異色のジャンプマンガ『アクタージュ act−age』制作秘話。「ジャンルをはっきりさせないとジャンプ読者はついてきてくれない。それで『役者モノ』『演技バトル』という未知のジャンルが誕生しました」

異色のジャンプマンガ『アクタージュ act−age』制作秘話。「ジャンルをはっきりさせないとジャンプ読者はついてきてくれない。それで『役者モノ』『演技バトル』という未知のジャンルが誕生しました」

『アクタージュ act−age』のコミックス第5巻の表紙は凡庸ながら愚直な努力家である二世俳優、星アキラ。シリーズ累計70万部を超え、人気を拡大している


『週刊少年ジャンプ』で連載1周年を迎え、「全国書店員が選んだおすすめコミック2019」で第3位に食い込んだマンガ『アクタージュ act−age』。

それを記念して、原作担当のマツキタツヤ氏、漫画担当の宇佐崎(うさざき)しろ氏、そして担当編集の村越周氏による裏話座談会が実現。連載に至った経緯などについてを語った前編に続き、後編では物語の制作秘話や今後の展開などについて語ってもらった。

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村越 マツキ君は最初、「オーディション早くないですか?」みたいなこと言ってたよね。

マツキ 覚えてない(笑)。

村越 ヤクザの事務所に行って何かするとか、そういう話をやろうとしてた。

マツキ 俺、いまだにやろうと思ってますよ。というか、ネームも描いてある。ヤクザの事務所に何しに行くかというと、キャスティングをしに行くんです。そうやって主人公の仲間を集めて、役者もスタッフも優劣なく皆で映画を作っていく。そういう集団競技に至らないと、このマンガは終われないとすら思ってます。

村越 伝説の老カメラマンを説得して、制作スタッフに引き込むとか。でも、「まず先に役者だろう」と。早くライバルや同世代の役者を出したほうがいいとか、そういう話をした記憶はあります。

マツキ 村越さんは「役者モノ」というジャンルにしたかったんですよね。

村越 そう。「演技バトル」みたいな。

マツキ まずジャンルをはっきり示さないと『ジャンプ』の読者はついてきてくれない。それはそのとおりだと思ったので乗っかりました。でも芝居ってジャンルはやはり未知で、打ち合わせも「人生ってなんだろう?」みたいな荒唐無稽な話題になりがちですね(笑)。

村越 ルールのないスポーツに、こっちでルールを与えて戦わせているみたいな感覚はあるよね。

――宇佐崎先生は、そういうストーリーの部分にはまったくタッチしないんですか?

宇佐崎 しないですね。「下ネタのノリがきつい」とか、それくらいです(笑)。

村越 宇佐崎さんは、キャラをちゃんと愛するタイプの読み方をするから、そこの意見はけっこう参考にしますね。『銀河鉄道の夜』編の七生に舌ピアスが開いてるとか、夜凪が変なTシャツ着てるとか。

マツキ ひいきかよってくらいの愛し方をしてますよね。例えば、千世子とか七生の絵に対する愛着は、すごく感じる。

宇佐崎 ひいきというよりは(笑)、私にとってわかりやすいんですよ、千世子は。単純に「こういう人間好きやな」と思っていろいろ掘り下げてきた部分とかがリンクしていて。「こんな表情してほしい」とか「このしぐさやったらぐっとくるな」とかそういうのがあって、それがダイレクトに作品に出る。今後「好き」の範囲を広げていければいいなって思っています。

村越 『BLEACH』の久保(帯人[たいと])先生も、昔は巨乳キャラが好きじゃなかったけど、やわらかい線を描けるようにって、女性の体をデッサンの練習でよく描いているうちに好きの範囲が広がって、今では巨乳キャラも好きになったと去年出た画集のインタビューでおっしゃってましたね。好きにならないと上手く描けないと。

マツキ 数年後の(ヒロインの)井上(織姫)さん、めっちゃおっぱい大きくなってますもんね。

■コミュニケーションの相性は良くないです

――『アクタージュ』の大きな魅力のひとつが登場人物の造形だと思いますが、各キャラクターの構想というのは連載前からだいぶ固まっていたんですか?

マツキ 夜凪とアキラは完璧にできていました。もともとアキラは準主人公くらいのつもりでいたので。

村越 阿良也(あらや)は最初、イメージを宇佐崎さんに伝えて、いくつか表情を描いてもらって「これはいい、これは違う」とかをやりましたね。絶対にキーマンになりそうなキャラはある程度決めて渡すんですけど、脇のキャラ、例えば亀太郎なんかはざっくりした感じで。「八嶋智人さんみたいな感じ」とか。

宇佐崎 全然わからなかった。 

マツキ 亀は長引きましたね。 

宇佐崎 おそらく、コミュニケーションの相性はあんまり良くないんですよ(笑)。

マツキ 電話で言い合いっぽくなることもたまにありますからね(笑)。でも亀のデザイン、最終的にはすごく気に入ってます。

――新キャラも増えた『銀河鉄道の夜』編、いよいよクライマックスを迎えていますが、今後はどういう方向に?

マツキ 次はあえてスケールを小さくして、夜凪にはもっと身近で当たり前で、それでいて大切なことを学んでほしいです。役者としてだけでなく、16歳の普通の女の子として成長してほしい。

村越 今の話で夜凪は役者としてずいぶん成長したからね。毛色の違った話にしたいね。

――ステージが変わるということは、これまでに出てきたキャラクターは出しにくくなりますかね? 今でいえば阿良也はもちろん、亀太郎や七生さんも人気ありそうだから、少々もったいない気もします。

マツキ 逆に、人気のキャラクターを出さない強みもあるのかなと(笑)。ためてためて、ここぞという場面で。千世子の再登場はまさにそんな感じで、評判も悪くなくて。

宇佐崎 「きた!!」って、私はなりました(笑)。

村越 その週の絵はめちゃくちゃ良くて、わざわざ編集部からそれを言うために電話したくらい。ちょこちょこ褒めてほしい、みたいなこと言われるので。

宇佐崎 悪いところは、自分で見てもきっと100くらいあるから、あんまり責めないでほしい(笑)。そこばかり見ていると、自分の絵がダメっていう気持ちばかりになっちゃうので。

村越 褒めるようにはしているんですけど......。でもこの1年でもびっくりするほど上手くなったので、あと1年やったら、もっと上手くなってるだろうね。

宇佐崎 頑張ります!

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