「坂城テクノは幻となりました」市川紗椰が駅名標のローマ字表記について語る

「か・た・た?」とつぶやきたくなるJR湖西線の堅田駅「Ka ta ta」のローマ字表記
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、駅名標のローマ字表記について語る。

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CDのジャケ買いのように、駅名に惹(ひ)かれただけで途中下車した経験がある鉄道好きは、少なくないと思います。私にとってその代表は、長野県を走るしなの鉄道の「テクノさかき駅」。ネオンライトがピカピカ光り、改札にモーグ・シンセサイザーでも置いてある革新的な駅舎を思い浮かべ、クラフトワークの駅メロを期待して行ったら、あらびっくり。駅名のローマ字表記が、英語のTECHNO SAKAKIではなく、単なるローマ字のTEKUNO SAKAKIじゃないか。ダ、ダサい。デトロイトテクノやベルリンテクノに対抗する「坂城テクノ」は幻となりました。

同じくがっかりローマ字の駅は、愛知県の「ささしまライブ駅」。ライブ=Liveかと思いきや、ローマ字表記はSasashima−raibu。なんか荒々しい。反対に、カッコいいローマ字表記は神戸の「京(けい)コンピュータ前駅」。K Computer Maeと、スーパーコンピューターの京(けい)をKのひと文字で表現してたのがお気に入りでした。しかし京の後継機・富岳(ふがく)が稼働していることから、駅名が丸ごと変更になりました(現在は計算科学センター駅)。

駅名標のローマ字表記に注意していると、全国でかなりバラバラなことがわかります。新千歳空港がNew Chitose Airport なのに那覇空港は Naha−k?k?だったり、富士急行の富士山駅はMt.Fujiなのに同路線の河口湖駅はKawaguchikoだったり、複雑。外来語由来の言葉はヘボン式の表記が基本とされていますが、鉄道会社によって異なる表記法が混在しており、ルールがありそうでないのが現状のようです。

例えば、同じ東京駅でもJRは長音にマクロン「 ̄」を使ってT?ky?としているのに対して、丸の内線はTokyoと表記しています。「東京」ほど世界的にメジャーだとどんな表記でもわかるからどっちでもいいかもしれませんが、知名度がもっと低い駅だと混乱することも。一畑(いちばた)電車の大津町(おおつまち)と大寺(おおてら)は 、「おつまち」と「おてら」とも読めるOTSUMACHIとOTERAと表記されています。しかも、同じ一畑電車の遙堪(ようかん)駅は以前YOKAN(よかん)と表記されていましたが、知らぬ間にYOUKANに更新されています。どういうことだ。

ほかにも、英語風に「ひる〜」と読めそうな「Hiroo」という書き方がお気に入りだった広尾や、「ううう加山」とダイイングメッセージのように読めた「Oookayama」(大岡山)も、近年表記がHiro−oと?okayamaに変更され、寂しいです。静岡県の岳南江尾(がくなんえのお)駅はまだ「えぬ〜」と読める ENOOなので、最後のとりでのように見守っています。

同じ「おお」や「おう」の表記問題で独特なのは、佐賀県の相知(おうち)駅。ヘボン式に準ずる「OCHI」だと「おーち」に見えてしまうという地元の声を吸い上げて、珍しい「OUCHI」表記になっています。ちなみにOuch(アウチ)は英語では「痛っ!」に当たる言葉なので、痛みに耐えているけなげな駅名だと思っています。

●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。愛知県名古屋市出身、米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。Saya(紗椰)は英語圏では読みにくく、「セイア」と呼ばれがち。
公式Instagram【@sayaichikawa.official】

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