どっちが正しい? 「時期尚早」と「時期早尚」

どっちが正しい? 「時期尚早」と「時期早尚」

どっちが正しい? 「時期尚早」と「時期早尚」

「時期尚早(じきしょうそう)」という言葉を聞いたことがありますか? 「事を実行するには、まだタイミングが早すぎる」という意味です。

よく使われる言葉ですが、「じきそうしょう」と読み間違えられたり、「時期早尚」や「時機尚早」と書き間違えられたりすることも多いようですね。

この機会に、改めて正しい意味や漢字、使い方を把握しておきましょう。

■「時期尚早」とはどんな意味?

「時期尚早」とは、「時期」と「尚早」を組み合わせた熟語です。

辞書によれば、それぞれ次のような意味があります。

じき【時期】

何かをするとき。おり。期間。また季節。

しょうそう【尚早】

そのことをするにはまだ早すぎること。

(『広辞苑 第七版』岩波書店)

「時期」とは、「何かをする時」、「尚早」とは、「そのことを行うには、まだ早すぎる」という意味です。

つまり、2つを組み合わせた「時期尚早」とは、「この(その)時期は、事を実行するにはまだ早すぎる」という意味です。

■「時期尚早」を使う上での注意点

冒頭で述べたように、「時期尚早」は書き間違いや言い間違いの起きやすい言葉です。

ここではそんな「時期尚早」を使う上での注意点を紹介します。

◇「尚早」「早尚」、「時機」「時期」を混同させないこと

「時期尚早」の「尚早」は、「しょうそう」と読みます。

しかし、「しょうそう」と口にした時に発音しにくいことから、言い間違いや聞き間違いが起きやすいのも事実。そのため、「そうしょう(早尚)」や「そうそう(早々)」と間違えられやすいのです。

「尚、早い」の順で書く「尚早(しょうそう)」が正しい熟語です。

また、「まだいいタイミング(時機)ではない」という意味を持つために、「時期」を「時機」と取り違えて「時機尚早」とする書き間違いも起きやすいようです。

「時期」の漢字、「尚」と「早」の順序。両方を間違えないためには、「“時期”が“尚、早い”」と覚えておくと良いですね。

◇目上の人に使う際には敬語で答えること

「時期尚早」は、“誰かが何かを早まって実行しようとしている”という時に、忠告をする意味としても使います。そのため、目上の人に対して使えないのではと考える人もいるかもしれません。

例えば、目上の人から「次回の市議会議員に立候補したいが、どう思いますか?」と聞かれた場合に、「時期尚早」という言葉を使うことは失礼にあたるでしょうか?

相手の器や力量を図るような意味で使うことは失礼になることもないとは言えませんが、「時期尚早」の意味は「タイミングとして早い」と頃合いを図っているだけにすぎません。

ネガティブな意味やおとしめる意味は含まれていないため、失礼とは言えないのです。

ただし、一般的に相手が目上の人である場合には、敬語で答える方が良いでしょう。

・時期尚早かと存じます。

・時期尚早ではございませんか?

などの表現が考えられます。

◇意味の重複に注意すること

「まだ時期尚早だ」という表現を見かけたことはありませんか?

「時期尚早」という言葉には、「まだ早すぎる」というふうに「まだ」という意味が含まれています。そのため、「まだ」を付け加えると、意味が重なってしまいます。

「時期尚早」と「まだ」を同時に使わないように気を付けましょう。

■「時期尚早」はどんな時に使えるのか?(例文付き)

それでは、実際に「時期尚早」がどんな時に使えるのか、例文と共に使い方を紹介します。

◇人材の登用について述べる時

企業などの組織では、その人の経験や実績などから判断して「適任だ」「ふさわしい」と考えられるタイミングで人材を登用します。

その際、場合によっては「まだ早い」と判断せざるを得ないこともあるでしょう。そんな時には、以下のように用います。

☆例文

・彼を課長になさるのは、時期尚早かと存じます。課長補佐を経験してからでも遅くないでしょう。

◇あることを論じるには時期が早い時

何かを検討する際には、データなどの材料が必要です。

判断する材料がまだ少ない時には、次のように使います。

☆例文

・彼の言動は確かに失言だと思いますが、今進退を問うことは時期尚早です。

◇何かにチャレンジするには時期が早い時

ビジネスにおいては、事業の新規参入や個人としてのチャレンジなど、さまざまなタイミングがあります。

早すぎてタイミングを見誤る時に、次のように使います。

☆例文

・新規参入するには時期尚早だ。もう少し、着実な成果を出してからにしよう。

■「時期尚早」の類語

「機が熟していない」「まだタイミングではない」という意味がある「時期尚早」。似た意味合いを持つ言葉を、以下に紹介します。

◇「早計」

「そうけい」と読み「早まった、軽率な考え」という意味です。

「時期尚早」がタイミングだけを問う言葉であるのに対し、「早計」には「軽率」というニュアンスが含まれています。

☆例文

・調査の全容が見えていない段階で、対策の正否を問うのは早計だ。

◇「見切り発車」

「議論や準備が不十分なままに実行に移すこと」を意味する言葉です。

「時期尚早」との違いは、時期のタイミングよりも、準備のタイミングによる点です。

☆例文

・当事者全員の意見を聞かずに事を進めるのは、見切り発車と言われても仕方がない。

◇「拙速」

「せっそく」と読みます。「下手な仕上がりでも、早く行うこと」を意味しています。

スピードを優先させる際、クッション言葉で「拙速ではありますが」と良い意味で使われることが多い言葉です。

☆例文

・たとえ拙速と言われようが、今すぐ取り掛かることをおすすめします。

■「時期尚早」の対義語

「時期尚早」とは反対に、「タイミングが合っている。今こそ、事を行う時期だ」という意味の言葉を以下に紹介します。

◇「千載一遇」

「せんざいいちぐう」と読みます。

単にタイミングが合っているだけでなく、「千年に一度しかないほど、めったにないこと」という意味で使う言葉です。

「チャンス、好機」という言葉と使っても意味は重複しません。

☆例文

・まさに、千載一遇の好機です。これを逃す手はないでしょう。

◇「好機到来」

「こうきとうらい」と読みます。

「絶好の機会が訪れた」という意味です。「時機到来」「時節到来」という言い方も同じ意味です。

☆例文

・市場での需要が高まりつつある今、好機到来と考えて積極的に打って出よう。

◇「時世時節」

「ときよじせつ」と読み、「時代のなりゆき」という意味です。

「チャンス」というよりは、「時代の移り変わりに合わせて」というニュアンスで使います。

☆例文

時世時節というものがあるので、新商品も手がけていくべきでしょう。

■慎重になりすぎないように気を付けよう

何かにチャレンジしたい時に「時期尚早だね」と忠告する人はよくいるものです。

しかし、人生というものは何が起こるか分かりません。冷静に考えることは必要ですが、タイミングを逸することは惜しまれます。

進むにしろ退くにしろ、最後は自分で考えて選びたいですね。そうすれば、どんな結果でも後悔することだけは避けられるでしょう。

(前田めぐる)

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