自分の原画を見られるのは恥ずかしい? 秋本治、ゆでたまご、高橋陽一…レジェンド作家と巡る!『ジャンプ展』体験レポート

自分の原画を見られるのは恥ずかしい? 秋本治、ゆでたまご、高橋陽一…レジェンド作家と巡る!『ジャンプ展』体験レポート

左から、高橋陽一先生、秋本治先生、ゆでたまご・嶋田先生、中井先生

7月18日より『週刊少年ジャンプ』の創刊50周年を記念した「創刊50周年記念 週刊少年ジャンプ展 VOL.1 創刊〜1980年代、伝説のはじまり」が東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで開催。

ジャンプ史上最大規模となる原画展を柱としたこのイベントは「シアターゾーン」「作品体感ゾーン」「原画集結ゾーン」の主に3つの展示区画を順番に巡り、最後にこのイベントのために多数製作されたオリジナルグッズを取り扱う「ジャンプ展公式ショップ」を抜けて出口へと続く構成で、1968年の雑誌創刊から黄金期とまで呼ばれた1980年代末までのジャンプの歩みをたどれる一大展示会となっている。

その公開前の某日、本イベントのメイン展示作の一翼を担う、3作品のレジェンド作家が一緒に順路を巡るという、またとない機会に同行することができた!

『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(1976年連載開始)の秋本治先生、『キン肉マン』(1979年連載開始)のゆでたまご原作・嶋田隆司先生と作画・中井義則先生、そして『キャプテン翼』(1981年連載開始)の高橋陽一先生という4人のレジェンド作家のコメントを交えながら、各展示ゾーンごとに「ジャンプ展」を体験レポートで紹介する。

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◎展示区画1【シアターゾーン:伝説のはじまり】

展示の導入となる本コーナーでは、週刊少年ジャンプの歴代表紙や実際に掲載された漫画原稿を贅沢に使用した特別映像が堪能できる。その映写ルームへと続く、入場してすぐの通路で早くもゆでたまご・嶋田先生の足が止まった。なんと、その壁がビッシリとジャンプの雑誌を開いた両端に書かれた写植文字のコピーで埋め尽くされていたのだ。

★ゆでたまご先生の描く『キン肉マン』の活躍が読めるのはジャンプだけ!」などなど、漫画用語でいう“柱”のアオリ文句で染まった壁に嶋田先生の目は釘づけだ。

嶋田「これはすごいなぁ…面白い、入っていきなりじっくり読みこんでしまいますね。僕は子供の頃から読者としてジャンプを買ってましたけど、本当にここにあるような柱の文字に至る隅々まで毎週雑誌を読み込んでいたので、この文句がどれもすごく懐かしいですよ。これは初っぱなからやられますね!(笑)」

そして扉を開いて一同は暗室の中へ。ほどなくして始まった約3分20秒の映像では、ジャンプが誇る歴代名作漫画のコマのキャラクターたちが大音響とともに、まるで生きているように躍動を始める。選りすぐられた名場面の数々が一気に押し寄せてくるかのような様はまさに圧巻! そんな特別映像の印象をゆでたまご・中井先生が語る。

中井「僕らが普段見慣れた“アニメ”とはまた違う手法で、漫画原稿としての原画がまるで動いてるように見せるのは迫力あって面白いですね。圧倒されました。以降の展示ゾーンへの期待感が膨らむ、いいオープニングだと思います」

◎展示区画2【作品体感ゾーン:降臨!!ジャンプ超英雄譚!!】

映写ルームを抜けた先にあるのは、歴代ジャンプを代表する超人気11作品(『ハレンチ学園』『男一匹ガキ大将』『シティーハンター』『キャッツ?アイ』『キャプテン翼』『聖闘士星矢』『キン肉マン』『北斗の拳』『こちら葛飾区亀有公園前派出所』『Dr.スランプ』『DRAGON BALL』※展示順)を各作品ごとに特化した演出で見せていく展示ゾーン。

まず、最初に展示されていたのは、ジャンプ創生期の人気作『ハレンチ学園』『男一匹ガキ大将』のコーナーだ。両作品の原画を食い入るように見つめる秋本治先生に話を伺うと…。

秋本「当初、ジャンプは週刊じゃなくて隔週の雑誌でした。その中で、本宮ひろ志先生の『男一匹ガキ大将』と永井豪先生の『ハレンチ学園』、ストーリーとギャグのこのふたつの人気作品が生まれて、雑誌を引っ張ってくれたところからジャンプは始まったんですよね。作品自体は何度も読んでるんですが、原画が見られるという機会はそうないので。これは楽しいですね。貴重な機会だと思います」

そして『キャプテン翼』のコーナーでは、ご自身が選ばれた渾身(こんしん)の見開き原画6枚を前にした高橋陽一先生に執筆当時のエピソードを明かしていただいた。

高橋「いかに試合中のスピード感を演出できるか、集中線にこだわって描いてたのを思い出します。ひと口に集中線といっても場面ごとにいろいろなパターンがあって、アシスタントに指示を出すのもすごく難しくて…結局、最後は自分で仕上げたりしてましたね(笑)。これを原画の状態で見てもらって、ファンの人にそういう苦労の後を感じてもらえたら嬉しいです」

さらに、続く『キン肉マン』のコーナーでは、ひときわ目を引く巨大展示物が。キン肉バスターとキン肉ドライバーの合体技“マッスル・ドッキング”の立体像だ。キン肉マン&キン肉グレートのマッスル・ブラザーズがアシュラマン&サンシャインのはぐれ悪魔超人コンビにその技を決めた名シーン!

