市川紗椰が気づいたモグラの本当の姿「強烈に個性的かつホラーなビジュアルでした」

日本一のモグラ駅として知られるJR上越線の土合駅にも、あのイラストのモグラが
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、「モグラ」について語る。

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皆さんは、知った気になっていたことってありませんか? 私にとってそれは、モグラ。身近なつもりでいたけど、最近初めてちゃんと見ました。長くて太い腕に不釣り合いな短い後ろ足と、コミカルに大きい爪と手。ツルツルな顔には、鼻の先端に寄った小さな目と耳。そして体には、ベルベットを彷彿(ほうふつ)とさせる妙に高級感のある毛並み。強烈に個性的かつホラーなビジュアルをしていることに気づきました。モグラの見た目、全然知らなかったです。

どうやら、これまで「モグラ」と聞いて脳内に浮かんでいたのは、サングラスと工事用ヘルメットを身に着けたマンガのあれだったようです。本物とは全然違うのはもちろんわかってましたが、イラスト+庭の穴で、無意識に本物も知った気になってたんだと思います。人間より動物が好きだと宣言してきたのに......穴があったら入りたいです。モグラだけに! あはは。

言い訳をすると、スピードが速くてほとんど地下にいるモグラはかなりのレアキャラです。トンネル内の子供と親モグラが一緒にいる写真は1967年に撮られた一枚しか存在しておらず、映像は2012年にやっと撮れたそうです(しかも67年の写真と同じ撮影者。モグラフォト名人)。レントゲンを見ると、モグラは穴を掘るために手首の骨が発達しており、まるで6本目の指。トンネルを掘るときは、手のひらを完全に外に向け、平泳ぎのような動きで進みます。

トンネル内も興味深い。寝室や出産専用の部屋、いわばキッチンにミミズ専用の部屋もある。記録では470匹ものミミズを一度に保管していたケースもあるそうで、カップ麺を7箱も買い占めていた友人を思い出しました......。多くのモグラは落とし穴方式でミミズを捕まえますが、北米にいるstar‐nosed mole(ホシバナモグラ)は、鼻から出ている特殊な触覚器で探り出します。直訳すると「星の鼻のモグラ」だけど実際はそんなにキラキラした見た目ではなく、永遠にタコを食べている途中のような異様な生き物です。地球を侵略するため地底に潜伏している異星人と言われたら、信じるかも。ちなみにタコを食べきれてない見た目に反して、ホシバナモグラは世界一食べるのが速い生き物としてギネスに登録されています。たった0.2秒で獲物を見つけて、食べて、次を見つけられます。

モグラの反射神経といえば、誰もがやったことのあるモグラ叩きゲーム! 75年に日本で生まれましたが、欧米のゲーム評論家によると、ゲーム史初の暴力ゲームだと考えられるそうです。ラスベガスのゲーセンで、モグラの代わりにただの棒が出てくる台がありましたが。

最後に、リアルモグラ叩きについて調べました。情報があった一番広い敷地はベルサイユ宮殿。東京ドーム1171個分の敷地には先祖代々から伝わるモグラ退治士がおり(不祥事によってナポレオンに家系を変えられた珍話あり)、伝統的な手法が使われています。鉄のトングのようなふたつの歯がモグラの首を挟むわなが使用されますが、この仕組みって......。現代のベルサイユにミニギロチンが大量に仕掛けられているのを知れたのは、ほかならぬモグラのおかげでした。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。愛知県名古屋市出身、米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。モグラみたいな見た目の親戚のおじさんがいたのも、モグラを知った気になっていた理由のひとつ。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

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