認知症の女性、暑さと寒さがわからず冷房設定を16℃に

認知症の女性、暑さと寒さがわからず冷房設定を16℃に

高齢になると温度やのどの渇きに気づきにくくなる

 認知症の母親(83才)の介護をしている女性セブンのN記者(54才・女性)が、熱中症予防が重要課題となる夏の介護についてレポートする。

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 母は認知症ながら、まだまだ季節の変化を楽しんでいる。夏到来!というような強い日差しの日には、鮮やかなビタミンカラーやマリンボーダーのTシャツを選び、さらにお出掛けには長袖のブラウスを羽織り、顔が半分くらい隠れるサングラスに完全遮光の日傘という完璧ないでたちだ。

「年取ったら日差しがキツいのよね。肌がヒリヒリするしまぶしいの。サングラス、目がすごく楽なのよ」と言う。

 若い頃におしゃれで買ったものを後生大事にとっておいたのだろう。昭和の雰囲気ムンムンのデザインで、しわの増えた母には昆虫の複眼みたいで、少々おもしろ怖い。

 もちろん紫外線対策も大事だが、高齢者にとって最大の脅威は熱中症だ。夏になると自宅にいた高齢者が熱中症で救急搬送されるニュースをよく耳にするが「なぜ安全な自宅で?」という疑問は、母を見ていると実によくわかる。

 母の住むサ高住の部屋は、大きな道路に面しているので夏でもガラス戸は閉め切りだが、紫外線カットのレースカーテンをかけ、最新式のエアコンもついている。

 ところが、母はエアコンをつけないのだ。気温が上昇する日中に訪ねると、部屋はかげろうが立ち上りそうな熱気で、私は一気に汗が噴き出すが、母は汗ばんでもいない。

「Nちゃんたら若いのね~」

 そう言ってのんきに笑う母。

「ここサウナじゃない! 死んじゃうよ!」と大げさにまくしたててエアコンをつける。

 そうか! リモコンが使えないのかもしれない。テレビをつけないのも電話の子機を使わないのも、リモコン風の機械が苦手だからに違いない。

 寒すぎないように冷房を28℃に設定し、ボタン1つでオン・オフができるようにした。

「これがママの命綱だよ」と脅かし、ヘルパーさんには時々室温を確認してもらうようにお願いもした。

 数日後、再び母を訪ねると、部屋は「南極か!」というほど極寒地になっていた。慌ててエアコンのリモコンを見ると、設定はなんと16℃! 母なりに使いこなそうといじったのだろう。ブルッと身震いする私を笑う母を見て、初めて気づいた。暑くても寒くても、わからないのだ。

◆のどの渇きもわかりにくい。「水分補給」警報発令中

 熱中症対策の基本は脱水状態にならないよう水分補給を欠かさないこと。私自身も暑い日には、行く先々でお茶や水を飲む。私たち中年でも意識して水分補給しないと、体が麻痺する事態になるという。

 母と出掛けるときも、こまめに休憩して水分を摂るが、ここでも問題がある。母は尿もれ用パッドなどを使っていないので、外出先での水分補給には非常に神経質だ。これは多くの高齢者も同じらしい。

 とはいえ熱中症は命にもかかわる。熱中症がいかに怖いかを切々と説いてお茶に誘う。木陰に腰かけ、自販機の冷たいお茶に口をつけると、「おいしい~。生き返るわ」。

 飲んで初めてのどの渇きに気づく。やはり、あらゆることに鈍感になっている。だがここで悲観しても仕方ない。

「ね、やっぱり暑い中で飲む冷たいお茶は最高でしょ!」

 一緒にお茶を飲み干した。

※女性セブン2018年7月12日号

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