元になった原画がその隣に飾られており、見比べられるのも面白い演出だ。その像を見ながら感慨深げなゆでたまご両先生の感想は…。

中井「立体の迫力はやっぱりすごいですね。天井の高さの都合などもあって、実際のキン肉マンたちの身長サイズから90%にやや縮小されていると聞いたんですが、そんなことを一切感じないくらいの迫力です。当時のジャンプの原稿らしい2色カラーっぽい色合いも面白くていいですね」

嶋田「製作してる現場がかなり遠隔地の工場だったので、監修は写真と動画で行なったんですが、実物は想像してたより何倍もすごい。中井君とも相談して監修段階で造形に修正もいろいろお願いしたんですが、それもしっかり反映されているし、作者の目から見ても大満足の出来。ぜひファンの皆さんにも目の前で見てもらいたいです」

そして、その奥に控える『こち亀』のコーナーは、両さんの生き様をすごろくのように追っていく楽しい演出が。その合間に1980年代までの同作を彩った思い出の原画や、数々のキャラクターイラストが飾られているという趣向で、秋本先生ご自身にその中で最も見てもらいたい原画は?と質問すると…。

秋本「そうですね。ひとつ選ぶなら、たぶんこれ、連載10周年記念の時に描いたカラーだと思うんですけど、バカンス中の麗子と両さんの絵(1986年週刊少年ジャンプ39号初出)ですね。それまで『こち亀』といえば部長が激怒してる絵だとか、両さんがふざけてムチャクチャしてるシーンだとか、そういう絵ばかり描いてた気がするんですけど(笑)。

これはちゃんと綺麗な絵を描こうと意識して描いた原稿として、とても記憶に残っていて個人的にも気に入ってます。今、描く麗子とはまた違った魅力が出てるので、見にきてもらえたら嬉しいですね」

◎展示区画3【原画集結ゾーン:神話共鳴!!ジャンプ熱風列伝!!】

最後のゾーンは、それまでのゾーンでピックアップされた11作品以外の様々な作品と選りすぐりの原画を創刊から1989年まで、ジャンプの歴史を追いながら見ていく形となっている。かなりの作品数だけに、そのボリュームも相当なもので、じっくり見ていると1日いても足りないほど…。高橋陽一先生もこう語る。

高橋「こうしていろんな作品を見渡してると、それを読んでいたデビュー前の当時の自分の気持ちをふと思い出したり、デビュー後の表紙や作品ならその当時の仕事の苦労が自然と頭に浮かんだり…。ジャンプの歴史の流れを見ているようで、自分の歴史を見ているような不思議な気持ちになりますね。あんまり見てると少し涙が出そう(笑)」

また、これだけ多彩な自分以外の原稿を見る機会は、プロの漫画家として改めて気合が入るし勉強になると身を正すのはゆでたまご・中井先生だ。

中井「どうしても原画は食い入るように見入ってしまいますね。人によって個性が全く違うので、一流の先生方の個性を見比べると本当に面白いです。例えば、北条司さんの絵などを改めて原画の状態で拝見すると、ものすごく綺麗に作ってらっしゃるなと感心しますよね。僕にはここまで作れないなと思ってしまう。自分の反省点も見えてきますし、励みになります。他の方もきっとそういう気持ちでご覧になるでしょうから、その中に自分の原稿も混ざってるというのはやっぱり少し…いや、かなり恥ずかしいですね(笑)」

このゾーンのラストには、創刊から1980年代までに掲載された全作品の初出リストを展示。ジャンプの歴史とともにずっと歩んでこられた秋本先生と、少年時代からジャンプマニアだったと公言するゆでたまご・嶋田先生がビッシリと壁一面に綴られたそのリストを見ながら、尽きることのない会話を繰り広げる姿も印象的なひとコマだった。

その後、「ジャンプ展公式ショップ」でひと通りグッズを見渡したところで、この日の特別内覧会は終了。出口を抜けてもまだ見足りない様子のゆでたまご・嶋田先生に、総括としてこの「ジャンプ展」の全体の印象を最後に伺った。

嶋田「内覧時間30分と言われてたのが全く足りなくて、結局、無理やり伸ばしてもらって1時間くらい見てましたけど(笑)、それでもムリですね。ジャンプが本当に好きな人なら1日中いても飽きないくらい見どころ満載だと思います。

一番の見どころはやっぱり、さっき中井君も少し言ってましたけど、これだけの先生方の原画を見比べられる機会はそうそうないので、その違いを見ていくだけでも非常に面白いです。印刷してしまえばみんな綺麗になってしまうので見えてこないけど、原画の状態で見ると、本宮ひろ志先生の原稿のオーラが物凄いのも再確認できましたし、作家ごとの個性が詰まってます。原画以外の展示も迫力あって面白いので、ぜひこの夏休みにはみんなで観に来てもらいたいですね。でも、僕らの原稿はあまりじっくり他の人と見比べないでください!(笑)」

「創刊50周年記念 週刊少年ジャンプ展 VOL.1 創刊〜1980年代、伝説のはじまり」は東京・六本木の森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)で現在、絶賛開催中(〜10月15日[日]まで。休館日などはHPで要確認)!

(取材・文/山下貴弘 撮影/榊智朗)















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