるんですよね。男らしさ・女らしさというのを気にせずに、自分の好きなように両方の良いところを生かせる。

自分の中にある、とてつもなく大きな美しさの理想像を実現できる存在だと思ってます。

■ドラァグクイーンメイクが出来上がるまで

――コスメ、ウィッグ、ドレスと、ドラァグクイーンのスタイルを再現するには、いろいろな買い物が必要ですよね。最初に買ったアイテムを覚えていますか?

海外コスメブランド「HUDA BEAUTY」のアイシャドウパレットです。クイーンのYouTubeで紹介されていたのを見て、通販しました。

最初は塗るのも初めてだったんで、本当に苦労しました。自分の顔の形をよく知らなかったので、まず自分の輪郭や目元にどんな特徴があるかをよく知って、顔に合わせたメイクを試行錯誤していく過程が必要でした。

アイメイクは一気に印象が変わるので、やっていて楽しかったのですが、納得いくまでは時間がかかりましたね。最近になって自分の特徴をしっかり捉えたメイクもできるようになってきたので、さらにワクワクしてます!

――最初に「これだ!」と思えたのは、どの部分のメイクでしたか?

リップです! 元々のリップラインを慎重に消してオーバーリップにしたり、何種類も重ね塗りして立体感を出したり……と結構時間がかかるんですが、きれいに塗れるようになった時はとてもうれしかったです。

――これまでの写真を見てみると、全体のルックに合わせてリップの色もこまめに変えていてすてきですね。

メインで使ってるリップ自体は2種類くらいなんですよ。PAT McGRATH LABSのリップを塗って、メイベリン ビューティーのマットリップとHUDA BEAUTYのマットリップを上から乗せることが多いですね。そこにさらにパウダーを重ねたりすることで色に変化をつけています。

最後によく使うのは、MACのブリング シング リキッド リップ トップコート。友人がくれたんですが、グリッターたっぷりでギラギラにできます。

――すてきですね! 周囲のご友人も、フゥジさんがドラァグクイーンメイクをしてるのはご存じなんですか?

知ってます!

――ドラァグクイーンメイクをするにあたっては、海外コスメを中心に使われているんですか?

そうです。海外のクイーンのYouTubeを参考にしていると、海外コスメが多くなります。

ベースメイクに関しては、僕の肌には韓国コスメの「NATURE REPUBLIC」が合っているので、それを通販しています。日本製のものだと、舞台用化粧品の「三善」のアイテムをいくつか愛用しています。

――確かに、もはやステージメイクですもんね。まつ毛とかも、一体どうなってるのか気になります……。

これは、つけまつ毛を3つ重ねてオリジナルのまつ毛を作り、それを上まぶたに乗せることで二重の部分をがっと持ち上げて、目を大きく見せるという仕組みになってます。アイプチに近いですね。

つけまつ毛は通販サイト「AliExpress」で買ってます! いろいろな形のものが大量に入っているセットが安いんですよ。まだ、納得できるまつ毛として仕上げられたものは2つくらいしかないんですけど。

――DIYも必要なんですね。ウィッグはどうやって入手しているんですか?

ドラァグクイーン御用達のクリエイターやブランドがあるので、それを調べて買っています。有名なクリエイターさんにInstagram経由でDMして、「カタログのこれが欲しいんです」と伝えて、「じゃあ色はこれでこうだね」みたいなやり取りをして、PayPalで送金しました。

――インターネットの恩恵によって、ドラァグクイーンメイクが成り立っているんですね……! 過去にやったメイクの中で、一番苦労したのはどれでしたか?

Instagramに上げていますが、顔やウィッグ、デコルテにラインストーンを散りばめたやつですね。

――ゴージャス! このラインストーンも通販ですか?

いや、これは100円ショップで見つけたものです! 100円ショップはひそかに重宝してます。ブラブラしてるとメイクのアイデアが湧いたりもします。

――いろんな工夫が生きているんですね。一つのメイクを仕上げるには、どれくらい時間がかかるんですか?

50分〜1時間はかかりますね。大体は時間があってリラックスできる時に、音楽を聴いたりテレビを見たりしながらメイクをするので、ちょっとのんびりしてるかも。すごく急げば30分くらいでしょうか。

終わった後のクレンジングも結構大変なんです。ものすごーく厚塗りしてるし、目の粘膜まで塗りつぶして目を大きく見せるので、なかなか落ちないんですよ。刺激があって痛いし。

しっかり落としたつもりだったのに外に出てみたら、目の粘膜にラメが……なんてこともあります(笑)。

――基本、自宅で写真を撮るためにメイクする感じで、外には出ないですか?

最初はそうでした。最近は、おかげさまでお仕事を依頼されることも出てきたので、人前でもメイクしています。

先日は仕事の関係で、外をドラァグクイーン姿で歩いたんですよ。見てる人たちが「やべえ〜」とか発していて、「心の声出てるよ!」と思いました(笑)。

■日々のメンズメイクは「ナチュラル志向」

――フゥジさんは現在、日常生活でもメイクをしているんですか?

