市川紗椰がクレヨンの新色「ブルーティフル」に「9万件も応募があってこれ!? と思ったのは私だけではなかったようです」

ブルーに取り憑かれたアーティスト、イヴ・クラインの作品と

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、色のネーミングについて語る。

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前回、幼少期の記憶に残る"M&M'Sの新色を決める投票企画"の思い出に触れました。アメリカ国民が選んだ色はブルー。あらためてその詳細を調べていたときに、たまたま最近行なわれたブルーにまつわる投票企画を知りました。

それは2017年に行なわれた、アメリカのクレヨンメーカー大手クレヨラ社の「まったく新しい青」の名前を一般から募集するというもの。09年にオレゴン大学の研究で偶然作り出された色、「インミンブルー」をクレヨン化し、名前をつけようという企画です。

インミンブルーとは、既存の青と違って、赤と緑の波長の光を完全に吸収し、青の光だけを反射する顔料。今まであったどのブルーより純粋な青を発色する上、新しい青色の顔料が発見されたのは200年以上ぶりだとか。

数年前、塗料として発売されたときにプロモデラーの友人に見せてもらいましたが、まるで光を放っているような独特な鮮やかさと同時に深さもあり、引きつけられる発色でした。

「インミン(YInMn)ブルー」という名前は、組み合わせた3つの元素、イットリウム(Y)、酸化インジウム(In)、マンガン(Mn)に由来していますが、クレヨン版はより親しみやすい名前を募集しました。

そして約9万件の応募から選ばれた名前は......ブルーティフル。「ビューティフル」と「ブルー」を無理やりマッシュアップしたネーミングのようです。

9万件も応募があってこれ!? と思ったのは私だけではなかったようで、ブルーティフルは批判されまくり。「存在しない造語を使うのは教育上よくない」「インミンブルーのアカデミックな雰囲気が台無し」など。

クレヨンの名前さえ炎上する時代、静かに生きたいと思います。ただし、ほかの最終候補は「ドリームズ・カム・ブルー」だったので、もっとひどい結末は免れたような気もします。

ほかに定着している色のネーミングが気になり、現存のアメリカのクレヨンを調べたらなかなかの事態になっていました。ラズベリーにダサいパンチを足した「Jazzberry Jam(ジャズベリー ジャム)」、ディストピアSFの朝ごはんのような「Metallic Seaweed(メタリック海藻)」、シンプルな割にピンとこない「Beaver(ビーバー)」や「inchworm(シャクトリムシ)」。

なかでも印象的なのは、クレイジーなオレンジ系の数々。「Neon Carrot(ネオンニンジン)」「Atomic Tangerine(原子力ミカン)」、あるあるを言いそうな「Laser Lemon(レーザーレモン)」。クレヨラ社、野菜を化学物質化させがち。

ちなみに子供の頃に「Flesh(肌色)」だったクレヨンは、「Peach(ピーチ)」に改名されていました。「肌色=白人の肌」という炎上は回避できたものの、ブルーティフルで炎上するとは。

クレヨラ社つながりでいえば、数十年前、御曹司が莫大(ばくだい)な美術品のコレクションをサンディエゴ美術館に寄贈しました。子供のお絵描きのイメージのクレヨンと一流の芸術の意外なつながり。幼少期にクレヨンをポリポリした諸君! 芸術に貢献できたかもしれないです!

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。愛知県名古屋市出身、米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。好物のソウルフード「マカロニ&チーズ」色のクレヨンを調べたら、原子力ミカンと同じ色だった。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

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