"焼肉賢者"小池克臣×小関尚紀が語り尽くす。「店名が"○○ちゃん"で、入り口に自転車があるところは絶対にうまい」のワケは?

"焼肉賢者"小池克臣×小関尚紀が語り尽くす。「店名が"○○ちゃん"で、入り口に自転車があるところは絶対にうまい」のワケは?

“焼肉賢者”小池克臣氏・小関尚紀氏そろい踏み。ふたりの美肌は牛肉効果?

記録的な猛暑が続いた日本列島。気温40度を超えるイカれた夏を経験し、そろそろ体が悲鳴を上げてくる頃ではないだろうか。そんな皆さんには、ぜひ焼肉をオススメしたい! 汗をぬぐって肉を焼き、そして食らえ! 牛のパワーを身に宿すのだ!

というわけで今回、『週プレNEWS』では肉界にその名を轟かせる2名を招喚。ひとり目は『肉バカ。No Meat,No Life.を実践する男が語る和牛の至福』(集英社)などの著者であり、著書のタイトル通り「No Meat,No Life.」を標榜し年間約100kgの和牛を食す小池克臣氏。

そして『焼肉の達人』(ダイヤモンド社)で知られるサラリーマン作家・小関尚紀氏。ふたりの"焼肉賢者"に、焼肉のイロハをとことん語ってもらった! 草食系と揶揄(やゆ)されて久しい日本男児よ、肉にかぶりついて平成最後の夏を乗り切れ!

* * * 

――焼肉にはカルビやロースなどさまざまな部位がありますが、「最高の部位」というものは果たして存在するのでしょうか?

小池 難しい質問ですね。というのも、ステーキやすき焼きなどほかの肉料理と異なり、"いろいろな部位を食べ比べられる"という点が焼肉の醍醐味(だいごみ)のひとつだからです。

そういった前提を踏まえた上であえて選ぶとしたら、最高級の和牛から取れるサーロインでしょうか。ロースには牛の良し悪しが最も顕著に現れますから、よい牛であればあるほどその魅力を堪能できます。

小関 僕はヒレが好きですね。生物学的観点からすると、牛があまり動かさない部位がヒレなんです。だから、非常に柔らかい。そのド真ん中、王道のシャトーブリアンを選びます。

ーーでは逆に、大衆向け焼き肉店でもおいしく楽しめる"コスパのよい"部位はどこでしょうか?

小池 安くおいしいものを楽しみたいのであれば、内臓系がオススメです。基本的に牛肉はセリを通すので、質がいい肉は当然高い値段がつきます。しかし、ホルモンなどの内臓はセリの前にまとめて分けられ、専門の業者に引き取られるんですね。つまり、質のいい牛肉の内臓でも比較的安価なんです。

小関 ですから、庶民的なお店で楽しむのであればハラミなどいかがでしょう。

小池 ハラミは赤身肉と思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、流通上の分類では内臓系に分けられるんです。地域によって異なる場合もありますが。

――なるほど。では、そういったお肉をお店でより楽しむためのポイントはありますか?

小関 例えばおすしを食べるときに、いきなり大トロから食べる人はいないですよね。それと同じように、焼肉にも"流れ"がある。まずはそれを意識してみてください。

小池 "流れ"をつくることができれば焼肉上級者に一歩近づけます。例えば「タンなどの味が薄い塩モノからスタートし、脂の少ない部位を挟んでタレ系、途中に生モノを入れて箸休めにする」といった具合に。おなかにもなじみやすいし、女性にも喜ばれるのではないでしょうか。デートのときなど試してみてください。

それに、オーダーだけでなく、肉の焼き方には人となりが出ますからね。「その人が今までどう肉と向き合ってきたか」が如実に表れます。付き合う前に女性と焼肉店に行くのはそういう意味でもオススメです。

――焼き肉店でデートというのもいいですね。ふたりで網を囲むことで、親密さもいっそう増しそうです。

小関 牛肉を食べるとセロトニンという物質が脳から出て、快感を感じるという説もありますからね。デートのときにオススメの店は「CROSSUM MORITA(クロッサムモリタ)」(東京・鶯谷)。まずはスタンディング形式のカウンターでシェフから説明を受けつつ食事を味わい、後半は焼肉が楽しめるというスタイル。ちなみに私語、写真撮影厳禁です。ただ、予約困難ではあります。

――かなりストイックな姿勢が要求されますが、なぜこのお店がデート向きだと?

小関 恋愛には緊張と緩和、すなわち"緩急"が必要ですからね。ひそひそ声で「これ、おいしいよね」「こんなの初めて」と会話すると親密度もより上がると思いますよ。それに、「CROSSUM MORITA」では日本酒と一緒にお肉を楽しめるのもポイント。

――「焼肉とビール」は定番ですが、日本酒というのはまた一風変わってますね。

小関 牛肉にはうま味成分として「イノシン酸」が含まれています。一方、日本酒は発酵の際「グルタミン酸」が生成される。カツオ(イノシン酸)とコンブ(グルタミン酸)のあわせだしで相乗効果が生まれるのと同じ原理で、焼肉と日本酒の相性って抜群なんですよ。

――化学的知見から相性を探るというのも面白そうですね。では、小池さんのデートの際にオススメの店を教えてください。

小池 女性とふたりで行くなら、僕は麻布十番の「Cosott'e Sp(コソットエスピー)」を推します。ここもカウンターなのですが、デートのときは対面に座るより横並びのほうが距離も縮まるんですよ。正面の網だけでなく、隣からも熱が伝わる、という(笑)。

加えて「Cosott'e Sp」では、予算を伝えるとそれに合わせてオリジナルのコースを作ってくれるんです。"ふたりのためだけの料理"って特別感がありますよね。

――では仮に、デートの相手がアメリカ人女性だったらどうでしょう? 牛肉の国からやって来た"肉食系女子"をうならせる店はありますか?