元々は化粧水と乳液は塗っておくか、くらいでしたが、今はいろいろやってますね。

とはいえ、メンズメイクって「メイクしてると分かるメンズメイク」と「あんまりバレたくない人のメンズメイク」があると思うんです。僕の場合、普段は後者ですね。

できるだけナチュラルで、メイクしてるとは周りに分からないラインを目指しています。カラーアイテムとかはそんなに使わないです。スキンケアをして、CCクリームを塗って、ルースパウダーを少しはたく……という感じです。

https://twitter.com/missfuuji/status/1321768640010571776

――ポーチなども持ち歩いているんでしょうか?

家でベースメイクをして外出したら、お直しというほどのことはしないんですが、GREGORYのポーチに多少はコスメを持ち歩いてますね。

左から、
・資生堂 眉墨鉛筆 グレー
・エクセル スキニーリッチライナー RL03 グレージュ
・TOM FORD BEAUTY ザ ブロンザー 02 テラ
・shu uemura ビューラー
・シカペア リカバークリーム
・NYX メイクアップ セッティング スプレー マット フィニッシュ
・ニベアサン ウォータージェル

――おお、TOM FORD BEAUTYのアイテムが。

これ、ブロンザーなんですけど、本当に素晴らしいアイテムなんです。僕の場合、ファンデーションだけだと、ちょっと白すぎてしまうんですね。でも、このブロンザーを全体に薄く塗ってあげると、本来の肌の健康的な色味が戻ってくるんです。首の色とも合います。

――こういったアイテムはコスメカウンターまで行って買ってるんですか?

そうですね。ただ、最初の頃は、男性一人だけで行くとなかなか男の自分がコスメを買うと思われなかったり、あんまりサンプルをもらえなかったりみたいなのはありましたね。女友達に頼んで、一緒にデパートコスメのカウンターに付いて来てもらうとかしてました。

このところは男性スタッフさんもメンズコスメも増えてきて、実際にメイクをしてもらったり接客してもらい商品を購入したりすることに抵抗感がなくなってきているかな〜と思いますが、店頭でしか分からないもの以外はやはりネットで購入しますね。

――世代にもよると思うのですが、「メンズメイク」のトレンドが来ていても、まだ自分は抵抗ある……という男性は多い気がします。これからメイクを始めてみたい男性に、アドバイスはありますか?

自分が日常のメイクを始めた時に、一番「メイクっていいな」と思えたのが、眉毛なんですよ。というのも、僕は元々眉毛の幅が割と短くて、それがめちゃくちゃコンプレックスだったんですね。

でも、地毛を整えて、ペンで眉を描き足したら顔の印象がすごく変わって。眉毛が仕上がるだけでこんなに気持ちが変わるんだ! と驚きました。まずは眉毛を整える、とかだとハードルも低いんじゃないでしょうか。

――女性の中にも、マナーの一環としてメイクをしているけれど、自分が本当にやりたいメイクを楽しめているわけではない人は少なくないです。そうした人に伝えたいことはありますか?

まずは一箇所から、自分の「好きなメイク」を始めていくとかですかね。本当に一つずつしていくしかないと思うんです。

僕もメイクを本格的に始めた当初は、人の目をかなり気にしていました。でも、納得いくポイントが増えていったら、それもどんどん薄れていきました。ちょっとずつで良いんだと思います。

――フゥジさん自身は、メイクを通じて今度どんなことをしてみたいと思っていますか?

ずっと「やるやる」と言っているので、YouTubeを始めたいと思っています! 「ドラァグクイーンメイクのチュートリアル」で変身していく過程を見たい、といううれしい要望が多くて!

それと、実は12月に京都にオープンする立ち飲みバー「awabar」の店長を任せられました。オープン日には、ドラァグクイーン姿で、お店に立つ予定です。

お店でいろいろイベントをしたいとも思っていますし、大学の卒業制作でドラァグショーを製作することも決まりました。ドラァグクイーンメイクを極めたのがきっかけで、自分の人生にボリュームが出たなと思っています。

https://twitter.com/missfuuji/status/1322408932900438017?s=20

――今後の展開を楽しみにしています。ありがとうございました!

■コスメ垢「フゥジ」さんの履歴書

※写真のコスメはすべて本人私物です

INFORMATION

『だから私はメイクする』漫画:シバタヒカリ、原案:劇団雌猫

『浪費図鑑』の劇団雌猫が贈る話題書をコミック化!

メイク道を爆進するうちにあだ名が「マリー・アントワネット」になった女、“推しネイル”にハマって猛練習する女、仕事場での“アドバイス”にうんざりしている女など、メイクを通して見えてくる、「社会」や「自意識」と戦う女たちの悲喜こもごも。

「自分がどうありたいか」と向き合う、共感必至のオムニバス・ストーリー!

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