永井豪氏「赤塚先生にだめと言われたことを全部やった」

永井豪氏「赤塚先生にだめと言われたことを全部やった」

ロングインタビューに答えた永井豪氏

『ハレンチ学園』『マジンガーZ』『キューティーハニー』『デビルマン』など数々の代表作を持つ漫画家・永井豪氏。画業50年突破を記念して、「永井GO展」が大阪で開催されることになった(9月8日~9月24日、於:大阪文化館・天保山)。そんな永井氏は、デビュー直後に「赤塚不二夫先生に呼び出され、怒られた」と明かす。プロインタビュアーの吉田豪氏が迫った。

──漫画家の世界で、批判的に言われたりとかはほぼなかった感じなんですかね。

永井:うん、ないと思いますね。

──『ハレンチ学園』について、赤塚不二夫先生がどう思ってたか知りたいですけどね。

永井:赤塚先生には、その前に僕、怒られてますから。苦々しく思ってたかもわからないけど、とくにいろいろ表立ってなんか言われることはなかったし。もう『ジャンプ』の柱になってしまったんで、叩いて潰せるような状況にはないなと赤塚さんも思ってたかもしれないですね。ただ、最初は『少年マガジン』の『じん太郎三度笠』(1968年)のときに、「色事みたいなこういうことを描いちゃだめだ!!」とか、時代劇のパロディなんで殺しのシーンがあるから「そんなヤクザ同士の殺し合いのシーンなんか入れるな!! ギャグはそんなんじゃない!!」とか怒られて。

──それはどういう場で言われるんですか?

永井:呼び出されたんですよ。そのときは「赤塚先生がなんかアドバイスしたいって言ってるから行かないか」と編集者に言われて。赤塚先生なんて雲の上の人だから、喜んで赤塚先生のプロダクションへ行ったらしばらく仕事場の端っこのほうで待たされて。で、「なんであんなもの描くんだよ!!」「あんなの描いちゃだめだ!!」って怒鳴りつけられて。だけど『少年マガジン』って当時、さいとう・たかを先生の『無用ノ介』で腕を切り落とすわ首を飛ばすわ血がばあっと飛び出すわみたいな、そういう漫画が同じ誌面に載ってるのに、僕の『じん太郎』は本当にかわいらしい、切られたときもキャラがにこにこ笑ってたりとかなので。

──よりブラックなんですけどね(笑)。

永井:ブラックな笑いだけれど、ちょっとかわいらしい感じで描いてるんで、これがだめで『無用ノ介』のリアルな太刀のシーンがOKだっていうその理屈わからないなあとか。帰ってきてから、「うーん、どうしようかな」と思ったんですけど、いや、これはもしかしたら赤塚先生は俺のこと怖がってるんだと思ったんですよ。

──デビューしたての若手だったけど。

永井:うん。それはデビュー3カ月目ですからね。いきなりそういう目に遭って、これはつまり、赤塚先生がだめって言ったことに将来活路があるんじゃないかと思ったんです。

──これがいままでやってないことだ、と。

永井:全部やってないことだし、じゃあ赤塚先生がやっちゃだめって言った色恋沙汰、エッチなことと残酷シーン。これは全部これからの自分の漫画に入れてやろうと思って。

──まさに『ハレンチ学園』ですよね。

永井:そうそう。だから残酷シーンは現代ものなんで入れられないんで、恋愛とエロチックをいちおう入れ込んでやろうと思って。

──『ハレンチ学園』も残酷になりますよ!!

永井:最後はそうなっていきますけどね。もっと新しい漫画も描きたいし、終わらせたいんだけど編集者は終わらせてくれないからどうしたらいいかと考えて。で、ずっとやっつけられてたからPTAの皆様方もパロディ化して、教育軍団みたいなのに漫画で仕返ししてやろうってことで、描きだしたらおもしろくなっちゃって。自分でエスカレートして、この勢い止められないって、どんどん登場人物を死なせだして。

──ギャグ漫画ではありえない展開ですよ!!

永井:最初は編集は「おもしろい、おもしろい」と言ってたんだけど、いろんなやつが死んでいくから、「ちょっとこれやばいですけど、どうなるんですか?」って言われて、「連載が終わるかもしれません」って言ったら「えー!!」って大騒ぎになって(笑)。あのハレンチ大戦争で「終わった終わった、もうやめた」と思ったんだけどやめさせてくれなくてね。「続きをやってください」って日参されるから仕方なくやって。『ハレンチ学園』の大変なバッシングの中で、編集長もすごい苦労しながら頑張ってたのわかってるし、断れないみたいなところもあったしね。

 でも、赤塚先生にストップかけられなかったら、僕はギャグ漫画はすぐにやめてストーリー漫画に転向しようと思ってたんです。だけど、赤塚先生のことがあったんで、これはおもしろいなと思っちゃって、自分のこと怖がってるんだったら自分にはギャグの才能あるかもしれないとも思ったので、少しギャグを続けていってやろうと思ってね(笑)。ついでに赤塚先生も追い詰めてみようと思って。

──ダハハハハ!! 本当、真面目でおとなしい人なのに、タチが悪いんですよね(笑)。本当にいろんなことへの反発が永井先生の漫画家人生をつくってきたというか……。

永井:そういうことになりますね。それによって自分のスタイルみたいなのが確立できていったのかなって。

【プロフィール】ながい・ごう/1945年生まれ。石ノ森章太郎氏のアシスタントを経て、1967年『目明しポリ吉』でデビュー。翌年『ハレンチ学園』が連載開始。代表作に『デビルマン』『マジンガーZ』『バイオレンスジャック』『キューティーハニー』等。1980年、『凄ノ王』で第4回講談社漫画賞(少年部門)を受賞。2009年、石川県輪島市に永井豪記念館がオープン、名誉館長に就任。2018年、第47回日本漫画家協会賞・文部科学大臣賞受賞。在は、『ビッグコミック』(小学館)誌上にて『デビルマンサーガ』を連載中。

◆聞き手/吉田豪(プロインタビュアー)

※週刊ポスト2018年8月31日号

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