園子温監督 「永井豪作品が血となり肉となっている」

園子温監督 「永井豪作品が血となり肉となっている」

「僕は永井ウイルスに感染している」と語る園子温氏

『ハレンチ学園』『マジンガーZ』『キューティーハニー』『デビルマン』など数々の代表作を持つ漫画家・永井豪氏。画業50年突破を記念して、「永井GO展」が大阪で開催されることになった(9月8日~9月24日、於:大阪文化館・天保山)。その作品は、多くの映画監督やアーティストたちに影響を与えている。『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』などで知られる映画監督の園子温氏もその1人だ。「僕は永井ウイルスに感染している」という同氏が語った。

 * * *
 最初の永井豪ショックはなんといっても『ハレンチ学園』。僕が小学校低学年のころに『少年ジャンプ』で連載が始まりました。

 それまでギャグ漫画といえば赤塚不二夫先生の作品で、僕もどっぷりハマっていました。ところが永井先生はギャグにエロティシズムの要素を取り入れてきた。子供心にときめいたものですよ。ヒロインの十兵衛こと柳生みつ子に恋していたくらいです(笑い)。

 と言っても「二次元に萌える」という今時の感覚ではなく、大人への“ステップ”として漫画のキャラに憧れるという感じでした。『キューティーハニー』にも同じようにときめいた読者も多かったはずです。

 以降、様々な亜流が生み出され、ギャグやヒーロー物の世界にこうしたときめきを持ち込むことが一般化していった。

 そういう意味で『ハレンチ学園』は時代のエポックだと思います。そもそもあの作品以前は“破廉恥”という言葉にエロの意味はなかったんじゃないかな。辞書的には「恥知らず」くらいの意味。永井先生が『ハレンチ学園』を描いて以降、ハレンチが「エッチ」というニュアンスで使われ始めたわけです。

『デビルマン』や『バイオレンスジャック』の世界観も衝撃でした。単なる正義の味方ではなく、ドロドロとしたダークヒーローのイメージにやられました。

 僕の映画を作る上でも間違いなく影響を受けています。

 ただ完全に永井ウイルスに感染しちゃっているので、あらゆるシーンやカットに痕跡はあるものの、明確に「これが永井作品の影響だ」と取り出すことはできない。それくらい血となり肉となっているのです。

 もちろん僕だけが永井ワールドに影響されたわけではない。

『マジンガーZ』がなければ『機動戦士ガンダム』や『新世紀エヴァンゲリオン』もなかったでしょうし、巨大ロボットが戦うハリウッド映画『パシフィック・リム』もなかったでしょうね。

 今年の5月に発表したのですが、監督園子温、主演ニコラス・ケイジで『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』というハリウッド映画の制作が決まっています。これがまさに永井作品の『バイオレンスジャック』のようなアクション映画なのです。

【プロフィール】その・しおん/1961年生まれ。『愛のむきだし』で第59回ベルリン国際映画祭カリガリ賞、国際批評家連盟賞をダブル受賞。最新作は『クソ野郎と美しき世界「ピアニストを撃つな!」』(2018年)。

※週刊ポスト2018年8月31日号

関連記事(外部サイト)