マンション内イベントの是非 「管理費の流用」には要注意

マンションの管理組合の運営が私物化される事例も イベントが資金還流の隠れ蓑に

記事まとめ

  • マンションの管理組合の運営は、往々にして私物化されるケースが多いという
  • イベントなどは、背後のどす黒い資金還流の隠れ蓑になっているケースも多いらしい
  • 200戸規模のマンションなら、管理費や修繕積立金の総額は1億円前後にもなるという

マンション内イベントの是非 「管理費の流用」には要注意

マンション内イベントの是非 「管理費の流用」には要注意

住民同士のゴルフコンペが行われるマンションも

 神奈川県のとある分譲マンション。管理組合の理事会でこんな提案が持ち上がった。「住民同士の交流を深めるために、定期的にイベントを開催したらどうか?」。候補に挙がったのは、飲み会、バーベキューカラオケからゴルフコンペまで……。だが、「わざわざ参加したくない住民も多いはず」との反対意見も出て紛糾。果たしてマンションコミュニティはどこまで必要なのか。住宅ジャーナリストの榊淳司氏がレポートする。

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 口の悪い人は、マンションのことを「コンクリート長屋」と呼んだりする。同じ敷地の中にいくつもの住戸がある集合住宅ということなら、熊さん八っつぁんの時代の長屋と同じである。しかし、その暮らしぶりは大きく違う。

 現代日本のマンションは、だいたいが鉄筋コンクリート造である。各住戸を隔てる鉄筋コンクリートの厚さは最低でも150mm、厚いところは200mmを超えたりもする。乾式壁を多用しているタワーマンションでもない限り、隣戸の生活音が漏れ聞こえることはない。

 つまり、現代日本のマンションではのっぺらなタワータイプでない限りは多くの場合、各住戸のプライバシーは高度に守られていると言っていい。また、ご近所づきあいも不要である。隣にどんな人が住んでいるのか、知っている必要は何もない。また、大きな災害でも生じない限り、隣近所が助け合うようなことにもならない。

 ただし、分譲マンションを購入した場合には、自動的に管理組合の一員となる。その義務はまず、定められた管理費や修繕積立金を支払うこと。管理規約やその他の細則を守ること。そして、総会などでは区分所有者の一人として議決に賛否を投じること。さらには、時には理事や理事長の役職を引き受け、その責務を果たすこと。

 数千戸規模のマンションなら、一度も管理組合の理事などにならずに数十年を過ごすことができるかもしれない。しかし、数十戸規模なら何年かに一度、理事の順番が巡ってくる。それは義務なので、避けられないはずだ。

 さて、管理組合の本来の役割は組合員の共有資産である、マンションの共用部分を適正に管理することである。管理費はそのために支出されるべきであろう。ところが、国土交通省の定める標準管理規約の第27条10項には、管理費の支出項目について以下のような規定がある。

〈地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用〉

 平たく言うと、管理費予算から地域の自治会の会費を払っていいということ。また、この項目を拡大解釈すると、理事の飲み会の費用まで管理費予算から支出できる、とも読み取れる。

 現実的に、多くの管理組合で理事たちの宴会費用に管理費予算が支出されている。これを是とするか否とするかは意見の分かれるところだ。管理組合によっては、居住者の親睦を図るために様々なイベントを行っていたりする。

 私が過去に取材したある管理組合は、1年に1度「カレー大会」を開いていた。敷地内のガーデンでお米を焚いて、レトルトのカレーを住民に振る舞う。その目的は、居住者の親睦も兼ねているが、主には災害用備蓄食料の更新や炊き出しの訓練を兼ねているそうである。こういうことなら、大いにやるべきだろう。

 また、区分所有者や居住者の親睦を図るために、様々なイベントを行っている管理組合は多い。敷地に余裕があるマンションなら、屋台が出る夏祭りや盆踊り大会を開催しているのをよく見かける。中にはサークル活動としてお料理教室や子どもたちのイベントなどもよくあるケースだ。

 かつて、ある管理組合ではマンションの好感度を高めるために、居住者が参加する「恋するフォーチュンクッキー」の動画を撮って、オフィシャルページで公開した。著作権料の支払いが生ずるはずである。これは、ちょっと悪乗りが過ぎる。

 これらのイベントが健全なスタイルで運営されるなら問題はない。健全かそうでないかをどこで見分けるかというと、費用分担の公平さだろう。

 イベントには一部の人しか参加しない。あるいは、管理費を負担していない賃貸居住者が参加するスタイルだったりする。だから、参加しない人が払っている管理費からは、不要な支出がないようにイベントのスキームを組むべきだ。そうでない場合は、不公平感が生じる。

 マンションの居住者たちが良好なコミュニティを形成するに越したことはない。しかし、それは必ずしも必要かというと、そうでもない。

 管理組合がしっかり機能していれば、マンションの区分所有者や居住者のコミュニティが和気あいあいとしていようが、多少ギスギスしていようが、日常生活に大きな影響はないはずだ。

 分譲マンションの管理組合の場合、もっとも注意すべきは管理組合の運営を私利私欲に任せないことである。マンション管理というのは、ある程度のまとまったお金が動く利権だということを忘れてはならない。

 例えば、200戸規模のマンションなら、区分所有者から年間に徴収される管理費や修繕積立金の総額は1億円前後になる。600戸なら3億円規模だ。このお金をどう使うかは、事実上理事長の意志にかかっている、といっても過言ではない。

 現在の区分所有法では、理事長が悪意をもって組合の財産を蝕んだとしても、それを暴いたり監査する手段はほとんどない。だから、管理組合の理事長が何億円もの組合のお金を横領する事件が報道されている。それも多分、氷山の一角だろう。多くの管理組合は、自分たちのマンションの資産価値を守るために、不祥事を表沙汰にしたがらない。

 管理組合の運営は、往々にして私物化されるケースが多い。多くの区分所有者が気づかない内に、理事長や特定の理事などに組合の資金が還流する仕組みが作られているのだ。組合のコミュニティ形成のために開催されるイベントなどは、こういった背後のどす黒い資金還流の隠れ蓑になっているケースも多い。

・同じ人物が何年も理事長を務めている。あるいはフィクサー的な人物が理事会にいる
・管理会社を変更する動きがまったく見られない。あるいはその動きが出ると潰される
・理事への報酬などが、いつの間にか高額になっている
・理事の飲み会が多く、管理費からその費用が支出されている
・管理組合の親睦イベントが多いが、参加者は常に同じ顔ぶれ
・理事会のメンバーが妙に狎れあっている

 管理組合は「仲良し学級会」ではない。巨額の予算を執行する利権を有している。その運営は、和気あいあいというよりも、一定の緊張感が必要だ。また、カラオケやゴルフなどのイベントは、同好の人々が集まって個人の費用負担で行うべきもので、共用部分の維持管理のために徴収される管理費から流用すべきではない。

 マンションのコミュニティ形成には、こういった原則を忘れてはならない。

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