市川紗椰の新たな趣味に加わった「素人のミュージカル」の魅力「粗いパフォーマンスがたまらない」

フランスのパリにて。笑顔でも、『レ・ミゼラブル』
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、最近新たな趣味に加わったという「素人のミュージカル」について語る。

 * * *

私は、YouTubeなどの動画サイトをあまり見ないほうだと思います。それでも見る機会が多いのは、このコラムでも取り上げた牛や亀といった動物の動画か、線路や街並みを映したライブカメラ。なかでも、われながら一番悪趣味だと自認するのは、詰まった毛穴から角栓を掃除する「ニュル系動画」。しかし、最近新たな悪趣味(?)シリーズが加わりました。それは、知らない中高生の学芸会の動画。

これだけだとかなり危ない大人なので、説明させてください。アメリカの学校では、年に一度、大々的にミュージカルをやるのが恒例です。出演者は演劇部や合唱部だけでなく、全校生徒が自由に参加できます。なので、春夏のシーズンはアメフトをやっている生徒も、秋冬に行なわれるミュージカルには参加可能。ミュージカル大好きな私も参加していました。ちゃんとソロやセリフがある役の年もあれば、オーケストラの一員として演奏した年もありました。

人前に出たいとか、演技がしたいという気持ちはなかったんですが、「あぁ、今年はこの作品ね、攻めるじゃん!」「原作へのリスペクトを考えると○○役は××ちゃんがいいな」などと、インチキ評論家のような謎の上から目線で楽しんでいました。村人A役のくせに。

ここで話を戻します。YouTubeにはブロードウェー公演の公式の動画と同じくらい、学校で発表した素人ミュージカルの投稿が大量にあります。『バイ・バイ・バーディー』や『ガイズ&ドールズ』、『オクラホマ!』など、アメリカの学校でやりがちな定番の演目に懐かしさを覚えつつ、学生劇ならではの粗いパフォーマンスがたまらない。

歌詞を忘れて口を無計画にパクパクしている孤児A、客席にいる友達と目が合っただろう町娘B、スーツがまだまだ似合わないマフィアC。油断しているととんでもない逸材が出てくることもあり(だいたい動画のアップ主)、歌声や演技力に驚かされることもしばしば。「このレベルはさすがにプロになったのかな?」と検索したりしますが、今のところひとりもそういった例を見つけられていません。その逸材の後ろには、必ずといっていいほど、思春期丸出しで恥ずかしそうに踊っている子がいます。同じ舞台上でこの完成度のバラつき、「のど自慢」を彷彿(ほうふつ)とさせます。

今のところ、『屋根の上のヴァイオリン弾き』のダンスシーンで、ひとりだけ首を左右に振るのがうますぎる村人役の少年が、私の一番のヒットです。全部がうまいのではなく、首の動きのみずばぬけたクオリティ。プロではありえない光景だけど、いつ見ても笑顔になります。

でも、こんな私も気持ち悪いのもわかっています。だって、一生会うことのない知らない子供の演技を見てニヤニヤしているわけですから。自分の甥(おい)の発表会だって見に行ったことないのに......。

この感覚、もしかしたら甲子園が好きな人に似ているかもしれません。甲子園も、いわば知らない子供の部活です。はかない、刹那、散るから美しい。甲子園にハマるみんなの気持ち、だいぶわかりました(全然違うよ、という冷静な指摘は受け付けておりません)。

●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。愛知県名古屋市出身、米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。『コーラスライン』に憧れて、レオタードとレッグウオーマーを普段着に取り入れようとした黒歴史を思い出し、YouTubeをそおっと閉じた。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

関連記事(外部サイト)