市川紗椰が悲哀を感じた『ウルトラマン』の"三面怪人"ダダ「悪役の気迫ではなく、サラリーマンの哀愁が」

東京国立博物館にて。もうひとつの「ダダ」
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回も前回に引き続き、『ウルトラマン』に登場する"三面怪人"ダダについて語る。

* * *

直視できなかったほど怖かった"三面怪人"ダダと向き合うつもりだった前回。初代『ウルトラマン』のオープニングのカッコよさを語っていたら本題にたどり着かずに終わってしまいました。ダダを検索すると出てくる「かわいそう」「弱い」「社畜」という関連ワードも気にしつつ、いざ、再視聴。

まず、作品の空気感が気味悪い。まるでモンド映画のような不快感。連続バス事故の調査に乗り出した科学特捜隊のムラマツとイデですが、乗り込んだバスにはひと際目立つサングラスの女性が。毛量満点の黒髪おかっぱヘアも気になるし、黒ずくめの服装からのぞく真っ白い素肌も目を引く。バスが崖から落ち、気づいたらムラマツとあの女性以外、誰もいない。突然背後に警官が現れ、事故状況を無表情かつめっちゃ近距離で説明。説明している間、サングラスの女がいなくなっている。もぅ〜出てくる人、いちいちみんな怪しい。そして最後まで謎。

そこからの雰囲気もSFホラー。『ウルトラマン』の源流が『ウルトラQ』なのを再認識させられます。足音以外は無音で、ダダが映っているときだけ奇妙な金属音がうっすら鳴り響き、不安をあおる。ダダが瞬間移動で急に目の前に現れたり、逃げて隠れてやっとひと息ついたのに壁をすり抜けて静かに現れたり、演出は完全にホラー。

しかし、人間相手にこんなに不気味なダダは、母星と通信すると一変。まだ人間採集のノルマに達してないことを、上司の顔色をうかがいながら弁明。そこには悪役の気迫ではなく、サラリーマンの哀愁が。「はいッ、ウルトラマンと戦いますッ!」とアイドルさながら「ますッ!」に合わせて両手で小さくガッツポーズする空元気もけなげ。いざ飛び立つと、めちゃくちゃ反り腰な姿勢で腰痛にも悩んでいるんだろうな、とさらに悲哀を感じていたら、再び恐怖のダダに戻りました。

しかし、速攻でボコボコにされ、スペシウム光線で顔面を焼かれてしまい、上司に「だめだ、ウルトラマンは強い」と泣きつく始末。採集を続けろという命令に従ってムラマツとサングラスの女を襲いに行くが、人間のムラマツにも格闘で完敗。「弱い」「かわいそう」という関連ワードの意味をよく理解しました。

でも私にとっては、やっぱり怖かったです。爬虫(はちゅう)類型などではなく人間のような造形と大きさで建物の中をウロウロする姿。顔もプリミティブアートのようで、ひとつの頭部に3つ顔があるのもキュービズムを意識したかのよう。体はオプアート、そして名前の語源は芸術運動のダダイズム。自然界ではなく人が作ったものを引用しているせいで、ダダは怪獣とか宇宙人ではなく、家に忍び込んだ変態仮装不審者に見えてしまいました。デザイン、演出、ストーリー、演技などが生み出す特撮特有の生物感より、連続殺人犯感? 人っぽさゆえの愛嬌(あいきょう)と、組織のボスを喜ばせたいというダダの気持ちが、かえって恐怖をあおりました。結論、人間が一番怖い。

それにしても、あのサングラスの女性はなんであんなダダみたいな見た目で、事故現場から何も言わずに立ち去ったんだろう......。謎が解けないままでした。

●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。愛知県名古屋市出身、米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。『ウルトラ怪獣散歩』のロケに遭遇するのが夢。
公式Instagram【@sayaichikawa.official】

関連記事(外部サイト)