小池 プランはふたつ。アメリカ人は赤身を食べ慣れていますから、未体験であろう霜降り和牛をぶつけるか、それともあえて赤身を選択し相手のフィールドで勝負するか。僕は自分が和牛好きということもあり、和牛の良さが堪能できるお店に連れていきたいですね。市ヶ谷の「炭火焼き肉 なかはら」なら和牛はもちろん、ヒレカツのサンドウィッチも楽しめてオススメです。

小関 アメリカ人であればステーキ文化ですから、熟成肉も食べ慣れているはず。僕は逆に、日本の熟成肉を味わって欲しいということで、「格之進R+」(六本木)を選びますね。屠畜(とちく)した肉を骨付き枝肉のまま吊るし、肉に負担させることなく熟成させる[枯らし熟成]、枯らし熟成後、骨から外して真空パックに入れ、ウェットエイジングさせる[追加熟成]、異なるふたつの熟成方法というダブルのエイジングをぜひ味わっていただきたい。

――膨大な知識量に圧倒されます。ちなみに、どのぐらいの頻度で焼肉店に行かれるのでしょうか。

小池 そうですね、週5回前後でしょうか。「せめて週1回ぐらいは自宅でご飯を食べよう」と心がけていますよ(笑)。

小関 小池さんは焼肉好きが高じて、牧場にまで足を運ばれているんですよね。

小池 ええ。「◯◯牛」「××牛」といった同じブランド牛でも、育てている人によって飼育方法や与えているエサなどが異なるんです。加えて、牛肉は出荷された後、屠畜されセリにかけられ、仲卸業者から精肉店に渡りようやく焼き肉店へ......というルートをたどるので、生産者の方って自分の育てた牛がどこでどうやって食されているか知らない人が多いんですよね。

なので、おいしい焼肉に出会ったら、生産者の方を調べて「おいしくて感動しました」って感想を伝えます。

――生産者の方も驚かれるのではないでしょうか?

小池 そうですね、最初はたいてい引かれます(笑)。でも、正直に経緯を話すと喜んでいただけますよ。最近では生産者の人を招いて、その方が育てた牛肉を食べて感想を言い合うイベントも開催しています。生産者の方にも、目の前で直接反応が見られるのはうれしいと言ってもらえますし。

――そんな開拓者精神を持つおふたりですが、おいしい焼肉店を見分けるコツがあれば教えてください。

小池 サイドメニューに注目してみてください。例えばスープ。ちゃんと丁寧にだしが取ってあるうまいスープが熱々で出てくるようなお店は期待大ですね。キムチなどとは異なり、スープはほかのお店から仕入れることができないので、店の実力がわかるバロメーターといえるでしょう。

小関 サイドメニューでいえば煮込みなんかもいいですね。お肉の処理技術もわかります。

小池 足立区の「焼肉スタミナ苑」の煮込みは絶品なんです。水を一切使わず、ホルモンの持つ水気だけでつくるから非常に濃厚。

ほかにも、個人的な観測ですが、店名に「◯◯ちゃん」などと、店主の名前がついているところは当たりが多いです。自分の名前を掲げるぐらいですから、焼肉へのこだわりは相当なものがあるとみていいでしょう。加えて、"ちゃんづけ"するのは関西出身の方の傾向。ユーモアにあふれた、キャラクターが立った店主が経営している雰囲気のいいお店の確率が高いんです。

小関 あとは、店先に自転車が置いてあるところかな(笑)。

――自転車ですか? 焼き肉とはあまり関係ないように感じられますが...。

小池 僕の著書『肉バカ。』で書かせていただいたんですが、店先に自転車があるということは、店主自ら精肉店や専門業者に仕入れのため足を運んでいる可能性が高い。これはかなり期待できると思いますよ。

――ありがとうございます。最後に、おふたりにとって"焼肉"とはなんでしょう?

小関 "旅"ですね。昔、海外旅行によく行っていて、いろいろな国で新しい発見をするのが楽しみだったんです。焼肉もそれと同じで、一頭の牛のいろんな部位を、まるで国を渡り歩くように食べ比べることで新しい発見に出会うことができる。行ったことのない焼肉店を巡って新規開拓するのもまた"旅"と似ていますよね。まさにYAKINIKU JOURNEYです。

小池 以前、焼肉は自分にとって"一番大事なモノ"でした。しかし、今ではもう"日常そのもの"と化しています。焼肉=自分、「No Meat,No Life.」です。

■小池氏3作品ご紹介!
■小関氏最新著

小池克臣こいけ・かつおみ
横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。焼肉を中心にステーキやすき焼きといった牛肉料理全般を愛し、さらには和牛そのものの生産過程、加工、熟成まで踏み込んだ研究を続ける肉の求道者。年間80〜100kgの和牛を食べている。公式Twitter【@@BMS12_NMNL】

小関尚紀こせき・なおき
都内企業に勤務しながら作家としての活動を行なうサラリーマン作家。著書に『「即判断」する人はなぜ成功するのか?』(サンマーク出版)など。予約困難店含め150店舗以上を訪店しており、日々美しく、美味しい焼き方を独自に研究している。公式Twitter【@otomesamurai】インスタグラム【kosekinaoki】

取材・文/結城紫雄 撮影/榊 智朗

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