旅人マリーシャの世界一周紀行:第193回「世界一親切な国民・イラン人はジョージアに夢を求めてやってきていた!」

旅人マリーシャの世界一周紀行:第193回「世界一親切な国民・イラン人はジョージアに夢を求めてやってきていた!」

アイ・ラブ・トビリシの前で

ジョージアの首都トビリシからは、街歩き以外にも気軽に行けるエクスカーションが多く、日本からの短期旅行者にもオススメ。

その中でも特に旅人が必ず訪れる絶景「カズベキのゲルゲティ三位一体教会」を見に行きたかったのだが、現地の天候不良のため、私は毎日宿でパソコンに向かっていた。

早朝からパソコンを叩いていると、強めの美人顔をしたイラン人女子のサラが起きてくる。彼女はジョージアで不動産事務の仕事をしていて、私がいろいろ質問をすると、

「ジョージアの賃貸の家賃? そうね、350米ドルあたりかしら? 分譲なら34,000米ドルからとか......? ほら、朝食を食べなさい!

と言って、チョコレートを塗ったパンを私に何度も差し出してくれた。

その1時間後になると、今度はイラン人男性のカミが起きてきて、近所で焼き立てのパンを買ってくると、トマトとキュウリ、チーズを挟んで、私に食べろと勧めてくれる。強面の見た目に反して、とても穏やかで優しい人であった。

そういえば南米を旅してた頃に友達になったイラン人のアリも、豪華な手作りの夕飯を振る舞ってくれたりとホスピタリティーにあふれていたのを思い出す。

一部の旅人の間では「イラン人の半分は優しさでできてる」なんて言われているが、とにかくイラン人は親切で食べ物をよく分け与えてくれる印象が強かった。

そして、カミと散歩に出かけると、トビリシの街中はまるで日本人であふれるハワイのように、イラン人が多い。

「なんでこんなにイラン人が多いの?」

「ん〜、イランの人口8千万人のうち、多分ジョージアには10万人くらい来てると思うけど、トビリシの街が小さいから多く見えるんじゃないかな」

イラニアンレストランも多くあり、カミはケバブをごちそうしてくれた。

「ところで君は、世界一周しているんだろう? イランには来ないのかい?

う......。実はこれ、イランの人と会った時にとても答えにくい質問であった。イランはこれまでもとても行きたいと思っていた国なのだが、なかなか行くチャンスに恵まれない。というよりも、行く予定がない。

その理由はアメリカである。イランへの渡航歴があるとアメリカのビザ免除対象外となってしまうので、アメリカへ度々訪れる私にとってはなにかと面倒なのだ。

なんだか申し訳ない気持ちで、いつか行きたいと思っていることだけは告げた。カミはイランに来たらぜひウチへおいでと言ってくれたが、そういう本人はジョージアで仕事を探していた。

「イランはイスラム圏のひとつであるし、時々不自由を感じるからね。例えば、男女が一緒にプールや海に泳ぎに行けなかったり、女性はヒジャブを付けないと外を歩けない。それから政府にも問題があるからね。

だから多くのイラン人は自由を求めてジョージアに来ているんだよ。でもそうは言っても、ここジョージアで仕事を探すのは難しくて、バーやレストランのような給与の安い仕事がほとんどだ。

まぁ、もちろん母国に帰れば仕事も家も車もあるんだけどね......。いつか幸せな日を手に入れて、そのとき、隣に素敵なパートナーがいたらと願ってるんだ......」

彼はどことなく寂しそうに、自分の人生をどうやって生きて行こうか模索中だと打ち明けてくれた。

5日くらいを同じ宿で過ごしただろうか、ついに別れの日。私がカミに日本のおせんべいとチョコレートのお菓子をあげると、

「ビューティフル。これは食べないでとっておこう」

「え? 食べなよ(笑)」

「もったいなくてそんなことができない」

なんてピュアな喜び方をしてくれるのだろうか。

そしてその後、サラにも同じお菓子をあげたら、

「これは食べないでとっておくわ!」

とカミと同じことを言い出したのには、宿のみんなも大笑い。お菓子なんだから食べたらいいのに、でもそんなに大切に思ってくれたのがうれしかった。

そしてその夜は別れを惜しんで、カミや宿仲間たちと近所のバーへ行ったり、カミが買ってくれたアイスを外で食べたりした。

学生の時みたいだなと思いながら、それぞれの悩みや人生について盛り上がり宿に帰ると、寝る間際にカミは私にこういった。

「明日の早朝君は去るんだろう? 絶対に起こしてね!」

翌朝、カミとサラに私は見送られた。

「何かあったら連絡するんだよ!」

彼らは最後まで優しかった。

旅をしていれば、毎日のように出会いと別れの繰り返しなのに、この時の別れはなぜかとても切ない気持ちになった。

彼らの優しさやピュアな心に触れたのももちろん、自分の人生がこれで良いのかという悩みや葛藤を聞いたことに、どこか自分も共鳴したのかもしれない。

旅に夢中でとにかく前へ進んでいる気になってはいるが、考えてみればこれが世界一周の最後の旅だ。

「私はどこへ向かうんだろう......?」

私は彼らに手を振り、宿を出てひとり、久しぶりに別れの涙を流した。もう2度と会えないかもしれない、人生を語り合った友人との別れに。

後日、彼らのインスタグラムには、私があげた日本のお菓子の写真がアップされていた。

【This week's BLUE】
カミとのお散歩中に見つけたイスラム建築風のハマム(公衆浴場)

★次回更新予定は、8月23日(木)です。

●旅人マリーシャ
平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。スカパーFOXテレビにてH.I.S.のCMに出演中! バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】

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