うなぎをやめられない不思議 高嶺の花となると欲求が高まる

うなぎをやめられない不思議 高嶺の花となると欲求が高まる

うなぎは江戸時代以来、生活に根ざした食文化

 夏の風物詩ともいえるうなぎ。だが近年、うなぎをめぐる環境は良いとはいえない。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が考察した。

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 梅雨が開け、夏本番が近づくと「土用の丑」「うなぎ」の文字が目につくようになる。今年も外食各社がうなぎの販売に乗り出した。牛丼チェーンでも吉野家が「鰻重」を750円から販売している。すき家は「うな丼」のほか「毎年恒例となっている「うな丼」「うな牛」「うなとろ丼」「うなたま丼」を販売」するという。価格は「うな丼」が790円から。

 セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートといった大手コンビニチェーンも予約注文中心ながらうなぎを発売している。メニュー名は奇しくも三社とも「うなぎ蒲焼重」。セブン-イレブンとファミリーマートでは1100円台の”廉価版”は中国産、2600円前後の”上”は鹿児島県産──というふうに、この2社の産地や価格帯は似通っている。

 一方「九州産」を謳うローソンの価格帯は1980~2980円。少々高めに設定していることに加え、鹿児島県では「鹿児島県産」、東海・静岡地域では「愛知三河産」を採用、ご当地ブランドにこだわる。その他、「大戸屋」「やよい軒」「夢庵」などの定食・ファミリーレストラン業態もうなぎの販売をスタートさせている。

 それにしても不思議だ。この数年、この時期になると毎年のようにうなぎの不漁や絶滅危惧が叫ばれている。だが牛丼店やファミリーレストランなど、庶民の食を提供する業態ほど「うなぎ」をやめられない。

 昨年、株式会社マクロミルが全国の男女1000名を対象に行った「2017年 土曜の丑の日に関する調査」では、全体の30.3%が「土用の丑の日にうなぎを食べない」と回答。その理由を聞くと上位は「高価だから」「好きではないから」「土用の丑の日に限らず、自分が食べたいときに食べるから」という回答が上位に並んだ。「ニホンウナギが絶滅危惧種であるから」は「食べない派」のわずか4.3%。つまり「環境が気になるから食べない」全体のわずか1%しかいないということになる。

 知らないわけではない。「ニホンウナギが絶滅危惧種に指定されていることに対する認知率」は67.8%にのぼった。先の設問で「土用の丑の日にうなぎを食べる」と回答したのは69.7%。「知っていて、なお食べる」が調査に見る私たちの選択なのだ。

 ニホンウナギは、国際自然保護連合から2014年に絶滅危惧種指定を受けてもう4年が経つ。2017年には台湾で「もっとも絶滅の危険度が高い種」に指定された。売り物がなくなれば、売ることも食べることもできなくなるが、「商売」の基本は、客の求めに応えることだ。結局のところ、うなぎを絶滅寸前にまで追い込んでいるのは、消費者である私たちにほかならない。

 江戸時代以来続く生活に根ざした食文化である以上、「どうしても」と消費者は考えるのは無理からぬことでもある。「いつまで食べられるかわからない高嶺の花」となるとますます欲求が高まってしまう。なんという悲しい性なのだろう。

 後ろ髪をひかれつつも踵を返すか、後ろめたさを感じながらも眼の前の重に手を伸ばすのか。どんな選択をするにしても、人は考え、そして選択できる生き物であるはずだ。

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